紛争地のポートレート

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 2021年、お盆をまじかに家族と帰省の予定を話し合っていたころ、タリバンが勢力を巻き返しつつありました。そのアフガニスタンへの緊急派遣要請が入り、ためらいもしていたのです。

 各国の大使館員やNGOスタッフたちは、アフガニスタンの国外へと懸命の脱出を図っていました。首都カブールの空港には、タリバンの恐怖から逃れようと脱出を試みる市民が数千人も殺到していたのです。

 絶望感を抱く市民を残し、大統領は家族を引き連れいつの間にか脱出してしまっていました。

 政権転覆、爆弾テロの炎と煙、銃を抱える兵士、逃げ惑う市民、ほんの最近まで起こっていた現実です。

 今回は、講演や取材では「後回し」になるような話を書きたいと浮かびました。紛争地の医療現場で直面するたくさんの血と涙、ジレンマや憤りは、機会があるたびに最優先で伝えてきたものです。しかし、本書では各地で出会った人々や、私がどう過ごしたかを主眼に置いています。

 どんな紛争地でも、そこで暮らしを営んでいる人々が必ずいます。そんな彼らの一生懸命に生きる強さや、人間愛に触れてきた体験は大変尊いものでした。

書籍情報

タイトル

紛争地のポートレート

「国境なき医師団」看護師が出会った人々

第1刷 2022年4月30日

発行者 茨木政彦

発行 (株)集英社クリエイティブ

発売 (株)集英社

装丁 名久井直子

印刷 凸版印刷(株)

製本 (株)ブックアート

ISBN 978-4-420-31094-9

総ページ数 252p

著者

白川優子

 看護師。小学1年生で「国境なき医師団(MSF)」に憧れ、日本とオーストラリアで看護師としてのキャリアを積んだあと、36歳で念願のMSFに参加しました。手術室看護師として、イエメン、シリア、イラク、南スーダン、ネパール、パレスチナ(ガザ地区)、アフガニスタンなど、紛争地や被災地を中心に活動しました。2018年以降はMSF日本事務局に採用担当として勤めています。

出版

集英社

世界一大きな監獄の少女

Image by Mario Léveillé from Pixabay

 パレスチナ自治区ガザ地区は、「世界一大きな監獄」「天井のない監獄」と呼ばれ、194万人もの人々が閉じ込められています。

 ガザはシリアに比べ、一見平和に思えたが、人々の挨拶代わりのいとことは「次の戦争がいつ頃始まるらしい」というものです。

 ガザでは誰もがギリギリのところで負の感情をせき止めていました。

 実はガザにも中東の伝統的な公衆浴場があります。「ハマム」と呼ばれ、貴重な憩いの場となっています。ハマムをガザで体験できるとは思ってもみませんでした。

 大きな脱衣所があり、湯船には30人くらいはいたでしょう。大きく長いベンチに腰掛けて、おしゃべりに花を咲かせている人もいれば、果物を食べている人もいます。マッサージを施されている女性もいて、熱気にあふれた、壮大で、エキゾチックな光景です。

 ハマムには親に連れてこられた子ども達も必ずいます。習いたての英語で話しかけてくる女の子たちもいるほどです。そんな女の子が私に向かって口を開きました。

「ガザの外ってどうなっているの?」

 絶えない笑い声やおしゃべりが一瞬にして凍りつき、私の体を洗っていた手も止まっていました。それは禁句だったのかもしれません。

 女の子はきょとんとしており、私も何も答えることはできませんでした。

 私を囲んでいた女性の1人が、女の子にいいます。「こっちにおいで」。

 そして抱きしめ、おでこにキスをしました。

 世界で一番人口密度が高い地域、ガザ。失業率も世界最悪です。外にできることができず、ガザの中でも仕事がありません。行き場のない人々、特に青年たちは、やり場のない憤りを壁にぶつけに出向き、境界域の向こう側で構えているイスラエル兵士に撃たれるのです。

モスル開放の日

UnsplashLevi Meir Clancyが撮影した写真

 騒音を放つヘリコプターが消えて、空爆による衝撃波も感じることはありません。

 遠くにみえる黒煙は、数日前の戦いの名残でしょうか。

 戦争の終息。2017年7月10日、イラクのアバディ首相が、国内第二の都市であるモスルの奪還を宣言し、9か月以上にわたる戦争が終わりました。モスルの市民にとっては、3年を超える苦難の日々です。

 2014年6月からISによって、モスルは電撃的に制圧されてしまいました。逆らう者、怒りを買った者は処刑されます。学校を乗っ取り、殺し方を教える場にしました。モスルから逃げ出すようならスナイパーの餌食になるのです。

 MSF(国境なき医師団)が現地で雇用した医師や看護師たちはみな、ISに囚われいた身です。体に傷がないとはいえ、多くの人々がISによる恐怖を経験し、先進的な傷を負っているのは、実際に話を聞いてみれば明らかでした。

