発売日 2024年11月26日
ページ数 144p
ISSN 0286-0651
もくじ
- FOCUS
- 液体の水が存在する系外惑星
- 脳に薬を届ける寄生虫
- 原始ブラックホールが宇宙を崩壊させる
- ストーンヘンジの巨石は海上輸送された
- カブトムシを模倣した飛行ロボット
- 上部マントルの物資の採取に成功
- From 朝日新聞
- 奄美大島のマングース、根絶を宣言
- 目に見えない語句賞の「ナノプラスチック」
- 世界の平均気温が観測史上最高を更新
- 膵がん早期発見に期待
- 女子高校生ら5人 スイスで素粒子実験へ
- 緊急点検 南海トラフ巨大地震
- 第1特集 発達障害の脳科学
- Nature View 世界一美しいチョウ図鑑
- 日本人宇宙飛行士が月面へ
- 驚異の古代ローマ建築
- 第2特集 素粒子物理学の未来
- 地球外生命はどこにいる?
- Nature View 空の色彩科学
- オンラインシンポジウムレポート 核融合:1億度の希望~文明史の大転換を前に
目次
Focus
脳に薬を届ける寄生虫
ジャンル:医学
出典 Engineering Toxoplasma gondii secretion systems for intracellular delivery og multiple large therapeutic proteins to neurons
Nature Microbiology, 2024年7月29日
治療用のタンパク質を標的の細胞に取り込ませることで、さまざまな病気を治せるのではないかと考えられています。
細胞外においてタンパク質は不安定で、容易に分解されてしまいます。また、脳にタンパク質を運ぶには「血液脳関門」という障壁を越える必要があります。
テルアビブ大学のブラチャ博士らは、脳に侵入する寄生原虫「トキソプラズマ」を利用して、治療用の大きなタンパク質を脳の神経細胞へ導入することに成功しました。
カブトムシを模倣した飛行ロボット
ジャンル:工学
出典 Passive wing deployment and retraction in beetles and glapping microrobots
Nature, 2024年7月31日
カブトムシは、前翅と後翅を持ちます。前翅の内側に折りたたまれて収納されている後翅は、飛行時に展開します。そのメカニズムは以前よくわかっていませんでした。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のパン博士らは、カブトムシの羽の展開を高速度カメラを使って観察しました。
前翅が開くと、後翅の付け根がバネのように持ち上がります。後翅が羽ばたき始めると、遠心力を利用して外側に展開されます。また、前翅が閉じると、後翅は受動的に格納されることも明らかになりました。
パン博士らは、このカブトムシのメカニズムを模倣して飛行ロボットを製作しました。このロボットは、離陸、着陸、空中停止に成功しています。
南海トラフ地震、今後30年で70%以上の根拠は?
室戸岬でおきた隆起量で発生間隔を見積もる
政府の地震本部は、南海トラフ巨大地震が今後30年以内に発生する可能性を「70〜80%」と評価しています。この評価には、前回の地震で解放されたひずみの量から予測する「時間予測モデル」が用いられています。
具体的には、室戸岬近くの室津港での過去3回の巨大地震による隆起量が調査されました。昭和南海地震での隆起量は過去の2回よりも小さく、次の地震までの間隔も平均よりも短くなると予想されています。昭和南海地震から約80年が経過した現在、南海トラフ巨大地震の発生が切迫していると言えます。
適切な備えを
2019年に南海トラフ巨大地震が発生した場合の最大の死者数は23万人程度と想定されました。これは、東日本大震災の死者数の10倍を超える数値です。
建物や塀などの耐震化、および斜面の補強工事が進むことで、揺れによる死者を減らすことができます。家具を固定して備えることも重要です。
津波から逃れるためには、沿岸地域では地震発生直後の迅速な避難行動が不可欠です。南海トラフ地震に対する警戒心を持っている人も多いでしょう。全国の活断層で懸念される大地震について、今一度、お住まいの自治体の防災情報や避難経路を確認しておくことをお勧めします。