※サイト管理人が興味をもった部分を紹介します。
2016年、5年も前の本でデータも少し古いですが、さわりを勉強するには丁度良い本です。新しく地理学の本が出ているので、そちらを買って読んでも良いかもしれません。
はじめに
我々の食卓に並ぶ農作物は、野生の植物を栽培化していったものがほとんです。本来の原生種が育っていた場所と似た環境で、現在も多くが生産されています。それらの原生種はどう広がっていったのでしょうか。
本書は人文地理に関するテーマを、その根本から自然に理解していこうというものです。
目次
書籍情報
タイトル
人間の営みがわかる
地理学入門
「なぜ」がわかる地理学抗議
著者
水野一晴
京都大学院文学研究科地理学専修・教授、理学博士。
専門は自然地理学(植生地理学)ですが、近年は人文地理学や人類学的調査も行っています。おもな調査地域はケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠、アンデス、インド・ヒマラヤ地域であり、調査・研究で訪れた国は50か国です。
出版
ベレ出版
コーヒー豆の生産
コーヒーの生育地は熱帯地域で、雨季と乾季のあるサバナ気候(Aw)や熱帯雨林気候(弱いAm)に適します。
また気温がやや低い高原・丘陵を好み、火山性土壌がよいとされています。とくにブラジルのテラローシャの土壌は最適です。
アラビア種(世界の生産量70%を占める)のコーヒーの原産地はエチオピアで、古くから飲料・薬用に使われてきました。
アラビアは隣国のスーダンからイエメンへコーヒーを運び、イエメンのモカ港からコーヒー豆を輸出し、コーヒー貿易をほぼ独占していました。積み出し港の名前からモカコーヒーと呼ばれているものです。
またイエメンからインドネシアのジャワへ持ち込み、ジャワ、スマトラ、チモールで栽培が始まりました。南米のスリナムに移されたことが、新大陸への最初の導入となって、ブラジルへと広まっていきます。
アフリカの人々は伝統的に飲む習慣のあるエチオピアを覗けば、栽培したコーヒーを飲むことは少ないのです。栽培した豆はほとんど先進国に輸出され、現地のアフリカの人々は世界最大の食品会社N社のインスタントコーヒーを飲んでいます。
稲の生産
コメは長粒で粘り気のないインド型が熱帯、短粒で粘り気の強い日本型が温帯で栽培されるのです。モンスーンアジアで世界の9割が生産されています。自給的作物であり、人口の多い国で生産量が多いです。
稲の栽培発祥地は、インド東部~中国の雲南~ミャンマー~タイの北部地域であり、古くは紀元前4000年の栽培が知られています。
紀元前25~15世紀にインド中央部、紀元前15世紀にインドネシア・フィリピン、紀元前5~3世紀に中近東地域とヨーロッパにも伝播しました。日本へは紀元前1世紀の弥生時代に北九州に近畿へ、3世紀に関東に伝番しました。
現在のコメの生産国(2013年)は、上位から中国、インド、インドネシア、バングラデシュ、ベトナム、タイ、ミャンマー、フィリピン、ブラジル、日本です。
ヨーロッパでお寿司が広がり始め、アジア以外の地域でもコメが消費されることにつながるでしょう。
農業
オアシス農業
乾燥地帯の湧き水地や外来河川沿岸のオアシスでは、古くから自給用の小麦・トウモロコシ・ナツメヤシ・果実・綿花などを栽培しています。
イランではカナート、サハラではフォガラと世ぼれる地下水路が発達しているのです。乾燥地では蒸発量が多いため地下に水源が設けられました。
アジア的稲作農業
夏の高温とモンスーンによる多雨を利用して、沖積平野を中心を稲作が行われています。
東アジアでは農作機などのインフラが整っています。集約的で土地生産性が高いのです。
一方、東南アジアや南アジアでは、牛に隙を引かせて耕す牛耕など技術水準が低く、雨水だけに依存しているところも多いので、1人あたりの収量の労働生産性が低いことが多くあります。
粗放的定住農業
自給農業の一部に商品生産(カカオなど)が加わる脳氷を粗放定期定住農業といいます。アフリカでは典型的な手法です。
急斜面を利用して畑作を行っていることが多く、土壌浸食を避けるため、等高線に沿って耕作が行われます。階段状に耕地を設けるテラス耕作がよくみられます。
感想
サイト管理人
農業の部分だけ読むだけでも、かなり勉強になると思います。
それぞれの地理で生産方法が違う、農作物が違う、輸出入の在り方が違うのです。
コーヒーも、いまモカの豆は手に入らないと言われたときに、知識があれば想像ができます。知識だけでは終わらないような学問だと思いました。