発売日 2023年10月26日
ページ数 144p
ISSN 0286-0651
もくじ
- FOCUS
- 月面で水をつくる新たなメカニズム
- ”時間境界”で光を衝突させる新技術
- 約100万年前、人類は絶滅寸前だった
- 火山に近い氷河ほど高い標高にある
- ブタの体内でヒトの臓器をつくる新技術
- タンポポの種が遠くまで飛ぶ秘密
- 2023年ノーベル賞
- 生理学・医学賞
- 「塩基修飾」を発見し、mRNAワクチンを実用化にみちびいた
- 執筆 深谷俊(編集部)
- 物理学賞
- “電子の写真”を撮影できる超短時間発酵技術を開発
- 執筆 竹ケ原諒貴(編集部)
- 化学賞
- ナノサイズの光る粒子「量子ドット」を発見し、実用化した
- 執筆 三澤龍志(編集部)
- 生理学・医学賞
- 特集 Newton Special
- 大気、光、磁力、放射線_すべては物理が教えてくれる超感動の物理
- 監修 橋本幸士
- 執筆 中野太郎
- 大気、光、磁力、放射線_すべては物理が教えてくれる超感動の物理
- 地球の終わり方
- 小惑星の衝突、巨大火山の噴火、海水の消滅_科学にもとづく地球滅亡の六つのシナリオ
- 監修 倉本圭
- 執筆 尾崎太一
- 小惑星の衝突、巨大火山の噴火、海水の消滅_科学にもとづく地球滅亡の六つのシナリオ
- 宇宙を楽しむ絶景
- グリニッジ天文台天体写真コンテスト2023
- 監修 田村元秀
- 執筆 小熊みどり
- グリニッジ天文台天体写真コンテスト2023
- 第2特集 Newton Special
- 大人も思わずうなる奥深き算数の世界
- 監修 谷口隆
- 執筆 山田久美
- 大人も思わずうなる奥深き算数の世界
- 進化する超高層ビル
- 高さ、耐震、環境性能_更新しつづける建築技術
- 監修 五十嵐太郎
- 執筆 梶原洵子
- 高さ、耐震、環境性能_更新しつづける建築技術
- 海洋資源の未来
- 海底から鉱物資源を採る時代が近づいている
- 監修 鈴木勝彦
- 執筆 竹村真紀子
- 海底から鉱物資源を採る時代が近づいている
- 奇妙なキノコ
- 光る、煙を吐きだす_不思議な姿と生態
- 監修 保坂健太郎
- 執筆 薬袋摩耶
- 光る、煙を吐きだす_不思議な姿と生態
- 愛読者アンケートのお願い
- 星ごよみ 11月の星ごよみ
- Newton Information
- 協力者略歴
- LETTERS
- 次号予告
- 2023年後期総目次
- 2023年記事総索引
- 編集後記
目次
Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
ブタの体内でヒトの臓器をつくる新技術
ジャンル:医学
出典 Generation of a humanized mesonephros in pigs from induced pluripotent stem cells via embryo complementation,
Cell Stem Cell,2023年9月7日
再生途中の段階の豚の胚に患者由来の細胞を移植し、ブタの成長とともに細胞が形成される方法が注目されました。
中国科学院のライ博士らは、ヒトのiPS細胞を用いて、ヒト細胞でできた「中腎」をブタの体内でつくることに成功したようです。
必要な遺伝子を破壊したブタの胚にヒトiPS細胞を移植し、約1ヶ月間成長させたところ、50%程度の中腎が形づくられました。
タンポポの種が遠くまで飛ぶ秘密
ジャンル:物理学
出典 On the attitude stability of flying dandelion seeds,
Physics of Fluids, 2023年8月16日
タンポポの綿毛を放射状にのびた80本の細い棒でひょうして、飛行のようすと関係をシミュレーションしました。
空気抵抗の大きさと飛行姿勢の安定性が両立する角度に綿毛の角が保たれると、種が遠くに飛べることがわかりました。
タンポポは、進化の過程で、遠くまで飛行するのに最適な綿毛の角度を獲得したと考えられます。
2023年ノーベル物理学賞
執筆者:竹ケ原諒貴
”電子の写真”を撮影できる
超短時間の発光技術を開発
2023年のノーベル物理学賞は、「アト秒」という超短時間だけ光を放つ技術を開発した3名の研究者に贈られる。アト秒という時間は、物質中で電子が運動する時間スケールに一致する。この光を”フラッシュ”として使えば、電子の運動の様子を観測することができる。
ピエール・アゴスティーニ
Pierre Agostini
アメリカ、オハイオ州立大学名誉教授。1968年生まれ。
フェレンツ・クラウス
Ferenc Krausz
ドイツ、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン校教授。1962年生まれ。
アンヌ・ルイエ
Anne L’Huillier
スウェーデン、ルンド大学教授。1958年生まれ。
「高次高調波」が一瞬の光をつくりだす
従来の技術では、光をアト秒だけ光らせることは不可能でした。
1987年ルイエ教授は強力な赤外線を貴ガスに照射し、「パルス光」とよばれるごく一瞬だけ光ものを発見しました。このパルス光の列は「高次高調波」とよばれる光でつくられます。この非常に短い時間だけ光っていることが予想され、「フラッシュ」として利用することができるのです。
それから、パルスの持続時間を突き止めたアゴスティーニ教授、単独のパルスとして取り出したのがクラウス教授です。クラウス教授はこの開発と同時期に、電子の動きが測定できる「アト秒科学」の基礎も築きました。
半導体の性質の研究など応用分野も多彩
アト秒パルスの研究は日進月歩で進んでいます。
今後、産業への応用も進んでいくでしょう。応用で期待されているのは、半導体などのエレクトロニクス分野です。
アト秒パルスによって物質中での電子のふるまいが理解できるようになれば、新たな半導体材料の開発などにつながるかもしれません。
アト秒パルスの光が、今後の物理学を長く照らしていくことに期待します。
海洋資源の未来
海底から鉱物資源を採る時代が近づいています。
日本、その近海には石油や天然ガス、鉱物などの貴重な資源が眠っています。海底資源にはどんな種類があり、開発はどこまで進んでいるのか。最新の研究からわかってきた知見や将来の展望について、専門家にききました。
監修:鈴木勝彦 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 海洋機能利用部門 海底資源センターセンター長
執筆者:竹村真紀子
数年後には、深海からレアアースが採れる
現在JAMSTECでは、内閣府主導のプログラムで、音の反射を利用した調査方法で、レアアース泥の開発に適した場所を探索しています。
レアアース泥は個体であり、石油や天然ガスといった液体や気体の資源のように地中の圧力で噴出されることは難しいのです。
2022年レアアース泥の採鉱装置を開発し、茨城県沖の海域、推進約2500メートルの海底から堆積物を揚泥することに成功しました。
採取された泥は採鉱装置の内部でかくはんされ、海水と混ざり合います。こうして液状となったのちにライザーパイプを通り、船上まで引き上げられ、一連の作業を海底の3ヵ所で行ったところ、1日換算でおよそ70トンもの泥を回収することに成功しています。
3年後の揚泥に向け、鈴木センター長ひきいるチームは、レアアース泥の製錬技術の開発を行っているところだといいます。深海からレアアース泥が採れる日が訪れるのも、そう遠くないかもしれません。
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