ヒトは生成AIとセックスできるか/著者:ケイト・デヴリン

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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

ヒトは生成AIとセックスできるか

人工知能とロボットの性愛未来学

発刊 2023年9月1日

ISBN 978-4-10-507361-9

総ページ数 320p

著者

ケイト・デヴリン

ロンドン大学キングス・カレッジ、デジタル人文学准教授。
クイーンズ大学ベルファストで考古学を学んだ後、ブリストル大学でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得。専門はコンピュータと人のインタラクションや人工知能。

訳者

池田尽

出版

新潮社

もくじ

  • はじめに ロボットと人口千野が出会うとき
  • 第1章 かつてきた道
    • セックストイの起源
    • バイブレーターとヒステリー
    • 「遠隔ディルド」
    • 野郎どもと女たち
  • 第2章 ロボットは奴隷化コンパニオンか
    • ロボットの誕生
    • ロボットと強制労働
    • ケアとコンパニオンシップ
  • 第3章 人工知能と語り合う
    • 「考える機会」の歴史まとめ
    • 機械に学習させる方法
    • 私たちののうないで実行されていること
    • ディープラーニング
    • 機会に”意思”を出力させるには偏在背う音声アシスタント
    • <Siri>と語り合う方法
    • 知能は定義可能か
  • 第4章 恋という字はした心
    • セックスは定義できるのか
    • セックスについて語るのはなぜタブーなのか
    • 宗教はセックスをどう扱ってきたか
    • セックスの民主化
    • ペットへの愛
    • アニミズム
    • 擬人観と対称性愛
  • 第5章 シリコンの谷間
    • 工芸品のようなセックスドール
    • セックスロボットをめぐる詐欺
    • 「私は製造された存在です」
    • 男性型ドールに需要はあるか
    • ドール所有者は孤独な人びとか?
  • 第6章 ロボットとセックスはどう描かれてきたか
    • 女性のモノ化
    • 音声アシスタントはなぜ女性の声なのか
    • 「セックス・マキナ」
    • ほとんどのセックスは繁殖とは無関係である
  • 第7章 セックスロボットの可能性
    • セックス、宗教、結婚
    • 結婚は生き残れるか
    • 「セックスフェス」英国名門大学にやってくる
    • 高齢者のセックス事情
    • セックスをめぐる調査の困難さ
    • セックスに相手は不可欠か定義がに追いつけない
  • 第8章 セックスロボットはディストピアか
    • 「売春」か、「セックスワーク」か
    • 禁止は地下化させるだけ
    • ポルノグラフィも変化してきている
    • セックスロボットと暴力
    • セックスロボットはレイプを減らすか
    • 暴力とBDSM
    • セックスワークはどう変わるか
    • セラピーとしてのセックス
    • ロボットは付き合うな?
  • 第9章 セックスロボットと法
    • ロボットと不同意性交
    • セックスプライバシーは誰のものか
    • セックスプライバシーは人権侵害を引き起こす
    • セックスロボットの乗っとり
    • 有名人に似せたセックスロボット
  • 第10章 不気味の谷を越えて
  • エピローグ 愛し合うならテクロノジーで

はじめに

 この数年間、セックスロボットについて報じる記事が次々と新聞や雑誌をにぎわせてきましたが、私はそのほとんどに目を通してしました。

 本書は愛情表現とテクノロジーについての本であり、コンピュータと心理学についての本でもあります。歴史と考古学、愛と生物学についての本でもあります。近未来と遠未来、SF小説でいうユートピアとディストピアについても語るべきことは多くありますし、孤独と友情、法と倫理、個人と社会について書かれた本でもあるのです。

 機械が溢れる現代社会における人間についての本となっています。

 ロボットとAIは私たちの日々の生活にますます溶け込み始めています。AIにいたってはもうあちらこちらに存在して、あまりにさりげないので、気づくことさえ困難になってきています。ネット通販のカスタマーサポートのページはほとんどAIのチャットボットでしょう。

 感性のあるAIはまだ存在していませんが、人間に似た振る舞いをさせるAIは可能です。人造人間の製造までの道筋はついたようなものというのは言い過ぎでしょうか。

 性的欲求を満たすことのできるコンパニオンロボットが、孤独の解消や快楽の提供、あるいは強制性をともなくセックスワークの根絶や、性犯罪者を対象とする治療・社会復帰のための活用なのだとすれば、ロボットの大頭は恐れることではなく、寄り添ってみていいことなのかもしれません。

ロボットと強制労働

 世界的に製造業、特に自動車業界において専用のロボットがよく利用されています。産業用ロボットは180万台、軍用・医療法ロボットは28万台、掃除・娯楽・教育ロボットが670万台という数字が示されているのです。1996年にはホンダの2足歩行ヒューマノイド<P2>が開発され、ASIMOなどに進化しています。

 ロボットをヒト型にする必要があるかどうかが議題にあがることもありました。平衡を保ったり、歩いたり、力加減を調節しながら触れたりなど、何気なくこなしている動作をロボットにやらせるのは技術的難易度もコストを跳ね上げます。

