動物心理学入門 / 監修:日本動物心理学会

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書籍情報

タイトル

動物心理学入門

動物行動研究から探るヒトのこころの世界

Introduction to Animal Psychology:Human Mind Unraveled by Animal Research

発刊 2023年7月15日

ISBN 978-4-641-7488-7

総ページ数 148p

監修

日本動物

編者

小川園子・富原一哉・岡田隆

出版

有斐閣

もくじ

  • 序章 動物心理学のすすめ ―こころの謎を動物たちと説いてみよう―
    • はじめに
    • 行動神経科学と比較認知科学
    • 動物たちと解く7つのこころの謎
  • 第1章 脳から探る ―こころの基盤は脳なのだろうか?―
    • 脳は何からできているの? ―脳の構造―
      • こころの座としての脳
      • 脳の主役:神経細胞
      • 脳の主役を支える役者たち
    • 脳で情報はどのように伝わるの? ―神経細胞のはたらき―
      • 神経細胞が活動するということ
      • 情報の伝導と伝達
    • 脳の大きさと頭の良さは関係あるの? ―脳の系統発生と知能
      • さまざまな動物の脳の大きさ
      • 知能
      • 脳の系統発生と知能の起源
    • 脳はどのように決断しているの? ―意思決定の脳メカニズム―
      • 価値と意思決定
      • ドーパミンと報酬予測誤差
      • 脳の中の2つの意思決定プロセス
    • コラム① 動物心理学の歴史
    • コラム② 動物実験倫理
  • 第2章 動物の多様性から探る ―こころと脳の個人差はどう作られるのか?―
    • 行動は遺伝するの?―行動の遺伝学的研究―
      • 生まれか育ちか?
      • モデル動物で見る行動の系統差
      • 行動の遺伝解析
      • 行動遺伝学の今後の展望
    • 経験で脳は変わるの? ―知能の発達とエピジェネティクス―
      • 知能は遺伝か経験か?
      • エピジェネティクス
    • 男女の脳の違いはどうしてできるの? ―脳の性分化―
      • 性決定と性分化
      • 性的二型核に見る性ステロイドホルモンのはたらき雌雄に特徴的な行動の発現を支える性ステロイドホルモンのはたらき
    • 男女の行動の違いはどうして起こるの? ―雌雄の性特異的行動―
      • 性差が見られる行動の典型例
      • 雄・雌の行動の違いはどうして起こるの?
      • 性の連続性
    • コラム③ 内分泌かく乱
  • 第3章 動物たちが見せる絆から探る ―こころが通うとはどういうことか?―
    • ベットとこころはつながるの? ―異種間の絆
      • イヌの家畜化
      • イヌの社会的認知能力
      • ヒトとイヌの絆形成
    • 匂いで相手の気持ちがわかる? ―臭覚コミュニケーション―
      • フェロモンを受け取るフレーメン反応
      • 雌のフェロモン
      • 雄のフェロモン
      • 匂いによる母子間コミュニケーション
    • 動物も言葉をしゃべるの? ―聴覚コミュニケーション―
      • 「言葉」はいろんな音?
      • 「言葉」は連続的なもの?
      • 「言葉」は意味をもっていること?
      • 「言葉」のかけらを見つけよう
    • 「好き」って気持ちはどうして起こるの? ―雌雄間の選好性と絆
      • パートナー選びを調べる方法
      • オキシトシンと選好性
      • 「好き」になる仕組みとは?
    • 親子の絆はどうやってできるの? ―愛着形成―
      • 親子の絆のはじまり
      • 愛着と愛着タイプ:ネズミにも愛着タイプがあるの?
      • 絆形成と好奇心
    • 子育てで脳が変わる? ―母(雌)親と父(雄)親の子育て―
      • 母親になると「母親脳」に変化する?
      • 何が「母親脳」を作るのか?
      • 「父親脳」はあるのか?