 戦争の終息直前の7月、スマートフォンやテレビの向こう側で報道陣が奪還を待ち構えて騒ぐ中、病院には自力で歩けない人々が次々と収容され始めました。怪我をしてから長時間が経っていて、体力が低下している人、骨折したままの状態で腕が固まってしまった人もいます。このような人々が運ばれてくるということは、モスルのかなり奥まで脱出経路が確保できた証拠だったのかもしれません。

 解放に沸き返る時、市民にとっては援助を求めて世界に訴えるチャンスです。人生を滅茶苦茶にされた市民の長い闘いは、まさにこれから始まります。

 終息後、全身やけどで運ばれてきた60代男性がいました。ガソリンをかぶり、自分で火をつけたのだそうです。

 街が壊され、仕事を失い、養わなくてはならない家族を抱え、これからどうやって生きてゆけば良いのか

という言葉を繰り返すようになったといいます。「私たちは幸い一族全員が傷つくことなく解放されたのに」と姪の女性はこぼしました。

 数時間後には死を迎えるだろう男性を囲み家族が泣いています。ここには居られないと女性は外のベンチに座り、上半身をよじって頭を壁にもたせかけていました。

イエメンでのもてなし

Image by -Rita-👩‍🍳 und 📷 mit ❤ from Pixabay

 銃で撃たれた男の子が手術を終えた時でした。私は彼の膨らんでいるお腹が気になり、医師に報告すると、「これ、栄養失調のお腹だよ」といわれました。

 もともと貧困国だったうえに、長年戦争がやむ気配がないイエメンです。難民キャンプへの支援も強化していましたが、食料が足りていないようです。栄養状態が悪と傷も癒えません。

 気づくと、半年前にあった手術スタッフのランチタイムもありませんでした。彼らは休憩所で食べ物もなく時間をつぶしていたのです。

 近隣のマーケットでいろんな食料が出回っていた印象もあり、買い出しに行ったスタッフはすぐに食べ物を抱えて戻ってきていました。そのマーケットではもう食料が出回っていないようです。

 スタッフの1人が、みんなで食べようと言って、ビニール袋にいれた茹でたジャガイモを持ってきました。マーケットでようやく見つけてきた食料のようです。空き缶に入れられた甘い紅茶を回し飲みしながら、5個くらいのジャガイモを囲みました。

 彼らは、日本人にこんな物しか振舞えないと申し訳なさそうにするのです。

寄付と信頼

作者: せのきた

 MSFは、人道援助にあたり、独立・中立・公平を保つという活動原則を持ち、真に医療を必要としている人々へ、人種や政治、宗教にかかわらず、分け隔てなく無償の援助を提供しています。

 政府から援助を受け取ってしまうと、資金の使い方に制限がかかる恐れがあるので、民間からの寄付が9割となっているのです。

 権力に染まらない部分が大きな武器となっている部分があります。

 2015年のネパール大地震のときです。震災直後、ネパールには、世界中から官民救援チームが集まって活動を始めました。ヘリコプターを使って被害を把握し、ニーズをみつもっていくうちに、カトマンズから約70キロ離れた山岳地帯に目をむけたのです。大地震の被害にあったものの、支援から隔絶されてしまっている村落があり、私たちはただちに医療支援を開始しました。

 他の団体の中には、限られた資金の中での活動限界にジレンマを感じているようです。そのとき、MSFの資金力の強さを知り、資金がないと活動できない、というごく当たり前で基本的な視点に、気付かされました。

 日本には一般人と企業の方々28万人以上がMSFに寄付してくださっていました。2020年度には約43万人に増えています。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 どこの国でも、なんでも、一緒になにかを行動するなら、人の良い方に限ります。飢餓が起こっている国で、他人に食料をお裾分けできるのは、相手のことを慮ることができています。自分に沸いた感情にしたがって、ここにいない人の悪口を言う人に、見習ってほしいものです。

 紛争地の笑顔なり、優しさなり、切なさなりを届ける本になっていて、いろんなことを学べる良本ではないでしょうか。些細な悩みなど吹っ飛びそうです。

 大震災後に、日本にきて、工場のマネージャーとして働くネパールの人がいます。みんなから頼りにされて、一生懸命になって誰よりも働いているように見えます。日本の市民が支援しているからでしょうか、豊かな暮らしをしているとしって日本に来るのでしょうか。恐らくは無関係ではないと思います。ヒンドゥー教のあれこれで、女性は神に近い扱いだとか何とかで困らせる固定概念もありますが、日本のものづくりに貢献してくれているのです。

 もし、自分の周りの人に資金面で助けられるような状況がないような場合は、募金を考えてみてもいいかもしれません。

 下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。

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