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目次
書籍情報
収納され続ける収納
生活者のデザイン史
北田聖子
美術博士。日本学術振興会特別研究員DC2,PD
専門学校桑沢デザイン研究所専任教員着任。
デザイン学分野に所属し、デザイン史やデザインの発想の授業を担当している。
雷鳥社
- 第一章 2000年代
- 終わりなき暮らしの実権 ブロガーの収納
- ブログから出発
- ほどよく「生活感」は避けたい
- 収納の文脈である「暮らし」
- 資格取得の活発化と「暮らし」への関心
- 自分の問題を他者のための仕事に
- コラム 商品パッケージの悲哀
- 収納の逆説 ミニマリストの収納
- 「ミニマリスト」とは
- 「収納」を捨てることの意味
- 物を手放す系譜
- ミニマリストを可能にする会社
- 透明な箱のその後
- 日常と地続きの創造のありか クリエイターの収納
- 「クリエイター」への期待
- 職・住のスイッチ
- 収納にひそむ可能性
- 物の延命
- 創造である日常、日常にある創造
- 収納を語ることへのアンチテーゼ ズボラニストの収納
- 減らすのは物ではなく家事
- 理想は高いが、がんばらない
- 「見えない場所」は所詮みえない
- 「暮らし」の死角
- 語らなくていいかもしれない「収納」
- 終わりなき暮らしの実権 ブロガーの収納
- 第二章 戦後から90年代
- ファイリング・システムから問う過去の未来 研究者の収納
- 「物」の整理学
- ファイリング・キャビネットの収納
- 「代謝系」と「愛着系」
- これまでにない物の増殖
- 「家事整理」のゆくえ
- 子ども部屋という「夢」と手づくり ティーンの収納
- ティーン向けインテリア誌
- 「空間演出」のための収納
- あこがれを内包する子ども部屋
- 子ども部屋の個室化
- 「私の部屋」という夢
- コラム 魅惑のワイヤーネット
- 「収納ベタ」への救いの手 プロの収納
- 引っ越しのプロから収納のプロへ
- マニュアルになることと、ならないこと
- 収納のエンタメ化
- 「間」の仕事
- 収納に重ねられる成長
- コラム 廃棄物利用の収納グッズはどこへいった
- ファイリング・システムから問う過去の未来 研究者の収納
- 第三章 明治後期から戦中
- 「収納」を語ることのプロローグ 主婦の収納
- 「家庭」での女性と家事
- 方法である収納
- 収納を語るのは誰か
- 家事で多忙な女性たち
- 収納を語る場の形成
- 理想的な「生活」からみた収納の領分 建築家の収納
- 建築家・川喜田煉七郎の家具
- 標準化という課題
- 今和次郎の「品物調査」との比較
- 「とびはなれ」ない生活
- 合理性に貫かれる住まい
- コラム A4書類がカバンにおさまるわけ
- 繰り返されない日常での収納 国民の収納
- 主婦から「国民」へ
- 非常時の工夫
- 戦時体制下の「簡素」という価値
- 「最低生活」のための「家」とは
- 収納がつなぎとめるもの
- 「収納」を語ることのプロローグ 主婦の収納
- おわりに
書籍紹介
ただの収納術の本ではなく、収納という行為がどのように時代と共に変遷し、私たちの生活にどのように影響を与えてきたかを探求する一冊です。
収納の歴史を紐解く
この本は、収納の歴史を3つの章と10のパートに分けて解説しています。現代から過去へと遡る形式で、収納の意味やそれが生まれた文脈を、言葉を手がかりに深掘りしています。例えば、ブロガーの収納術から始まり、生活感をどのように表現するか、そして収納が「暮らし」という文脈でどのように位置付けられてきたかを考察しています。
現代の収納トレンド
北田氏は、現代の収納トレンドについても触れています。特に、ブログやSNS上での収納の共有がどのように私たちの収納観を形成し、変えてきたかについての洞察は興味深いです。収納は単なる整理整頓ではなく、自己表現やライフスタイルの表明でもあると指摘しています。
収納とデザインの関係
デザインという視点から見た収納の進化も本書の大きなテーマです。収納が単なる機能から美学へと移行する過程、そしてそれがどうして必要とされたのか、どのようにデザインがそれに影響を与えたのかを詳述しています。ここでは、収納が生活者のデザイン史の一部として位置付けられ、その進化が私たちの生活空間と心地よさにどのように寄与してきたかが論じられています。
デザイン史と収納の考察が深まる一冊
「収納され続ける収納 生活者のデザイン史」を読むことで、収納が単なる物をしまう行為から、文化、デザイン、心理までを包括する広大なテーマであることを理解できます。この本は、収納好きだけでなく、デザインや生活文化に興味がある人にとっても非常に価値ある一冊です。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
「収納」を捨てることの意味
一般的に、物を最小限に抑えれば、必然的に収納するスペースも必要なくなるという考え方があります。しかし、ミニマリストの佐々木さんは、収納という発想そのものを捨てる選択をしました。
単に物を収納スペースに押し込むだけでは、視界から消えるだけで本質的な解決にはなりません。そこで、収納という考え方自体を排除する方法を採用しています。
日用品のストックもやめるよう勧めています。コンビニやAmazonでの買い物にも注意を払うように提案しています。これらの便利な店舗を「倉庫」と例え、その倉庫管理を再考するよう促しています。
整理学
「整理学」という言葉は、1963年に出版された社会学者・加藤秀俊の著書『生理学 忙しさからの解放』(中央公論社)からきています。「家の中の整理」は反響があったため、実践編・応用編などの続編が出ています。
家事整理とは何かを論じながら、現代の状況では住まいの容量に対して物が多すぎるため、「モノの片付け方」として「整理学」が求められているのではないかと考察しています。
物が多すぎなければ、片付ける手間がなくなるので、家事も減るといった内容です。暮らしの設計では、物をどのように扱うかなどが中心となって話されています。
標準化という課題
日本では、和洋文化の混在による「二重生活」を廃し、「住宅改良」または「生活改善」を進めようという文脈で家具の合理化が求められていました。1930年代に入ると、世界恐慌の影響を受けた日本の産業は、欧米の同業他社の影響から「産業合理化」を唱えるようになりました。
合理化は、制作過程においても重要です。大量生産を前提に、製造や流通の過程で無駄をなくし、コストを下げ、製品を多くの人に行き渡らせることが命題でした。量産化のためには、部材、構造、仕上げ寸法、形状などを標準化することが必要です。
具体的に家具の設計では、収納される物の寸法や性質を考慮しています。衣服は身体のどこに身につけるのか、どの順序で取り出すのか、使用頻度や重さを考慮して、引き出しなどの位置を決めています。物を出し入れする時間や身体の動きのロスを最小限に抑えることで、身体と家具の関わりを重視していたことがわかります。