もくじ
- 国際戦争と国内政治
- 流動化したロシア政治_プーチン体制の衰退と新タカ派の台頭 タチアナ・スタノバヤ
- 水面下で何が起きているのか
- ロシアは弱い国なのか
- 不可解な国家
- 新旧のタカ派
- プーチンの凋落とロシアの混乱
- 欧米はウクライナを見捨てるのか?_キーウ欧米の心変わりに備えよ リアナ・フィックス マイケル・キマージ
- 変化したムード
- あてにならない友人たち
- 支援を打ち切れば
- プーチンの最終兵器
- トランプ2.0の時代_同盟国に恐怖を、ライバルに希望を ダニエル・ドレズナー
- トランプが再選されれば
- トランプからバイデンへ
- 2期目に何が起きるか
- トランプリスクに備えるには
- 流動化したロシア政治_プーチン体制の衰退と新タカ派の台頭 タチアナ・スタノバヤ
- AIがもたらす機会と脅威
- イノベーションと社会_何が社会と技術の関係を規定するのか
- 技術革新と人間
- 悪いストーリー、ひどい結果
- 技術革新と絶望
- 巨人を飼いならす
- 旧世界と新世界の間
- 世界はAIを統治できるのか_手遅れになる前に規制を イアン・ブレマー ムスタファ・スレイマン
- AIと2035年問題
- AIの特性と統治上の課題
- AIと国家、社会
- 進化する技術と規制上の原則
- いかに統治・規制するか
- 最善を促進し、最悪を阻止せよ
- イノベーションと社会_何が社会と技術の関係を規定するのか
- Sea Change
- 中国は停滞と混乱の時代へ_社会不満と経済停滞が重なれば イアン・ジョンソン
- 市民の支持か安定か
- 統制と監視
- 何が間違っていたのか
- 内向きの世界へ
- 待ちのゲーム
- 気候変動型災害に備えるには_緩和と適応を連動させよ アリス・ヒル
- もっとも暑い7月
- 適応か死か
- 適応をめぐる現状
- 上昇する潮流
- 災害に立ち向かう
- 中国は停滞と混乱の時代へ_社会不満と経済停滞が重なれば イアン・ジョンソン
- Current Issues
- アフリカにおける反欧米感情の台頭_ニジェール・クーデターの意味合い エベネゼル・オバダレ
- 反欧米主義の本質
- フランスよ、出て行け
- 偽りの独立
- 西洋の魅力
- BBCとイギリスのソフトパワー_政府と国際放送の関係を考える サイモン・J・ポッター
- BBCとワールド・サービス
- 世界への貢献
- 国内のもめ事
- ソフトパワーの放棄
- 北朝鮮とロシア_変化した関係の本質 スコット・A・スナイダー
- 取引は実現するか
- 北東アジアの地政学
- アフリカにおける反欧米感情の台頭_ニジェール・クーデターの意味合い エベネゼル・オバダレ
目次
流動化したロシア政治
監修
水面下で何が起きているのか
ロシアのエリートたちは、戦争はロシア国内に飛び火してくるかもしれないと考えるようになりました。圧力が高まる一方になり、ウクライナ戦線から良いニュースはほとんど入ってこなくなっています。例外は5月にウクライナ東部ドネツク州のバフムトを(ワグネルが)制圧したことくらいです。
国内ではプリゴジンの反乱が注目を集め、モスクワのエリートたちは動揺しました。ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介もあって、迅速な幕引きが図られたが、モスクワの人の多くはプーチンの対応を理解できずにいるようです。
何ごともなく生活を続けていますが、この戦争への民衆の態度に大きな変化が生じている可能性が高いです。
内部の矛盾と紛争にあふれ、より不安定で先の見えない国に変化させつつあります。予測不可能なロシアと対峙しなければならないでしょう。
不可解な国家
ウクライナ戦争の開始以降、プーチンを称讃するロシア人は19%に上昇し、68%のロシア人がプーチンの再選を望んでいます。戦争前はこれが48%だったことを考えると、大幅な上昇です。
国内が軍事的脅威にさらされる事態を前にしても、プーチンが消極的で超然とした態度をとっているので、近い将来、体制に大きな問題を作り出すかもしれません。権限をもつエリートに対しては曖昧な態度をとる人が増えています。政治階級の責任遂行能力を人々が疑い始めているようです。
欧米の専門家の多くは、軍の問題故に、エリートを含むロシア市民は平和を切望するようになるだろうと考えていました。現実は荒涼としています。困難な状況に決意を固めて、国内の反対派を弾圧しようとしているのです。
「政府はもっと大胆に決然と一貫性をもって、しっかり対処してほしい」とのロシア民の声もあります。
自分は民衆に愛されていると確信があるプーチンは、国内の崩壊を食い止める対策はとっていないのかもしれません。けれど、綻びが大きくなって混沌化していく恐れもあるでしょう。
