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目次
書籍情報
武田家三代
戦国大名の日常生活

笹本正治
信州大学名誉教授、長野県立歴史館特別館長。
歴史博士。
吉川弘文館
- はじめに
- 第一章 日の出 家督相続と家臣
- 武田家三代の相克
- 家臣団の編成
- 君臣の「絆」
- 第二章 戦う 時代を生き抜く
- 金がなくては始まらない
- 「武田軍団」の実像
- 勝利のために
- 戦さぶりに現れる個性
- 第三章 治める 公としての統治
- 当国静謐
- 信玄堤の謎 安全と治水
- 甲州法度之次第 戦国大名も縛る法
- 円滑な流通
- 第四章 家族 心の絆
- 家門の維持 当主の結婚
- 子供たちの行方
- 家族愛をめぐって
- 第五章 日々の暮らし 日常の決まり
- 信玄一代
- 躑躅ヶ崎の館
- 甲斐文化
- 風林火山 思想的背景
- 第六章 落日 それでも滅亡した武田家
- 使われなかった新府城
- 滅亡への過程
- 天目山
- あとがき
- 補論 武田信玄と川中島合戦
書籍紹介
この本は、戦国時代を代表する武田家の三代にわたる歴史を、単なる戦いの記録ではなく、彼らの日常生活や人間らしい側面に焦点を当てて描き出しています。武田信虎、信玄、勝頼という三人の当主がどのように家督を継ぎ、領国を治め、家族や家臣たちと関わりながら生き抜いたのか、その姿が生き生きと浮かび上がってくる内容になっています。
戦国大名というと、どうしても戦場での活躍や領土拡大のイメージが強いですが、本書では彼らがどのように日々を過ごし、何を大切にしていたのかが丁寧に描かれています。例えば、家臣団との絆や統治のための法整備、さらには家族との関係まで、普段あまり注目されない部分に光を当てているのが特徴です。
史料に基づいたしっかりとした研究が基盤にある一方で、読み物としても楽しめる工夫がされています。武田信玄の「風林火山」で有名な思想的背景や、滅亡に至るまでのドラマチックな過程も詳しく書かれており、歴史ファンにはたまらない一冊と言えるでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
治水を行った記録がない

大きな被害をもたらす水害ですが、甲斐の場合は山に囲まれているので、大雨が降ると被害も大きかったとみられます。
信玄が治水を行ったとされる場所は、南アルプスから御扡震源が治水を行ったとされる場所は、南アルプスから御勅使川の流れが東に向かって直進し、信濃と甲斐の国境から水を集めて南に下って来る釜無川と合流するあたりです。
当時の信玄には、新規に釜無川の河道を掘ったり、大きな石を配置する技術や人手を徴発するだけの権力はありません。それでも堤が存在し、信玄堤の名前からして、信玄時代に治水が行われた可能性は高いです。
既にあった御勅使川の流路と釜無川の流路を活かし、過去にあった堤防をつないで整備したことで、水田などを保護する水流と、扇状地における輪中堤防を作ったのではないかと推察できます。