Newton 2022 12月号

Focus

 話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
 毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。

系外惑星で二酸化炭素を発見

※イメージ

ジャンル:天文学

出典 Identification of carbon diocide in an exoplanet atmosphere

Nature, 2022年9月2日

 二酸化炭素は、太陽系では一般的な分子です。いままで、系外惑星で直接$\ce{CO2}$が検出されたことはありませんでした。

 アメリカ、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のバタラ博士らのチームは、ジェイムズ・ウェップ宇宙望遠鏡を用いてWASP-39bと名づけられた形骸和久瀬を観測したのです。

 WASP-39bが恒星の手前を通過するとき恒星の光を波長の光が大きく減光していることを確かめました。これは、WASP-39bの周囲に広がった大気中に$\ce{CO2}$が存在するためだと考えられます。

 ジェイムズ・ウェップ宇宙望遠鏡の観測データの早期提供を目的とした活動の一環ですが、今後の観測では4倍以上の高精度のデータが期待できると、チームは述べているようです。

変形で計算する材料

※イメージ

ジャンル:工学

出典 Mechanical integrated circuit materials

Nature, 2022年8月24日

 アメリカ、ペンシルベニア州立大学のヂ学院性エルヘルー氏らは、外から力を加えることで生じる機械的な変形によって冤罪を行う、やわらかい演算装置を開発しました。

 ウレタンゴムと電極を基本単位として、それらを縦と横に並べた基盤でできています。この基盤を潰したり、ひねったりすることで電極がつながり、足し算、引き算などの演算が行える仕組みです。

 基盤の層を積み重ねればより複雑な演算が可能となります。

 現在の試作器は電子回路の性能には遠く及びませんが、3Dプリンターを使えば飛躍的に集積度を高めることができるといいます。

 この研究が発展すれば、外部からの刺激を受けてから反応する、生体に近い材料の開発が可能になると、エルヘルー氏らは述べているようです。

前例なしの大噴火

ジャンル:

出典 Precursor-free eruption triggered by edifice rupture at Nyiragongo volcano

Nature, 2022年8月31日

 火山噴火の予兆は自信や山体の変化、火山ガスの組成のとして現れます。

 アフリカ、コンゴ民主共和国のニーラゴランゴ山は、山頂に溶岩湖が存在しており、火山噴火が警戒されてきました。1977年と2002年の噴火では前兆現象として、数日前から地震が観測されていたのです。

 20021年5月22日におきた地震では、山腹の裂け目から噴火が6時間続いたが、この際の予兆現象は直前の約40分前からのみです。噴火後の2日後から地震活動が続きました。

 ヨーロッパ地震研究所のスッミッタレージョ博士らは、南方25キロメートル、地下約500メートルの浅い部分で、火山体の崩壊によりマグマの貫入が拡大したことによる地震活動だと突き止めたのです。

 予兆現象のない火山噴火のメカニズムの解明は、新たな噴火予測の課題となります。

古代ヒト族DNA配列を解読

2022年ノーベル賞 医学・生理学賞
スバンテ・ペーボ
ドイツ マックス・プランク進化人類学研究所所長、沖縄科学技術大学院大学教授。
執筆者:赤谷拓和

ネアンデルタール人のDNA解読に成功

 1990年代末までに、私たちホモ・サピエンスのゲノムは、ほぼ全体が解読されました。一方でネアンデルタール人のゲノム分析には、発掘された骨などを利用しなければなりません。

 古いDNAは劣化して細かく切断されていたり、あるいはDNAが混入していたりするため、解読が難しいのです。

 ペーボ博士は1986年から10年かけて解析法を開発することから始めました。そして、骨に存在する細胞に残された「ミトコンドリア」を利用し、ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスの直接の祖先ではないことを突き止めたのです。

現生人類と古代のヒト属は交雑していた

 ネアンデルタール人の細胞核のDNA配列の全体を解読することに成功したのは2010年のことです。これにより、ホモ・サピエンスとの比較ができるようになりました。

 ヨーロッパやアジアのホモ・サピエンスに近いDNA配列をしていることがわかり、両者が共存している期間中に一部が交雑することで、ネアンデルタール人の遺伝子がホモ・サピエンスに受け継がれていたことがわかったのです。

 ペーボ博士の発見は、人類の進化の歴史をついてのストーリーを明らかにしました。

分子どうしをつなげる技術

トリアゾール環

2022年ノーベル賞 科学賞
キャロライン・ベルトッツィ アメリカ、スタンフォード大学教授。
モルテン・メルダール デンマーク、コペンハーゲン大学教授。
バリー・シャープレス アメリカ、スクリプス研究所教授。
執筆者:三澤龍志

分子をつなぐ化学反応

 シートベルトを「カチッ」とはめるように、分子どうしを簡単に結合させる手法を「クリックケミストリー」と名付けました。シャープレス博士とメルダール博士は独立してクリックケミストリーに最適な化学反応を発見し、2002年にそれぞれ論文を発表しました。

 2人のたどりついた答えは同じもので、「アルキン」と「アジド」という化学構造が、銅を触媒として結合するものです。子の反のは非常に素早く効率よく進行し、副産物がほとんど生じません。高温や高圧などの特殊な条件を必要としないため、温室・水中ですみやかに進行します。

 クリックケミストリーは、今日の医療品開発の現場で使われているのです。繊維やプラスチックなどの新材料の開発においても活躍しています。

新たながん治療を生んだ

 生体内でおきている化学反応を邪魔せず、邪魔もされずに糖鎖と蛍光色素を結合させるのに、アジドとアルキンのクレリックケミストリーは最適な化学反応なのです。

 ベルトッツィ博士は、生体内の反応を乱さずに分子同士を結合させる手法を「生体直交化学」とよびました。この生体直交化学を利用した研究で、特に注目したのが、がんと糖鎖の関係です。

 がんは糖鎖をかくれみのにして、免疫細胞から逃れていることがあきらかになりました。

 ベルトッツィ博士ら研究グループは、得られた知見を活かし、抗がん剤を開発したのです。

 抗がん剤は、糖鎖を分解する酵素をクリックケミストリー結合させたものになります。抗体部分が糖鎖を認識することでがん細胞にのみ結合し、酵素によって糖鎖を分解することで免疫細胞にがん細胞を殺させる仕組みです。

 この薬は、進行がんの治療薬として現在臨床試験が行われています。

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