プーチンの凋落とロシアの混乱
反乱後、ワグネルは解体されるとみられていたが、プーチンはプリゴジンの後継者アンドレイ・トロシェフの下での存続を認めるつもりのようです。治安部隊は統合されるどころか、一段と再分化され、対立する派閥が新たな特権と権力をめぐって競いあうようになる危険があります。
戦争が泥沼化するほど、政治家、専門家、上院議員、人気ブロガーが戦闘の遂行を妨げています。
トランプ2.0の時代
監修
トランプが再選されれば
バイデン外交によって、長年の同盟国やパートナーとの関係は元に戻ったと感じているでしょう。
しかし、4件の訴訟を抱えていようとも、トランプは現状で、最有力の共和党大統領候補です。世論調査からして、トランプとバイデンは接戦が予想されます。
実際、ロシアやちゅごくの政府高官は、トランプが再選されることを望んでいると語っているのです。トランプが再選されれば、ウクライナへの欧米の支援レベルが低下し、中国にとっては、北京を牽制する日本や韓国といった国々とアメリカの同盟関係に綻びが生まれることを期待しています。
トランプリスクに備えるには
2020年にトランプは再選されると予測した米同盟諸国は、2020年後半のレームダック状況のなかで、彼が計画していた世界からの米軍撤退を2期目に実行するのではないかと恐れていました。トランプの2期目がもたらす脅威を軽くみるのは間違っているでしょう。
対ロ政策が中断されたり、中国との友好を考えたりした場合に備えて、来年に向けたリスクヘッジ戦略を考案するしかありません。
一部の東欧諸国やフランスがウクライナのNATOに加盟させるように働きかけているのはトランプ再選のリスクがあるからです。
バイデン政権は、アメリカの現在の外交政策を可能な限り制度化することで、対応できます。ソビエト圏の戦略的禁輸を管理して対共産圏輸出統制委員会のような制度を新たに立ち上げるのが賢明でしょう。議会の同意をとりつければ、トランプが路線を転換するのはより難しくなります。
また、トランプ復活のリスクを利用して、反抗的な同盟国や長年の敵対国と交渉することもできます。メキシコのロペス・オブ・ランドール大統領に圧力をかければ、移民対策と麻薬管理を受け入れるのが容易になるかもしれません。米軍を展開させられるか、移民対策の協力の2択であれば、移民対策をとるでしょう。
トランプを今回も破れば、同盟国は野心的な対米協調を安心して、模索できるようになります。トランプが3度目の敗北をすれば、アメリカの孤立主義は解体に向かっているという発信を世界に送ることになるのではないでしょうか。
アフリカにおける反米感情の台頭
監修
反欧米主義の本質
プリゴジンの見方が、軍事クーデターに批判的な多くのアフリカの指導者、北米やヨーロッパの政府、EU、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の立場と相反することに不思議はありません。
「アフリカを奴隷状態に永遠に保とうとする策略をもっている」とみなしたのは、ワグネルのリーダーだけではありません。
実際、フランスに従属的とみなす人民政府に幻滅していた西アフリカの民衆は、必要な是正措置として旧政権を倒した軍事政権を歓迎しています。
反発は根深いようにみえるが、民衆には欧米の思想に魅入られている人や欧米の大学で教育を受けた人がいます。
ある程度の反欧米・親ロシア感情はあるけれど、修復する機会を得ることになるでしょう。
偽りの独立
アフリカの政治的独立の原動力となった反植民地主義に対して、軽蔑的とまでは言わないまでも、懐疑的なこと学派は、かつて植民地化の主張は、アフリカの西洋に対するネガティブな固定観念を強化しています。民主主義や人権の思想を拒絶し、その敵対の意思表示としてロシアや中国を受け入れるようになりました。
モスクワは、アフリカの救世主とみなされており、歴史を無視したビジョンから利益を引き出しています。アフリカがロシアの精神的、物資的支援を称える一方で、帝国としての自らのアイデンティティを忘れているようです。
西洋の魅力
貧しいアフリカの民衆も、大きな危険を冒して欧米に移住し続けています。国連難民高等弁務官事務所によると、2022年にはアフリカから2000人以上の移民が地中海で死亡するか行方不明になっています。これほど欧米の魅力を示すシンボルもないでしょう。
長い目で見れば、反欧米感情をいくら表明していても、アフリカが困難な状況にあるかを考えて、アフリカ大陸の発展に責任をもつことの代わりにはできないことを知っておく必要があるでしょう。
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