書籍「経済安全保障」

※サイト管理人が興味をもった部分を紹介します。

はじめに

 ウクライナ軍事侵攻への非難が強まる中、日本企業のロシア関連事業にも影響が広がり始めました。

 ロシア経済は、エネルギー、金融、科学技術などの分野で中国経済との一体化を加速させるでしょう。

 困難な経営判断が必要になってくる中で、現在する経済安全保障の課題があります。

書籍情報

タイトル

経済安全保障

異形の大国、中国を直視せよ

著者

北村滋

北村エコノミックセキュリティ代表、前国家安全保障局長

聞き手:大藪剛史

出版

中央公論新社

ロシアスパイによるサベリエフ事件

 2004年8月から警察庁が外事課長を積め、外国によるスパイ事件の捜査と情報活動を指揮してきました。日本の重要な技術が盗まれていく実態を見たことが、経済安全保障の重要性に覚醒した原点です。

 東芝子会社の社員が、軍事転用可能なパワー半導体関連情報をロシアに漏らしていた事件があります。ウラジーミル・サベリエフという男に漏洩し、見返りに現金約100万円を受け取っていました。これをサベリエフ事件と呼んでいるのです。

 サベリエフは対外情報庁(SVR)の先端技術獲得部門に所属していたスパイです。

 コンサルタントの仕事には必要ないと思われる資料を求められ、途中からおかしいとは思っていたが、飲み代欲しさに断れなかった

と東芝子会社の社員は供述していました。

 警視庁は10月、解雇された元社員とサベリエフを東京地検に書類送検しています。しかし、サベリエフは書類送検される前の6月に帰国し、逃がしてしまいました。

 現行犯逮捕できればよいが、なかなか難しいのです。

 大事にしたくない会社側は、「流失した技術は、あまり重要ではない、ということにしよう」という思いからか、「会社に与えた損害が小さい」として2人を起訴猶予処分という形になりました。

データは国家なり

  • 量子センサーは、周囲のデータを観測する
  • ブロックチェーンは、データを守る
  • AIは、データを分析する

 量子、ブロックチェーン、AIの3つはデータを扱うという点で共通しています。データは、今の時代では石油のように、経済や安全保障に欠かせないものなのです。

 私たちがインターネットを壮大な規模で使うようになったのは、1995年ごとです。ガソリンの価値を知るに至るまで人類は30年、40年かかっています。データが我々の経済を回している事実にようやく気がつき始めました。

 21世紀は「データの時代」になっていることを早く認識するべきです。

中国とどう向き合うべきか

 INF条約をロシアと結んでいた米国は、条約に入っていない中国より極東でのミサイル能力が大きく劣ります。国民の生命、身体、財産の安全にも直接かかわる事柄であり、真剣に議論する必要があるでしょう。

 中国とは必要な備えはしつつ、安定的な関係を作る外交努力は欠かせません。中国へ行き、経済界の声を聞いても、「政治的関係が良好な時ほど経済的関係も良好にすすむ」と言っています。しかし、尖閣諸島の状況や中国に厳しい視線を向ける日本国内の世論を踏まえると、政治的に安定的関係になかなか行き着けないという現実があるのです。

 日本は他国に比べて、安全保障面でかなり高い脅威にされされています。

 中国は国際社会の批判を無視して、南シナ海で領有権を主張するために「九段線」の内側に人工島を作って軍事化してしまいました。中国は独自に占領したい九つの線(領域)のことを「九段線」と呼んでいます。なぜ、そうなったかと言えば、そこに抑止力が無かったからです。日本としては強靭な抑止力を構築していく必要があります。

バイデン政権の対中政策

 台湾海峡における抑止力強化と米国権益の保護に言及しており、サイバー分野に関しては同盟国とともにオープンで安全なインターネット環境への支援をする動きを見せています。

 インド太平洋戦略を含め、同盟国、同志国重視、グローバルな規範や合意形成を心がけているようです。経済安全保障政策はそのためのツールとなり得ることは間違いないでしょう。

 バイデン政権の対中認識については、トランプ政権と大きな相違はなく、対中強固措置を続けています。強制労働による製品を輸入しない措置は確実に講ずる必要があると述べているのです。

 日韓豪との関係は極めて重要であり、同盟関係を修復したいとも述べています。

中国製造2025と半導体市場

 中国産半導体の生産も拡大しているが、自給率は2020年で15.9%に留まっています。

 中国製造2025での目標自給率は40%となっており、2025年には70%を目指していました。

 国内半導体も、大半は外国企業の工場が製造しており、中国企業の生産割合は3割未満に止まっています。

 国産化による依存脱却は困難と認識しているとみられ、製造設備、材料開発に投資しつつ、海外からの安定調達も重視しなければならない状態です。

 一方で、半導体製造工場の建設の大規模な進呈に伴い、鋼鉄、アルミ、太陽光パネルに続いて半導体の供給過剰が発生する可能性も排除はされません。

 中国は「世界の工場」として注目されるものの、大部分を海外企業に頼らざるを得ない状況です。調達を海外に依存していることで「チョーク・ポイント」となっています。

※チョーク・ポイント:輸出入を絞ることで、甚大な被害を与えらる拠点のことです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

紹介文に載せきれませんでしたが、防衛費を増やす理由がよくわかる本になっています。

米中について学び、日本の安全について考察することができるようになると思います。

文字の量に圧倒されてしまうかもしれませんが、哲学書のように難しくて解らないということはないはずです。

経済安全について知りたい方におすすめできる書籍となっています。

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