遊廓と日本人

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 大正・昭和の吉原のイメージ化、単なる娼婦の集まる場所と考えるのは誤解です。遊廓は日本文化の集積地でした。書、和歌、俳諧、三味線、唄、踊り、琴、茶の湯、生け花、漢詩、着物、日本髪、櫛かんざし、香、駒下駄、年中行事、日本料理、日本酒、巻紙の手紙など、平安時代以来続いてきた日本文化を新たにいくぶんか極端に様式化した空間だったのです。

 華やかな裏で、前借金などのお金にからむ問題や、花魁から遊女までの暮らしの格差、性病対策、遊女たちは健康に必要な食生活を送るのが難しかった側面があります。

 『鬼滅の刃』で遊廓が出てきたときに、子どもに質問されて、遊廓が何かを答えられない親が増えていると聞きます。

 遊廓は生け花や抹茶の作法と、一般社会よりはるかに年中行事をやっていた場所であり、みんなで楽しく日本文化が継承されたということは、ぜひ伝えてください。

書籍情報

タイトル

遊廓と日本人

TOP画像図版 喜多川歌麿「仮宅の後朝」

第1刷 2021年11月1日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

ISBN-13 978-4065260951

総ページ数 176p

著者

田中優子

法政大学総長。専門は日本近世文学、江戸文化、アジア比較文化。

出版

講談社現代新書

遊廓の空間

作者: sakurase aoi

 吉原遊廓は、畑の中に人工的に作られた四角い町で、現代で言うテーマパークです。遊廓の「廓(くるわ)」は囲われて独立した区域をさします。

 時代によって変わりますが幕末から明治期では、地図で見ると約270メートル×360メートルです。とても小さな町で、街の周辺には、城郭のように塀がありました。

 客の予約は食事や休憩の場である「茶屋」という重要な場所があります。そこで客は着替えをしたり、食事をしたり、芸者を呼んで宴会をしました。そのあと、遊女屋に上がって、さらに遊女と飲み、床をともにしたのです。

 お客様は遊女にお金を支払ったつもりになり、抱え主は遊女の家族の返済額を計算していました。返済額が借金の額までいけば、遊女は遊廓を出ていくことができます。それまでは、厳格に監視されるのです。

 今でこそ「人権」が守られていますが、大きなお金が動くということは、そのお金に縛られている人がいるということだったのです。

男に求められた清潔感

作者: cocoanco

 額は広くとり、後れ髪は一本たりともあってはなりません。髪に油をつけて1日に3度はとかし、寝るときは頭を布で巻いてねます。眉は剃って尻上がりに描き、髪は徹底的に抜くのです。歯は白いほどよく、爪はまっすぐに切ります。肌着は白むくに近い方がよく、着物の裏は茶か黒がオシャレだそうです。脇差は長く、楊枝は小さくてまっすぐなもの、履物は草履と、かなり細かくお洒落指南がありました。

 江戸中期では、髪の毛がたくさんあると嫌われるようになり、ちょんまげは可能な限り細くしたようです。毛深さが野蛮の象徴とされ、必要があれば男性も毛を抜きました。戦争のない時代の、男性性を消し去ったファッションこそが、江戸のダンディズムです。

芸能の毎日

作者: DragonR

 見世物として遊女たちのパレードがありました。正月や桜の季節になるとひときわ特別なものになっていたのです。

 花魁は非常に高い駒下駄を素足にはき、長い打ち掛けを着たまま、外八文字と呼ばれる歩き方でゆっくると歩いていきます。

 正月は大菱屋だけが元旦に挨拶まわりをし、二日の日には、豪華で鮮やかな着物を着た遊女たちが、中之町を行き来していました。太鼓や笛の音とともに新年を祝う行事になっていたのです。

近代遊廓が求めたもの

作者: 宮城大豆

 解放令によって、遊廓にいた女性本人が自らの意思で家に帰ることがゆるされ、多くの遊女・花魁が解放されました。

 気になるのは、解放令後の遊女が、どうやって遊女になったかです。農業で立ち行かなくなった家族が総出で上京し、姉の容姿と才能を見込んで、本人の了承をもらい遊女に抱えたなど、様々な事情がありました。

 明治期の吉原でも茶屋が仲介に入り、遊女と遊ぶ客室に誘導する窓口になっていたようです。洋館風の建物に「~楼」と名前をつけて遊女屋の雰囲気がその時代に合った形になりました。

 いずれも当初は評判になって流行ったようですが、じきに廃れています。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 町おこしとしての、遊廓の存在もあったようです。本人の自由が尊重されるようになった時代では、徐々に存在感を失っていった文化・商いでした。

 今のメディアで活躍するアイドルなどと、似ているところがあって変に納得してしまいました。今はやっているVTuberなどは、投げ銭で稼ぎを得ますが、低年齢層や学生などはスパチャにお金を入れることが難しいようです。事務所で商品化されたグッツを買うわけですが、こちらは所属会社の儲けとなります。一番登録者数が多い年齢層が、お金を使うところは会社に吸い込まれているわけです。

 配信で豊かになれないわけではありませんが、本人に使ったはずのお金が、本人に届きにくい構造は、昔の情報どころでも同じのようです。

 一見、賑わっていて華やかで夢の場所というのは、歴史をみても廃れていくというのがわかります。新しいものがとって代れば、繁栄は過去として急に古くなるのです。

 好みのAITuberを選んで、音楽やゲーム配信を楽しむという時代もくるかもしれません。プログラマーが行うガチでストック型のビジネスとなり、リスナーの押し活欲を満たすアイドル事業ができあがります。

 華やかであったものが、過去となる遊廓の歴史を学びました。

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