歴史を学ぶ「世界史の考え方」

※ニートが興味をもった部分を紹介します。

はじめに

 国と国とで歴史認知が違う時代には、ある「問い」にもとづいて歴史の事実をいかに多角的にみるような歴史学習が望まれます。

 2022年度から実施される高等学校の新しい学習「歴史総合」が新設されました。日本と世界の歴史を統合して、見方や考え方を自覚的に学ぶことを目指した画期的な科目です。

 本書では、歴史研究者をゲストに迎え歴史書について語ってもらいたいと思います。

書籍情報

タイトル

世界史の考え方

シリーズ 歴史総合を学ぶ①

編集

小川幸司

成田龍一

出版

岩波新書

資源、物流から世界をみる

 銀の物流が16世紀から18世紀の東アジアのみならず、世界史的なある一つの時期をつくり出しました。
 アメリカ銀、日本銀も中国へ向かう動きを明らかにし、大西洋貿易とともに存在していました。

 16世紀は「大航海時代」という言い方がされてきました。銀以外の物流も当然あったのです。

 岸本さんは「商品作物」として生糸やニンジン、タバコや甘藷(サツマイモのこと)など、消費される品物についても着目しました。物が媒介する複合的な要因によって社会が変わっていく様子を書しています。

 明治維新も、開国へという動きと並行して説明されてきましたが、東アジアの「商品作物」流通も複合的に取り入れる必要がありそうです。

岸本美緒教授のお話 (専門は中国史、お茶の水女子大学名誉教授)

 戦国時代以来の中国社会は基本的には流動性の高い社会です。帝政時代の中国にはほとんどありませんでした。
 清朝を立てた女真族は東北にいる狩猟民族と言われていますが、薬用ニンジンとか毛皮とかの高級品の交易で利益を得ていた商業的民族でした。そうのような満洲人たちが辺境社会で助け合いのし上がってできたのが清朝です。

 中国は商品を輸出して銀を輸入する経済繁栄国の立場にありました。日本は、銀を輸出する側で、原料輸出を行う後進国的な立場だったのです。銀もだんだん枯渇してくる中で、外交易を発展させなければなりません。輸入代替という道も新しく始めました。そうなると、日本はしっかりとした体制を造る必要があります。

 鎖国的な日本と海外貿易を続けていく清朝では、立場の違いから考え方も違っていたのです。

 社会構造が集団を単位としていない社会はあちこちにありますが、その典型的な国が中国になります。
 貧富の差も激しい競争社会のなかで、生きていかなければなりませんでした。単身の出稼ぎの男性が集まって暴力や詐欺も絶えないような非常に生きずらい時代も存在したのです。そのような状況で、宗教を媒介とした結社がつくられていったのです。
 また、商業団体として会館・公所というものがあります。厳しい社会で助け合うために、同郷の人たちを集まる団体です。今でいえば県人会のような集会です。

「歴史総合」の事業で考えたいこと

  • 「イギリス・フランス・アメリカが歴史発展のモデルである」という根拠と問題点について
  • イギリスを基準にして日本や中国の発展度合いを考察するという方法以外の比較の仕方について
  • ヨーロッパが生み出した「自由」とか「豊かさ」にはどのような限界があるのか
  • 世界との関係を見るために、どのような商品に着目するればよいか
  • 日本の資本主義の興隆において植民地はどのような役割を担っていたか
  • 世界各地にあった伝統社会は、その後の産業革命で、どのような影響を与えたか

岸本美緒教授の監修図鑑

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帝国主義の展開

 1916年にブルックリンにクリニックを開いたマーガレット・サンガ―は、貧しい移民や黒人に「劣等な子孫」を作くらせないことが大切であると主張していました。
 ハリー・ラフリンは、すべての州で強制断種法を定め、1944年1月までに全米で4万2000件の断種が行われています。

 アメリカ社会が作り上げた優生学的断種法や異人種間結婚禁止の法体系は、やがてナチス・ドイツのニュルンベルク法のモデルになっていくと指摘されているのです。

貴堂嘉之教授のお話 (専門はアメリカ政治社会史など、一橋大学院社会学研究科長・教授)

