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目次
書籍情報
論点を研ぐ
戦略コンサルタントが明かす「問題解決」の実際
発刊 2024年1月9日
ISBN 978-4-296-20396-3
総ページ数 283p
則武譲二
ボストンコンサルティンググループ(BCG)などを経て、現職のベイカレント・インスティテュートの所長。
桑田卓弥
小坂智厚
土性尚暉
日経BP
- はじめに
- 第1部 なぜ今、「論点を研ぐ」か
- 既存の問題解決技法は浸透しているが…
- 鍵は「問い直す」こと
- 戦略家に聞く私の「論点の研ぎ方」
- 日立製作所 「相対化」で「次のイノベーション」を常に追い求める 森田守氏
- 戦略家に聞く私の「論点の研ぎ方」
- ソニーグループ 何が「コア」で、何が「コンテキスト」なのか_その前提から問い直し続ける 小野寺剛氏
- 戦略家に聞く私の「論点の研ぎ方」
- 味の素 問題解決力の源泉は「コミュニケーション」と「クリエーティビティー」 榛葉信久氏
- 3人の戦略家との対談を終えて そこにある共通項とは?
- 第2部 ブレークスルーを起こす「論点を研ぐ」技法
- 第1章 技法の全体像
- 5ステップの概要
- 5ステップの基礎となる思考法
- 第2章 ステップ①「同質化する」
- 的を外すな、「何について同質化するか」
- 相手の思考過程を「追体験」する
- 第3章 ステップ②「前提を自覚する」
- 裏側に眠るファクトやロジックをサルベージする
- 「7つの観点」でしつこく考え、前提を見逃さない
- すべての前提を「7つの観点」に振り分ける
- 第4章 ステップ③「前提を問い直す」
- 「3つの質問」で”囚われ”を解く
- ”囚われ”解放に重要な「あえて」の思考
- 問いから生じたあらゆる”疑い”を書き出す
- 第5章 ステップ④「核心を突く」
- ”疑い”の正体を解明する
- 新前提を手掛かりに、問題の核心に迫れ
- 第6章 ステップ⑤「再構築する」
- センスに頼らず、論点と仮説をどう組み直すか
- 仮説を立てることは難しくない
- 第1章 技法の全体像
- 第3部 プロジェクトケースに学ぶ、技法の実践
- エネルギー EV化の囚われを打破
- 合成燃料の将来は本当に明るくないのか?
- EV普及論の盲点をあぶり出す
- 自動車市場は「フラグメント化」する
- ヘルスケア 新市場への参入戦略の大転換
- 既存事業が頭打ち、提携を「てこ」に新デバイス市場参入を狙う
- 変わりゆく業界構造を解明し、新戦略を見いだす
- 建設・エンジニアリング 新事業のトラブルにどう向き合うか?
- DX推進に取り組むも、”負のスパイラル”に
- 不満の声や反対意見を冷静に振り返る
- 疑いを武器に、本丸に切り込む
- 金融 日本におけるトランザクションレンディング
- 盤石なビジネスモデルに抱いた違和感
- ターゲット顧客増やニーズには疑わしい点だらけ
- 中小企業がターゲットという刷り込みがバイアスに
- エネルギー EV化の囚われを打破
- おわりに
書籍紹介
問題解決のフレームワーク
本書の中心にあるのは、問題解決のためのフレームワークです。則武氏は、問題の構造化、仮説の立て方、データの収集と分析、そして解決策の提案に至る一連のプロセスを解説しています。特に、問題を「論点」に分解し、その論点を深掘りしていく手法は、多くの読者にとって新鮮かつ実践的な視点を提供するでしょう。
実践的なケーススタディ
則武氏は、多くの実際のコンサルティングケースを基に、具体的な問題解決のプロセスを紹介しています。これにより、読者は理論だけでなく、実際のビジネスシーンでどのようにこれらの手法が応用されるのかを具体的にイメージすることができます。
データ駆動型のアプローチ
本書では、データに基づく意思決定の重要性も強調されています。データ収集の方法や分析手法、そしてそれらを用いた説得力のあるプレゼンテーションの作り方など、ビジネスパーソンにとって役立つ情報が満載です。
読者の視点に立った解説
則武氏は、読者が直面するであろう具体的な問題や状況を念頭に置きながら解説を進めています。そのため、理論的な説明だけでなく、読者が実際にどのように行動すべきかというアドバイスが豊富に含まれています。
コンサルタントを学ぶ人へ
『論点を研ぐ』は、問題解決のための強力なツールとなる一冊です。特に、戦略コンサルタントとしての実践経験に基づく具体的なアドバイスやケーススタディは、読者にとって非常に価値のあるものでしょう。また、データ駆動型のアプローチや論点を明確にする手法は、現代のビジネスシーンにおいてますます重要性を増しています。
本書は、コンサルタントを目指す人はもちろんのこと、ビジネスマンや経営者、さらには日常的に問題解決のスキルを磨きたいと考えるすべての人におすすめできる一冊です。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
鍵は「問い直す」こと
我々自身の試行錯誤に学びを融合することで、「論点を研ぐ」という技法が初めて形になります。
企業家である戦略家にアンケートを行ったところ、「決定事項の経緯を見直す」「質問を繰り返し試行錯誤する」という問題解決方法が多く見られました。さらに、検討中のことを覆すこともあるということが分かりました。
キーパーソンたちは、思いつきでこれまでの方針と異なる論点や、想定外の視点から仮説を打ち出しているわけではありません。思考を繰り返すことで、彼らの頭の中で論点が熟成されているのです。
前提を見逃さない
裏側に眠っている事実やロジックを確認し、それを引き出して言語化します。その論点を解き明かすことで、目的を達成できると考えた理由を鮮明にイメージしていきます。
主論点の裏側にある前提を、箇条書きなどで書き出していきましょう。同様に、主論点から派生する問題点の前提条件も書き出します。
しつこく考え、前提を見逃さないことが重要です。「当たり前すぎる」と思うこともどんどん書き出していきます。
- 定義
- プレイヤー
- セグメント
- バリューチェーン
- マネタイズ
- シチュエーション
- 時間軸など
上記のような観点を持つことで、前提を考えやすくなります。また、前提を考えるのは準備段階です。この段階だからこそ、丁寧に考察することが必要だと思います。
疑いの正体を解明する
”疑い”の正体を解明する際には、いち早く誤りに気づき、新たな前提を導くことが重要となります。問題というものは複雑な要因が絡んで起きるものです。問題が起きる構図を誤って捉えてしまうことも多いです。
前転を問い直し、認識が誤っていた部分は、取り直したファクトや、考案し直したロジックをもとに新たな前提を据え直します。その際に、新たなファクトやロジックを手掛かりに、”本当のメカニズム”とは何かに徹底的にこだわりましょう。
問題のメカニズムがわかるということは、「核心」を突くことになるのです。その核心を元にプランを考え直すことができます。
疑いを晴らして組織改革に成功
KPIベースの運営方針を見直し、「品質向上」に集中した結果、新しいイシューツリーなどが問い直しプロセスから生まれました。論点が明確になったおかげで、自然と囚われから解放され、新しいプロジェクトをスタートすることができたようです。
その改革に成功した会社は、その後数年間にわたり品質向上活動を展開しました。最終的にはビジネス部門全体の評価指標を変更し、高品質・高利益率を実現しました。
さらに、この取り組みによりトラブルの件数が激減しました。品質向上が事業ポートフォリオの変革を加速させた稀有なケースと言えるでしょう。