 人型にする理由として、人に合わせて世界が設定されているという説明が成り立つでしょう。ドアや通路は人間の体の大きさに合わせてつくられ、階段は人の足の大きさ、棚は人の手が届く範囲に設置されています。私たちの環境にすんなり当てはまるロボットの方が都合がいいのです。

 ほとんどの人が1度や2度、何かしらの奇妙でゾッとするような感覚を体験しています。命が宿っていないのに生きて見える仮面やマネキンが恐怖を誘うような、そうした効果を活用したホラー映画をおそらく観たことがあるでしょう。受け手側が感知している情報にズレが生じるのも、認知の面からは不快です。ヒューマノイドとの隔たりは、技術が進展して解決できる可能性もあるけれど、現時点では至難の業となっています。

音声アシスタントはなぜ女性の声なのか

 今日の音声アシスタントは、導入当初の初期設定は女性の声が多いです。アレクサに性別をきくと、「キャラクターとしては女性です」と返事をしました。人間らしさを目指しているのだから、性別を感じさせない声を選ぶことが難しいのはわかります。

 女性の声がインターフェースに適しているという科学的な説明は数多くなされてきました。CNNの番組で、誰にも好まれる男性の声を見つけるよりも、誰にも好まれる女性の声を見つける方が容易であり、「人間の脳が女性の声を好むようにできているのは科学的に証明されている事象だ」と発言しています。女性の声の方が音程が高いため、聞き取りやすいという”神話”もあります。しかし、老衰すると聞こえなくなるのは高温の周波数からです。

 倫理的にも道徳的にも、音声アシスタントのありかたを再検討したほうがよいのではないでしょうか。債券等するのであれば、セックスロボットについて再検討してはどうでしょう。男性のためだけでなく女性のためにも造ることは、女性をモノ扱いする問題への対処へとつながります。

レイプを減らすか

 アラナという20代の女性が、地震が性行為の経験がないことに孤独を感じ、同じ境遇の人びとを募る目的で立ち上げた初期のオンラインコミュニティをその起源としていました。しかし、20年経った今、孤独な人びとが共感を求め合うという当初の目的は歪曲され、憎悪や女性蔑視、暴力を助長する場所になってしまっています。

 売春の合法化、労働に対する対価の1つとして与えられるべきという偏執的な信条に浸っている人もいるのです。

 その解決策としてセックスロボットの利用をしきりに議論がでます。性的な満足が得られる手段だからというだけでなく、セックスロボットは人間の女性の存在価値を封じ込めて、性犯罪を衰退へと向かわせられるものという意見もあって、案外広く受け入れられています。

 セックスロボットとへの否定的な意見はありますが、その多くがセックスだけではなく充実した関係を思い描いているようなものが多いのです。ロボットに危害を加えたいとする議論ではなく、危害の矛先は女性だけで充分といったものを感じます。

 憎悪の感情は一度心の奥底に染みつくと、ようやくセックスができたからといって消えてなくなるようなものではありません。「世の中が与えるべきなのに、社会から奪われた」というようなイデオロギーは、そう簡単に払拭できるものではないのです。

有名人に似せたロボット

 肖像権はどうでしょう。

 2016年、プロダクトデザイナーであるリッキー・マーは、スカーレット・ヨハンソンに似せたロボットを一から製作しました。それなりによくできた仕上がりだったようです。セックスロボットでもなく、営利目的でもなかったため、マーが自身のために自宅でつくったロボットだったから、訴訟沙汰にはなりませんでした。販売目的でつくられたとしたら、きっとちがう話に発展していたでしょう。

 <リアルドール>を開発しているアビスクリエーションズでは、買い手が明白に許可を得ていない限り、特定の個人に似せたドールはつくらないというスタンスをとっています。標準型のドールの外見を決めるにあたり、ある程度誰かに似せた容姿になっていることも否定はできません。一方で、特定のポルノスターのドールはすでに存在しています。

 自信の肖像権の管理でいえば、画像合成技術が発達したことにより顔スワッピングというフェイクポルノが誕生し、本物さながらの出来栄えの動画が大量につくられました。自分の肖像が盗用されたり、モノ化されるリスクを低減する方策を準備しておくということなのかもしれません。

 セックスロボットであれば、だれかを模したロボットを無許可でつくることが許さるわけではありませんが、本人と見間違えることはないだろうし、ネットのように拡散することもありません。

エピローグ

 孤立や孤独の原因をテクノロジーのせいにする見解が、あまりにも多く見られます。少しでも踏み込んで考えてみれば、同じテクノロジーであっても、絆を強めるものだってあることは誰でも知っているはずです。

 新しいコミュニティが生まれ、未来の私たちの愛情関係は、決して殺伐として孤立したものではなく、誰かと一緒にいたいという、これまで人類が抱き続けてきた願いはそのままに、人びとをつなげてくれるネットワークであり続けます。

 テクノロジーのレイヤーを重ねながら、私たちはそれでも頑として人らしくあり続けるでしょう。

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