      • 「親脳」を育てるために
    • コラム④ 動物の発達障害
    • コラム⑤ 動物心理学で使うユニークな行動テスト
  • 第4章 動物の社会的葛藤から探る ―ヒトはなぜ葛藤し、衝突するのか?―
    • なぜケンカするの? ―攻撃行動―
      • なぜ攻撃するの?
      • 攻撃行動にルールはあるの?
      • ストレスがかかると攻撃的になる?
      • 勝つことは嬉しい?
      • 攻撃行動に欠かせないホルモンとフェロモン
    • 強さってどうやって決まるの? ―社会的順位―
      • 強さを決めるのは何のため?
      • どうやって強さを決めるの?
    • 他人の不幸は蜜の味⁉ ―妬みとシャーデンフロイデ―
      • 動物も嫉妬する?
      • 他人の不幸は蜜の味?
      • 動物も不公平は嫌い?
      • さまざまな共感性の意味
    • 助けなきゃ! ―共感と援助―
      • げっ歯類の共感
      • 向社会的行動
      • 援助行動の神経メカニズム
    • コラム⑥ 不合理な行動で、不条理な世界を生き延びる
  • 第5章 動物の感覚・近くから探る ―彼らの感じている世界は我われと同じか?―
    • なぜ形がわかるの? ―視覚世界―
      • 光から視覚へと変換する基本的なメカニズム
      • 動物の視覚を調べる意義
    • 音で世界を「見る」? ―エコーロケーション―
      • コウモリはどんな息も仁尾?
      • コウモリの発する超音波
      • エコーロケーションのメカニズム
      • コウモリの混信回避行動
    • どのようにして時間を感じているの? ―時間認識―
      • 時間の認識をどのようにして調べるのか?
      • 時間はどのように生み出されているのか?
    • 腹時計って本当? ―生物リズム―
      • サーカディアン・リズムの研究にノーベル生理学・医学賞が授与された
      • 腹道警のメカニズムはまだわかっていない
    • コラム⑦ 動物心理学で使う神経科学的手法
  • 第6章 動物の学習から探る ―どのように学び、忘れるのか?―
    • 物を覚えるときの頭の中は? ―記憶痕跡(エングラム)―
      • 記憶痕跡(エングラム)とは?
      • 記憶痕跡と脳
    • なぜ道を覚えられるの? ―海馬と空間学習―
      • トールマンと認知地図
      • 海馬と認知地図
      • 「地図」を使わない空間学習
    • 眠ると記憶が良くなる⁉ ―睡眠と記憶―
      • 記憶の固定化
      • 覚えてから決まった時間によく眠ることが大切
      • 睡眠はどのように記憶に作用しているのだろうか?
    • なぜ忘れるの? ―忘却と消却のメカニズム―
      • 記憶の忘却
      • 動物で記憶や忘却を調べる方法
      • 思考的忘却
      • 消去の学習
    • コラム⑧ 行動薬理
  • 第7章 動物のこころの不調から探る ―なぜ悩み、病むのか?―
    • トラウマってどうやってできるの? ―恐怖の記憶・学習―
      • トラウマ記憶はなぜ強固に作られるのか?
      • トラウマ記憶は古典的条件づけを用いて調べられる
      • 恐怖条件づけの記憶と脳
    • なぜ依存するの? ―薬物依存のメカニズム―
      • 精神疾患としての薬物依存
      • 身体依存と精神依存
      • 薬物自己投与と精神依存
    • ストレスとうまく付き合うには? ―ストレスのメカニズム―
      • ストレスを知ろう
      • ストレスとからだと脳
      • ラットの心的外傷後ストレス障害研究
    • なぜこころの病気になるの? ―精神疾患の動物モデル―
      • マウスを用いた社会的ストレス研究
      • 遺伝的背景に着目した動物モデル
      • 動物モデルでの研究の意義
    • コラム⑨ ノーベル賞と動物心理学
    • コラム⑩ 動物心理学はSDGsにどう貢献しうるか?
  • 引用・参照文献
  • 索引

