フォーリン・アフェアーズ・リポート 2023 no.3

東アジアの新戦略環境と同盟関係

監修

カテリン・フレーザー・カッツ
元米国安全保障会議ディレクター

クリストファー・ジョンストン
前米国家安全保障会議ディレクター

ビクター・チャ
元米国家安全保障会議ディレクター

UnsplashMarek Studzinskiが撮影した写真

拡大抑止への高まる不信

 独自の核開発を検討するかもしれないし、冷戦期のようにアメリカに戦術核兵器の配備を求めるかもしれない。この発言は、政府の政策であることを意味しない。

韓国、尹錫悦大統領2023年1月

 この発言以外にも、「拡大抑止の信頼性」を東アジアの同盟諸国が疑っていることを示す兆候があります。

 核兵器を含むアメリカのあらゆるパワーを用いて、同盟国の丁度と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒するという約束をワシントンは守れるのでしょうか。

同盟国の不安

 バイデン政権が同盟関係の強化を重視し、バイデン、尹、岸田の各政権が北朝鮮や地域政策をめぐって広く連携していることを考えれば、アメリカの安全保障コミッメントに同盟国が不安を感じるのは不可解に思えるかもしれません。

 しかし近年、北朝鮮、中国、ロシアの脅威が急速に高まり、特有の差し迫った安全保障課題が作り出されています。北胸腺は2022年に異例のペースでの兵器開発を試み、ミサイルを90発以上を試射しているのです。中国の広範囲に及ぶ戦力にお近代化も、日本と韓国の安全保障懸念を高めています。

 2022年5月と11月には日本の近くで実施された中露の合同演習は東京をさらに刺激しました。8月に実施された対話意周辺での大規模軍事演習で、中国は5発のミサイルを発射し、日本の排他的経済水域に落下しています。

 アメリカの国内政治動向もアジアの同盟諸国は懸念しています。ドラルド・トランプ前大統領がそうしたように、将来の米政権も、同盟関係の重要性を軽視するかもしれません。

韓国は核武装すべきか

 韓国は、市民の指示を背景に独自の核兵器を迅速に開発できると表明しています。

 韓国の核開発が引き起こす問題は、様々です。

 韓国が核拡散防止条約(NPT)からの離脱を余儀なくされれば、制裁対象になります。中国や北朝鮮、その他の国々で地域的な核の軍拡競争が誘発される可能性の高いです。

 日本でも軍事態勢と日米同盟の未来について分裂的な論争が起きて摩擦が生じるでしょう。

信頼を高めるためには

 同盟諸国の不安を和らげるには、拡大抑止について、より率直かつ開放的になる必要があります。

 アメリカはNATOの核計画グループのような、日韓との合同核計画対話の枠組みを作るべきでしょう。東京とソウルで核兵器関する意思決定とプロセスについてより深い理解を得られるようになります。これによって、アメリカは権利権を維持しつつ、二国間および三国間で計画を考案できるようになるのです。

国益と自由世界擁護の間

監修

ロバート・ケーガン
ブルッキングス研究所シニアフェロー

Image by wal_172619 from Pixabay

何のための介入か

 ウクライナ戦争を前にした対応は、「アメリカ人が国益について考え、話すこと」と「危機を感じとって実際にとる行動」との間にギャップがあることを示しました。

 アメリカ人は「必要に迫られた戦争」と「戦いを選んだ戦争」の間で想定される道徳的区別に固執しています。「自由世界」を守ることと自国の安全保障を同列に考え、自国がとる行動は全て「必要に迫られた行動」とみなしました。

 客観的にみれば、あらゆるアメリカの戦争は国際環境をつくるための戦争でした。国際的な維持をするために設計されたものです。そのおかげで80年にわたって、アメリカが支持する自由主義世界が支配的な影響力を保ってきました。

 ロシアや中国のような不満を抱く大国がルールを守ってきたのは、アメリカと同盟国が大きなパワーを行使できたからで、状況を黙認する以外の安全な選択はなかったのです。

紛争と独裁が規範なのか

 プーチンはアメリカの出方をうかがっていました。2008年にグルジア、2014年にクリミアに進行して、アメリカがどこまで許容するのか様子をみて、軍事力強化をしていたのです。

 シリア紛争でのロシアの軍事行動に多雨するアメリカの慎重な反応を前に、プーチンは進行することを決断しました。

 当時リスクをとらなかったことで、われわれによい状況をもたらしているでしょうか。

 しかし、アメリカのリーダーシップが欠如した場合、歴史は独裁政治の蔓延と紛争を招き入れることでしょう。大国間の紛争と独裁は人類の歴史の規範です。自由主義平和は束の間の出来事でした。アメリカのパワーは歴史の必然的な流れを食い止めることができるのです。

アジアの安定と米国の優位

監修

ヴァン・ジャクソン
ビクトリア大学ウェリントン上級講師(国際関係論)

Image by mika mamy from Pixabay

制御不能

 アジア地域におけるアメリカの優位を維持するための努力は、軍備の増強と配備にとどまりません。支配的優位を強化しようと、アメリカは世界の政治毛財の流れを北京とのゼロサム競争で捉えるようになりました。

 バイデンは、中国人学生へのビザ発給を制限したトランプ政権の規制を維持し、関税や制裁、企業のブラックリストをむしろ拡大しています。アメリカの半導体技術をライバルとみなす企業に移転することも禁じました。

 スマートフォンやテレビなどの家電製品にも使用されている技術を、敵に持たせてはならないと宣言することで、アメリカ過激な国家安全保障路線を露わにしています。

 北京による勢力県の形成を阻止しようとする国の理論ではなく、中国経済から時刻を切り離そうとするものでもありません。実質的な封じ込めです。

適切な路線とは

 中国かアメリカのどちらかに与するように強制されることをアジア諸国が嫌がっていることをワシントンは認識しなければなりません。東南アジア諸国連合(ASEAN)は「中国かアメリカのどちらかを選ぶことをしない」と繰り返し表明しています。

 アジアの指導者たちは、中国経済を崩壊させるような措置を警戒しています。アジア経済は中国経済と密接に結びついているのです。

 アジア諸国政府も中国と付き合うことのリスクを軽くみてはいません。それでも地域エリートは、アメリカとは違って、中国に対してパラノイア的な見方はしていないのです。

 アジアの安定を気にかけているなら、ワシントンは非同盟運動の形成を妨げるのではなく、むしろ、そのパートナーになるべきでしょう。

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