Newton 2023年8月号

Focus

 話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
 毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。

大陸地殻に関する通説が否定

作者: ueyoko

ジャンル:地学

出典 Garnet crystallization does not drive oxidation at arcs

Science,2023年5月4日

 大陸地殻は「海洋プレート」が「大陸プレート」の下に沈み込む教会でのマグマ活動によって成長しているとされています。

 境界のマグマは鉄にとぼしいことが特徴です。海洋にあるマグマにくらべて、二価鉄より三価鉄の割合が高いことも知られています。

 沈みこみ境界にあるマグマからガーネット(ザクロ石)が結晶化する際に、マグマの性質が変わるためであると考えられてきました。

 アメリカ、スミソニンアン研究所のホーリークロス博士らは、マグマからガーネットを結晶化させる実験を行い、マグマ中の鉄の量がどのように変化するかを検証しました。ガーネットができることでマグマから鉄が20%取り除かれ、残りのマグマは鉄にとぼしくなることが確認されたのです。一方で二価鉄と三価鉄の割合はほとんど変化がありません。大陸地殻の岩石の性質が、ガーネットの結晶化だけでは説明できないことを意味しているのです。

昆虫はなぜ海にいないのか

UnsplashDmitry Bukhantsovが撮影した写真

ジャンル:生物学

出典 東京都立大学プレスリリース

2023年5月9日

 100万種をこえる昆虫が陸上のほぼあらゆるところに生息しています。しかし、海に住む昆虫は非常に少ないです。

 東京都立大学の朝野維起助教らは、昆虫の外骨格のでき方に着目しました。「マルチ銅オキシダーゼ2」という酵素を使った化学反応により、外骨格を昆虫は固くしているのです。この反応には酸素分子が必要です。

 海中では、空気中より酸素濃度30分の1程度しかなく、昆虫は外骨格を固くできません。これが昆虫の海洋進出をはばんでいるのではないか、というのが朝野助教らの仮設です。

 カルシウムにたよらずに軽くて丈夫な骨格をつくれるようになっているので、陸上で繁栄できた最大の理由でもあるといいます。

二酸化炭素からメタノールを生成

作者: KI-TSU

ジャンル:科学

出典 東京工業大学プレスリリース

2023年4月7日

 メタノールはプラスチックの原材料などに使われている物資です。けれど、二酸化炭素分子では炭素原子と酸素原子が強固な二重結合で結びついているため、室温などの温和な条件でメタノールに変える反応を進行されることはむずかしかったのです。

 東京工業大学の細野秀雄栄誉教授らの研究グループは、二酸化炭素をメタノールに変える反応を比較的低温で可能にする、新たな触媒の開発にせいこうしました。パラジウムとモリブデンという2つの金属原子からなり、各原子からなる層が交互に重なった構造をしてます。常圧下では60℃という比較的低温でメタノールの生成が確認されているのです。加圧すると、約9気圧下で25℃で50時間以上にわたって、断続的にメタノールの生成が確認されています。

 研究グループはさらに向上させたいとのことです。

Focus Plus 人工甘味料は減量に効果なし

 話題のニュースを紹介するコーナーです。

Image by Engin Akyurt from Pixabay

ジャンル:医学
監修:宮崎滋 結核予防会理事・総合検診推進センター長
執筆者:山本尚恵

体重減少の効果みられず

 非糖質系甘味料は、砂糖の数百倍の甘さをもち、砂糖の代替品としてりようされています。体内で分解されることなくそのまま体外に排出されるのです。

 植物から精製される「ステビア」のような天然甘味料と、科学的な合成によって製造される「アスパルテーム」「アセスルファムカリウム」「スクラロース」といった人工甘味料があります。

 WHOは非糖質系甘味料全般について、摂取した際の健康への影響を評価した研究283件を調査・分析しました。その結果をまとめ「体重管理や非感染症疾患のリスク低減の手段として、非糖質系甘味料を使用しないことを推奨する」とするガイドラインを2023年5月に発表しました。

腸内細菌が病気リスク上昇に関係している可能性

 病気のリスクが上昇するメカニズムは、はっきりとわかっていません。しかし、腸内細菌に何らかの影響を与え、正常な血糖コントロールができなくなる耐糖能異常や動脈硬化、血管の異常となってあらわれていると考えられているようです。

 本来、舌で「甘さ」のセンサーを刺激することで、消化器官などでは糖分を吸収する準備が行われます。この刺激による一連の反応が糖の取り込みに影響をあたえ、糖尿病などのリスクを上昇させているという説もあります。

 他にも良くない要因となっていると示す仮設がいくつか存在し、今後の研究によってメカニズムが明らかにされることが期待されているようです。

 WHOが言っているのは、砂糖の代替品をさがすのではなく、自然の果物や甘未のない飲料を食事に入れようということです。適切な栄養とエネルギーの摂取を心掛けて下さいということだと思います。

第二のデスバレー

Image by Monica Volpin from Pixabay

 アメリカ、カリフォルニア州にあるデスバレーは「死の谷」と呼ばれています。2020年の8月には54.4℃を記録しました。これは歴代3位の記録です。ギネス記録に登録されている世界最高の気温は1913年の56.7℃というデスバレーの記録となっています。

 デスバレーは砂漠です。植物がないので、蒸散(植物が水蒸気を放出すること)が行われません。空気が乾燥しており、気温の上昇と下降の幅が大きくなります。水蒸気から水になる時には熱を放出し、水から水蒸気になるときは熱を吸収する働きがあるので、湿度があると気温の変化が緩やかになるのです。

 また、デスバレーは標高が低く、谷底で空気が循環しないため、熱がこもった状態になります。

 地球上の乾燥地は20~25%くらいだと見積られています。降水量が減るところと増えるところが極端になっているので、2100年には砂漠の面積が今より7ポイント増えるだろうと予測されています。

 IPCCによれば、南アメリカのアマゾン川流域で干ばつが進むと記録されていて、もしかしたら第二のデスバレーが誕生するかもしれないと危惧されています。

購入リンク

Newton (ニュートン) 2023年 8月号 / Newton編集部 【雑誌】

※amazonの商品リンクです。画像をクリックしてください。

電子

※amazonの商品リンクです。画像をクリックしてください。

(Visited 1 times, 1 visits today)
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です