はじめに

 動物を対象とした研究を通して、ヒトの「こころ」を理解しようとする学問領域である動物心理学を広く知っていただくことを目指した入門書です。

 さまざまな動物種の、さまざなま種類の行動に着目し、各々の種におてその行動がもつ機能や意味を正しく理解した上で「行動の表出を制御、調節している脳の仕組みやはたらき」を明らかにすることにより、「こころ」の謎に迫る研究を紹介したいと思います。

「好き」という気持ち

プレーリーハタネズミのつがい形成
①異性の匂いが鼻腔にある感覚受容器から脳の偏桃体内側核に送られる。
②偏桃体内側核で異性刺激であることが選別され、性行動の神経科路を活性化する。
③性行動回路は、オキシトシンニューロンを介してドーパミン報酬系を活性化する。
④これにより特定の異性個体の匂いに対する”好み”が生じられるようになる。

 特定の相手を「好き」になる仕組みを研究するモデルに、一夫一婦制のつがい形成をするプレーリーハタネズミが使われています。

 プレーリーハタネズミは、交尾を行うとその相手と一緒に過ごします。ですが、つがいを形成する前のプレーリーハタネズミの雄は、特定のメスへの選好性を示しません。脳内のオキシトシンが低レベルに抑えられているからです。

 ところが、交尾により脳内にオキシトシンが放出され、それによってドーパミン動作性の脳内報酬系が活性化されると、動物はその刺激を求めるようになります。

 プレーリーハタネズミの場合は、交尾した相手の匂いと脳内報酬との条件づけ学習が成立し、その相手の匂いを求めるようになるのです。

動物のシャーデンフロイデ

シャーデンフロイデ
 相手が悲しんでいるときに、自分が密かに嬉しくなってしまう気持ちを、ドイツ語に由来する言葉でシャーデンフロイデと呼ばれます。
 いわゆる、ざまみろです。

 シャーデンフロイデを動物が抱く可能性はあるのでしょうか?

 マウスを集団で飼育すると、喧嘩なので社会的な順位が決まり、下位マウスと上位マウスの階級が生まれます。下位マウスは上位マウスに辞職時の順番を譲ったりするするのです。

 3つの部屋から構成される実験箱の方の住の部屋に、薬物によって肢に痛みを感じるようになっている上位マウスを置き、下位マウスを中央の部屋放ちました。すると、下位マウスは痛がっている上位マウスのいる部屋により長く滞在したのです。

 チンパンジーは、自分に対して好ましくない行動をとった飼育員が罰せられている状況を、多少苦労してでも見物に行くことがわかっています。

 餌をくれる良い飼育員と、餌をくれるがすぐに取り上げてしまう悪飼育員が、柵を挟んで向かいの部屋で別人に暴力を振るわれているところをチンパンジーが目撃するという実験があります。叱られているのが、悪い飼育員だった場合、チンパンジーはわざわざ重い扉を開けてまで、より積極的に続きを見に行くのです。

覚えてから決まった時間に良く寝る

 ヒヨコの刻印づけ学習を利用した記憶の実験です。ヒヨコに対象物をみせてから5~6時間後に固定化に関する変化が起きているが調べる実験があります。対象物をみせてから前半の6時間に睡眠の邪魔をされた郡と、後半の6時間に睡眠を邪魔された郡で反応をみます。すると、前半に妨害を受けたヒヨコは偏好がなくなっていました。このことから記憶した後の特定の時間帯に深く寝ることが、記憶の固定化に必要なことがわかったのです。

 記憶するときに活性化していた脳内の神経活動の再活性が睡眠中に起こるという説と、神経細胞の特性が睡眠時に抑制されるためにたまたま記憶に関与するという説があります。

 ノンレム睡眠中(深く眠っているとき)に神経活動の再活性が起きることは、キカンチョウという歌う鳥で報告されています。レム睡眠中、海馬で光遺伝学の技術で選択的に抑制されることで記憶が弱まることが明らかにされており、これらの「リプレイ」が記憶の固定化に関連すると考えられているようです。

 記憶を定着させるには、勉強の前後にしっかりと眠ることが重要です。試験直前には思い切って眠るという戦略をとってはいかがでしょうか。

ラットの心的外傷後ストレス障害研究

 ラットに心的外傷後ストレス障害(PTSD)のモデルとなるような状態を引き起こした研究があります。

 フットショックと強制水泳を組み合わせた強いストレスを与えると、不安のレベルにどうのように影響するのかを、ストレスの翌日と3週間後でしらべました。

 強いストレスを与えることに加えて、ストレス経験を想起させる手がかり(リマインダー)にさらす条件も設定しました。

 ストレスを与えてから3週間後では、ストレス+リマインダー条件でラットで、ストレスなし条件と比較して活動量の低下(不安レベル亢進)が見られました。リマインダーによってストレス経験についての記憶が長期的に増強されたためと考えられます。

 ヒトのPTSDで見られる長期間にわたる不安レベル亢進と同じようなことがラットでも起こっていたのです。

 副腎髄質から分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンもストレスの記憶に関連していることがわかっています。ノルアドレナリン神経系のはたらきを抑制する薬物を投与することによって記憶成績が悪くなること、糖質コルチコイドを記憶課題の直後に投与することで恐怖記憶が増強されることが報告されています。

 つまりは、嫌なことがあったときに、こころを落ち着けて体も落ち着けるように試みることで、嫌な記憶を後に引きずらないようにできるかもしれません。

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