荒野に果実が実るまで/著者:田畑勇樹

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

書籍情報

タイトル

荒野に果実が実るまで

新卒23歳アフリカ駐在員の奮闘記

発刊 2025年6月22日

ISBN 978-4-08-721367-6

総ページ数 269p

書評サイト テラ・ルネッサンス

出版社リンク 集英社

著者

田畑勇樹

NPO法人テラ・ルネッサンスに就職して、ウガンダに駐在。
ウガンダで最貧困層を対象とした農業支援に従事。

出版

集英社

もくじ

  • 序 飢餓の大地に立つ
    • 旅立つまでのこと
    • ウクライナ戦争、アフリカの飢餓
    • 援助の渦の中へ
    • 援助屋に平和は作れるか
  • 第一章 援助という世界の洗礼<2023年2月~3月>
    • プロジェクト開始は植民地主義の延長戦とともに
    • 農業畜産水産省の洗礼
    • 人を雇うのは、難しい
    • 援助版トリクルダウンと誰を選ぶかについて
    • 雨が先か、貯水池が先か
  • 第二章 自然とともにある暮らしを守るために<2023年4月~6月>
    • 銃のニーズと食べ物のニーズ
    • 怪物vs.自立支援
    • トラブル&ミラクルの貯水池完成!
    • 大混乱の農業研修キックオフ
    • 水行政官ケディとの絆
    • 援助依存からの解放を目指して
    • 1枚のレシートが語る、最もシンプルで基本形の汚職
    • 天候不良と出稼ぎ
    • 平和の種を守る
  • 第三章 住民の変化に寄り添いながら<2023年7月~9月>
    • 自然と科学の狭間で
    • チームの崩壊と再生 #1 援助と学歴社会
    • チームの崩壊と再生 #2 特権への酔いと新体制
    • 非合理と愛と主体性
    • 内なる力に触れる時
    • 警備員ロプカン、シゴトの根源を問う
    • 村の中から広がる変革
    • 楽しかった過去、使命になった今
  • 第四章 絶望を超え、歓喜の収穫へ<2023年10月~12月>
    • 平和の果実が実る時
    • 楽しむ心
    • 暴力がすべてを奪ってしまう
    • 平和が始まる場所の一つ
    • 歪んだ援助構造の中で
    • ロモイのリーダーシップ
    • 失われた命を背負って
    • マセレカが兵士になった理由
    • 歓喜の収穫、技術の伝播
  • 第五章 希望の畑に咲く笑顔<2024年1月~2月>
    • だんじり作戦で、トマトバカ売れ!
    • 生きる力への賛美
    • 平和への勝ち筋
  • おわりに

書籍紹介

 若さと情熱を武器にアフリカの大地で挑戦を続けた記録です。集英社から出版されたこの本は、23歳という若さで新卒としてアフリカに飛び込んだ著者のリアルな体験を、生き生きとした筆致で綴っています。

 物語は、田畑さんが大学卒業後、すぐにアフリカのケニアに駐在員として赴任するところから始まります。大手企業での安定したキャリアを捨て、未知の環境に身を投じた彼の決断は、読者に「自分ならどうするだろう」と考えさせます。現地では、言葉の壁や文化の違い、インフラの未整備といった課題が次々と立ちはだかります。しかし、田畑さんは持ち前の好奇心と柔軟性でそれらを乗り越えていきます。現地の農家と信頼関係を築き、農業プロジェクトを成功に導く過程は、困難を前にしても諦めない姿勢の大切さを教えてくれます。

 単なる海外駐在の記録にとどまらない点にあります。田畑さんの目を通して描かれるアフリカは、ステレオタイプなイメージとは異なり、可能性に満ちた活気ある場所として映し出されます。現地の人々との温かな交流や、予想外のユーモラスなエピソードが散りばめられており、読み進めるうちにアフリカへの親しみが湧いてきます。また、若者として感じた葛藤や成長の瞬間が率直に語られており、同世代の読者には特に共感を呼ぶでしょう。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

銃のニーズと食べ物のニーズ

 4月になって、荒野の貯水池の堀削工事が進んでいます。貯水池から水をくみ上げ、農場に灌漑することが私たちの描く未来地図です。

 カラモジャ地域は農地が少なく、ウクライナ戦争の影響もあって、子どもたちの飢餓が深刻になっています。そんな地域では、窃盗・強奪の犯罪に必要な「銃のニーズ」が増えています。南スーダン、ケニアといった隣国から武器が流れ込んできます。その一方で国境を超えると、購買力のある中間層・富裕層に向けた「食料のニーズ」があります。

 数日前、私たちの貯水池の近くで、銃を所持した窃盗団とウガンダ政府軍(UPDF)間の小競り合いが発生しました。発砲によって兵士2人と戦闘に全く関係のない住人1人が亡くなりました。

 ウガンダ政府が、カラモジャの治安を安定させるために、銃の回収に本腰を入れてきたとも言い難いです。「この地域を混乱させておいた方が都合が良い」といった戦争屋の思惑もあります。

 治安の悪さが都合が良いという理屈は、誰かから金銭を巻き上げられるという点にあります。貯水池工事中の周辺警備をUPDFを仕方なく頼むと、彼らはカラモジャの武装集団がいかに危険かを語り、しっかりとその対価を計算して提示してきます。国際NGOのプロジェクトを警備する臨時収入をあてにしているのです。

 NGOの一員であれば、窃盗団のメンバーはこの地域の若者たちで、罪を犯さなければいけない理由があると知っています。彼らのロジックを知っているもどかしさはあるのです。

 カラモジャ地域の治安の悪さは、明らかに貧しさからきています。灌漑によって、乾燥地でも農業ができれば、犯罪が減ります。本当のニーズは銃ではなく食料です。銃痕ではなく、この地に蒔くのは作物の種でしょう。

購入リンク

amazon

電子

amazon

(Visited 6 times, 1 visits today)
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です