近代日本思想の肖像

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

近代日本思想の肖像

第1刷 2012年11月1日

発行者 鈴木哲

発行 (株)講談社

ISBN978-4062920995

総ページ数 368p

著者

大澤真幸

 日本の社会学者。元京都大学大学院人間・環境学研究科教授。社会学博士。専攻は、数理社会学・理論社会学。

出版

講談社学術文庫

丸山眞男と太宰治

作者: カートマン

 太宰治の短編に「薄明」があります。戦後に発表された作品で、唯一、戦災体験を具体的に描いた作品です。

 結膜炎で失明寸前の子どものために何とか医者を探す物語です。結末では、視力が回復した女の子が家の焼け跡の前に立ち、「ああ、みんなやけちゃったね」と言って、静かに微笑します。

 つまり戦争が終わっても、変わらず薄明状態が続いてるというわけです。

 政治学者の丸山眞雄の場合も、戦中で探求していたことが戦後も続いているという態度をとっています。

 丸山は戦中に大日本帝国の「国体神学」を批判し、日本の戦後民主主義の論調の全体を決していました。

 中世国家をも導きうる近代性が、日本の近世社会の内にすでに準備されつつあったと証明しようとしたのが、丸山の思想史研究です。

 太宰の場合は、他者の存在に現実味を覚えることがなかったために、戦後も変わらず影響していて大差がないと表現しました。丸山の場合は、戦中から日本社会にポテンシャルを持っていたから、戦後も変わっていないとするものです。

 思想家の内面的な精神の総意に対応しているだけではありません。客観的な社会の構成上の相違にも対応しています。戦中・戦前の社会のと戦後の社会の存立の仕方にも違いがあるのです。

村上春樹『アンダーグラウンド』

Image by Pexels from Pixabay

 村上春樹の『アンダーグランド』は、1995年3月20日の朝東京の地下で起きた「サリン事件」の犠牲者を中心とする関係者60人の証言を、集めた書物です。

 村上は自分の身に感じた嫌悪感を分析し、オウムと自らとの本質的な類似性を直観していたのではないか考えています。ここから一般市民の行動原理とオウムの行動原理は、一種の合わせ鏡となっており、互いに互いの姿を映し合っているのでは、との結論です。

 被害者という塊が、数や形として還元されてしまっているものを、1人ひとりの固有の物語を有する、名前と顔を持った人間として浮かび上がらせることが、『アンダーグランド』に基づいている手法です。

 あっちにいる人は怪訝な顔をして見ていて、こっちには入ってこようとしません。こっちとあっちを隔てる道路こそ、あっち側に属する視線に対して、こっち側を「形」として映し出すスクリーンです。こっちの声をあっちへと届かせること、これが村上のインタヴューの目的です。

あとがき

 私がこれまで書いた文章の中から、文芸批評に近いスタイルをもつもの、そして日本の近代の思想家や作家を論じたものを選び、収録しました。

 統一した意図のもとで書かれたものではないけれど、かなり強力な、持続する一貫性を感じていただけると思います。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 強い近代思想を感じられる本でした。ちょっと違う視点から、共通点や相違点を論じると、こんなにも主張が強いものになるのかと思いました。

 自分になかった概念を突き付けられると、力強さを感じます。

 思想家の深考に触れてみてはいかがでしょうか

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