Newton 2023 4月号

Focus

 話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
 毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。

てんかんをiPS細胞で治療へ

作者: poosan

ジャンル:医学

出典 Human cortical interneurons optimized for grafting specifically integrate, abort seizuers, and display prolonged efficacy without over-inhibition

Neuron, 2023年1月9日

 世界で7000万人がてんかんを患っています。てんかんは、異常な神経の活動によって痙攣を生じる脳の疾患です。

 治療薬が聞きにくい難治性のてんかんをおさえる、新しい方法の開発が望まれています。

 アメリカ、ニューヨーク医科大学のチャン博士らは、新駅の異常な活動をおさえる作用をもつ特定の神経細胞を、ヒトのiPS細胞から作成することに成功していました。今回、てんかん症状を示すマウスに移植したところ、痙攣を生じる脳の部分に移植した神経細胞が定着したことを確認したのです。

 iPS細胞由来のGABA作動性大脳皮質介在ニューロンを移植することによって、難治性のてんかん患者の治療の可能性が明らかになったと博士らは述べています。

「海のデッドゾーン」の地図を作成

UnsplashSime Basioliが撮影した写真

ジャンル:地学

出典 Intermediate water circulation drives distribution of Pliocene Oxygen Minimum Zones

nature communications,2023年1月4日

 海洋には、部分的に海水中の溶存酸素量がとぼしい領域「貧酸素水塊」がつくられることがあります。別名「デッドゾーン」とも呼ばれ、生物の分布などに影響をあたえているのです。

 アメリカ、ノースカロライナ州立大学のデイビス博士らは、海底堆積物に含まれる、貧酸素水塊に特有の有孔虫プランクトンの全地球的な分布を解析しました。過去530万年~260万年前までの更新世界において、貧酸素水塊は現代と同程度分布していたのです。

 現在では北大西洋には貧酸素水塊が分布しておらず、特定の地域で拡張や縮小が起きていることを意味しています。

新型コロナウイルスの3年間

Focus Plus

ジャンル:医学
監修:片山和彦 北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学教授
執筆者:前田武

Image by fernando zhiminaicela from Pixabay

病原性が弱くなったとはいえない

 COVID-19の症状は、せき、発熱、頭痛など、風邪やインフルエンザとよく似ており、発症しない感染者も多いといわれています。

 初期のころは、重症化や死亡に至る割合が比較的高く、高齢者や基礎疾患のある感染者を中心に、重い肺炎などにつながる事例が少なくなかったのです。

 厚生労働省の調べによると、主にデルタ株によって生じた第5波では、80歳以上の感染者のうち10.21%が重症化し、7.92%が死亡したといいます。

 その後、重症化率や死亡率は低下し、2022年7月~8月では80歳以上の感染者で重症化したの1.86%、死亡したのは1.62%でした。インフルエンザで80歳以上の重症化率が2.17%、死亡率は1.73%とされており、それを下回っているのです。

 しかし、この数値は、人の免疫力や医療体制とのせめぎ合いの結果も示す数値あり、あとに出現した変異株の病原性が弱いことの証明にはなりません。

 死亡率が下がっているのは、人の免疫力や医療体制が整ったことの影響が大きいということです。ウイルス自体の脅威度が下がったという報告はほとんどないのです。

新型コロナとのつきあいは続く

 政府は、感染症法におけるCOVID-19の位置づけを、これまでの2類から移設性インフルエンザと同じ5類へ2023年5月に変更する方針を決定しました。

 ワクチンや治療薬の普及、感染対策といった人間側の防御態勢によって、これからも新型コロナの位置づけは変化するでしょう。

 免疫をのがれる新たな変異株は出現するので高齢者などは1年に2回程度のワクチン接種が望ましいとのことです。

 懸念されるのは耐性ウイルスです。抗ウイルス薬などの薬剤の管理がずさんな国で乱用されると、耐性ウイルスの出現を助長してしまうことになります。

 新型コロナウイルスとの付き合いは長くなりそうで、うまくやっていけるかどうかは、私たちのふるまいしだいなのです。

正しい入眠方法

Image by 영훈 박 from Pixabay

監修:櫻井武 筑波大学医学医療系/国際統合睡眠医学研究機構 教授
執筆者:島田祥輔

寝る前に音楽を聴く

 アメリカ、ベイラー大学の研究チームは、寝る前に音楽を聴くと特定のフレーズが脳内で繰り返されるイヤーワームが就眠中に起きてしまい、睡眠に悪影響がおよぶという仮説について検証しました。

 誰でも知っているポップミュージック3極をボーカルあり、なしをランダムに聞いたあとに就寝してもらうという実験です。

 ボーカルある、なしに関わらず、イヤーワーム現象がおきた人がおり、寝つきが悪くなったり、覚醒の回数が多くなったりするなど、睡眠の質が低下しました。

 イヤーワーム現象が起きた人の睡眠中の聴覚野を調べたところ、活発に活動しており、これが睡眠をさまたげたのではないかと推測できます。

寝る前にすべきこと
就寝時刻の1時間~1時間半前にお風呂に入る
 人は寝る前に一時的に手足の温度が上がります。手足の血管を広げて放熱をうながし、寝る準備をととのえるためです。寝る前にお風呂に入って手足を温めると、血管が広がって放熱しやすくなります。
部屋の温度と湿度を調節する
 自分にとって快適な温度・湿度を保ちましょう。快眠の観点から言えば、エアコンをつけっぱなしにして温度や湿度を保つ方が良いのです。

寝る前にさけるべきこと
スマートフォンを見る
 寝る前に強い光をあびると、体内時計をつかさどる「視交叉上核」という脳部位に信号が伝えられて体内時計が巻き戻り、入眠しにくくなります。
空腹状態でいる
 空腹状態では、「オレキシン」というホルモンを分泌する神経細胞の活動が高まります。オレキシンは覚醒状態を維持するために必要不可欠なホルモンです。オレキシンが分泌されると入眠しにくくなります。満腹状態でねると消化器に負担がかかるため、寝る4~5時間前くらいに夕食を食べるとよいでしょう。

密猟や人間との対立によって生息数が減少

Image by Ndeithi from Pixabay

監修:伊谷原一 京都大学 野生動物研究センター教授
執筆者:薬袋摩耶

 サバンナゾウはサハラ砂漠以南のアフリカに広く分布します。7000キログラムにもなる世界最大の陸上動物です。

 広い耳は15ヘルツ前後の低周波音まで聞くことができるため、遠くにいる群れとコミュニケーションがとれます。分厚い皮膚に刻まれたシワには水分を蓄える役割があるのです。牙は地面を掘ったり、木の幹をはいだりする機能があります。

 立派な牙は像牙として高値で取引されており、ワシントン条約締約後も密猟者が後を絶ちません。今でも毎年2万頭のアフリカゾウが密猟の犠牲になっているといわれています。

 2020年から2021年にかけて没縄では450頭のサバンナゾウが大量死しました。・死因は、水辺で増殖した藍藻から生産された毒素によるものでした。なぜゾウだけが被害にあったのか、謎を残したままです。

 1979年には推定100万頭いたアフリカのゾウは、今では41万5000頭前後まで減少しています。

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