ハンナ・アレント

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 「全体主義」という言葉は普通、ヒトラーのナチス・ドイツやスターリン時代のソビエト・ロシアのように、独裁的な人物を指導者と仰ぐ政党が排他的なイデオロギーに基づいて支配する政治体制に対して用いられます。

 ハンナ・アレントの思想がさまざまなところで注目されるのは、「全体主義」という現象に正面から向き合ったからにほかなりません。

書籍情報

タイトル

今を生きる思想

ハンナ・アレント

全体主義という悪夢

著者

牧野雅彦

広島大学名誉教授。専門は、政治学、政治思想史。

出版

講談社現代新書

ユダヤ人とは何か

ロスチャイルド家
 宮廷ユダヤ人であったマイアー・アムシェル・ロートシルトが、1760年代に銀行業を確立したことで富を築きました。
 ロンドン、パリ、フランクフルト、ウィーン、ナポリに事業を設立した5人の息子を通じて、国際的な銀行家を確立したのです。
 一族はイギリスの貴族階級にまで昇格しています。

 他の民族と異なるユダヤ人の特徴は、国民国家の外に立つ「アウトサイダー」だったところにあります。

 国民国家の外にあって、国家と国家の間を仲買する金融業者として発展していったのです。

 ロスチャイルド家を中心とするユダヤ人金融業者たちは国家の資金調達、戦争のための軍資金の提供から講和の際の賠償金の手配などを通じて富を獲得しました。

 国家は彼らの国際的なネットワークを通じて情報を利用するという、共生関係ができていたのです。

 金融業で成功したユダヤ人の3世は、文筆家やジャーナリスト、知識人などの世界に入り込んでいきます。「ユダヤ人」を演じることで、上流階級のサロンに受け入れられ、ヨーロッパの共通文化の一翼を担う存在でもありました。

秘密警察、監視の地獄

シュタージ
 旧東ドイツ時代の国家保安省で、秘密警察の役割を担っていた機関です。
 現在、本部だった場所は博物館になっています。国民の監視内容、国内外の諜報活動、盗聴器、隠しカメラ、隠し武器、などを展示中です。

 脅迫や買収、スパイや内通邪を利用した内情の把握、過激な分子をあぶりだして逮捕する等々、表立ってできない脱法的な操作をするのが秘密警察です。

 誰もが自分の無実を証明しなければならない社会では、人は他人を告発して体制に忠実な市民であることを証明しなければなりません。

 ナチス体制の崩壊後にソ連の支配圏に組み入れられた東ドイツで組織された国家保安省(シュタージ)は、本家ソ連の国家保安委員会(KGB)やナチス体制下のゲシュタポをもしのぐ規模の秘密警察となりました。

 シュタージが残した文書には、市民の職業生活から家庭内の私生活にいたる詳細ない個人情報が職場の上司や同僚、家族や友人などから集められていたのです。

 現在の技術を駆使した監視が生まれ、あらたな全体主義が現れることは十分に考えられるでしょう。

公的空間、私的空間の区別がなくなる

 壁や塀に囲まれた家の内部は、特定の人だけが参入できる空間です。そこで私的生活を十分に保障されて、はじめて自分の姿を現せます。

 近代の経済発展や技術の進展は公的私的の区別を奪っていくのです。インターネットやSNSで不特定多数の相手に情報を発信できます。他人を装うこともできるのです。

 インターネットの世界では、見せるべきものと隠しておくものの区別を明らかにしなければなりません。その基盤が見失われれば、人々の間にリアルが失われていくでしょう。

ユダヤ人を助けたドイツ人兵士

アントン・シュミット曹長
 リトアニアでのホロコースト中にユダヤ人を救ったドイツ国防軍のオーストラリア人新兵です。
 非政治的なローマカトリック教徒であり、電気技師であるシュミットは、第一次世界大戦中にオーストリアハンガリー軍に、第二次世界大戦中にドイツ国防軍に徴兵されました。
 シュミット軍曹について残された情報は少なく、ユダヤ人救済行為の実態については、不明な部分が多いとされています。

 アントン・シュミット曹長、彼はポーランドで任務を遂行中にユダヤ人地下組織の人々に出会い、偽造書類や軍用トラックを提供して彼らの抵抗活動を支援しました。1942年3月、彼が逮捕されて処刑されるまでの5カ月間にわたって抵抗活動が続けられたのです。

 極めて危険な行為だったが、ユダヤ人の子どもを引き取ったり、匿う人も少なからず存在しました。

 アントン・シュミットのような抵抗の物語がもっと語られていれば、状況は変わっていただろうとアンナ・アレントは言うのです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 周りに合わせすぎて個性が無いと、極端な「全体主義」に陥る可能性もあるのではないでしょうか。そんな印象を、この本から感じます。

 インターネットやSNSは、個性を発揮できる場でもあると思いますが、プライベートをどこまで守れるのかが大切でもあると、改めて考えさせられました。

 今の生活様式に合わせた、自分なりの豊かな生活を送りたいものです。

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