 アメリカが建国当初から移民の国だったのかを検証しました。実は、建国から移民統計を取り始める1820年までの約40年間の移民数は、25万人ほどしかおらず、移民国家とは呼べないような状況であることがわかるのです。
 移民奨励が登場するのは1860年のリンカン大統領の共和党政権です。ようするに、19世紀初頭から綿花栽培が深南部で急速に発展する中、その労働力を担っていたのが奴隷労働だったのです。決して移民ではありません。

 近代日本史でも、北米・南米など非勢力圏に向かう人流は「移民」、朝鮮半島や満州など勢力圏に向かう人流は「開拓民」「移民」と別扱いになっています。近現代史の歴史理解の課題といえるでしょう。

 「すべての人間は平等に造られている」など平等の理念を国家像として掲げていましたが、1790年い市民権取得の条件を「自由な白人」のみと制限する帰化法を制定しています。これにより、アイルランド系、イタリア系、ユダヤ系、日本人が黒人奴隷との差別化を図り、「白人」カテゴリーへの参入をめぐって、移民集団間の序列化が進みました。

 「自由の帝国」の建設は植者植民地主義と強い関係があり、暴力性があります。国民史では、「移民国家」像により巧みに隠蔽されてきたのです。

 世界各地で移民や難民らへの差別や人権侵害が起こている現代の抗い方について、マイノリティの反差別運動の戦い方から学ぶことがとても多いと思っています。
 19世紀後半にアジア系移民は、数千の法廷闘争を展開し、最高裁判所で「帰化不能外国人」の子どもにも出生地主義を認めさせました。

 日系三世が牽引した、日系人強制収容への公式謝罪と買種を求めるリドレス運動は、簡単な問題ではありません。なぜ日系人だけが対象で、黒人奴隷の子孫やアメリカ先住民の子孫らは対象にならなかったのか、というマイノリティの権利を実現しようとする運動です。この運動はいつの間にかアメリカのナショナリズムの形成に加担してしまう危険性を秘めているのです。
 日本でも、人種差別的なヘイトスピーチやヘイトクライムは広く見られ、入国管理施設での暴力が後を絶ちません。

 過去に怒った人種差別が、誰にでも起こりうる出来事として想起できるように、現実の社会を変えていく必要があるように思えます。

「歴史総合」の授業で考えたいこと

  • 各国の人々は、なぜ自国の帝国主義戦争を支えていったのか
  • 帝国主義の歴史について、パワーゲームのようにとらえるのと、人々の具体的な姿をとらえるのとでは、歴史像はどうのように違って見えるか
  • 帝国主義の支配する側、支配される側のそれぞれについて考える
  • 人種主義とナショナリズムの比較
  • アメリカ社会において「人種」とは何なのか
  • 18世紀後半から生じた世界的問題のなかで、現代にどのような影響を与えているか

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感想

 中国は民族関係と上手く付き合っていきのが難しそうですし、アメリカの政治では移民問題もなかなか難しそうです。アメリカの経済でいえば、医者がお金持ちになれない「自由」のありかたなどがあげられるでしょうか?明確な答えがありません。

 あと、今の高校生でなくて良かったと思いました。これは、難しい授業です。固定概念を取っ払い、歴史的知見をあらゆる立場に立って考えなくてはなりません。日本、ヨーロッパ、アジア、物流、経済、欧米、軍備、人種差別、奴隷、様々な見方が存在するでしょう。

 1つの出来事を3つ目の見方を模索し始めたあたりで、頭が爆発してしまいそうです。

 大学受験では、想像力が試される問題が登場するかもしれません。
「問題1 奴隷の立場としての意見を述べよ。 __アメリカに住み農場の奴隷として働かされていた__奴隷としてはかなりの好待遇で___ルーズベルト大統領の隔離演説の反響はどうだったか答えよ。(500字以内)」

 こんな問題がランダムで出されたら、答えられる気がいたしません。

 想像力を発達させた、若者たちが増えるということでしょうか?素晴らしい。

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