目次
書籍情報
タイトル
ヘンな科学 “イグノーベル賞” 研究40講
著者:五十嵐杏奈(いからし あんな)
1991年愛知県生まれ。日英両言語で物を書くサイエンスライター。時々サラリーマン、時々デジタルノマド。
カナダのトロント大学で進化生態学・心理学を専攻(学士)。休学中に半年間在籍した沖縄科学技術大学院大学で執筆活動をはじめる。トロント大学卒業後、イギリスのインペリアルカレッジロンドンに進学。科学の専門家と非専門家をつなぐことを目的とした学問「サイエンスコミュニケーション」の修士号を取得。同カレッジ在学中に、NHK Cosmomedia Europe やBBCでリサーチャーを務める。日本帰国後は京都大学の広報官を務め、2016年11月からフリーに。2019年9月、一般社団法人知識流動システム研究所フェロー就任。
現在は、科学誌やオンラインメディアを中心に記事を執筆している。モットーは、堅苦しくなりがちな科学の話にユーモアを添えること。
本書が初の著書となる。
ヘンな科学 “イグノーベル賞” 研究40講 巻末から抜粋
出版
総合法令出版
内容
ノーベル賞はすごいけど、難しいです。
一方で、気張らないで楽しめる科学の祭典が、イグノーベル賞です。イグノーベル賞は、「まずは人を笑わせ、その後考えされる」をモットーに、1991年に創設されました。毎年一万点近くの候補からキテレツ研究10点が選ばれます。
世界中の研究が対象のはずですが、日本人は毎年受賞の常連です。
実はれっきとした研究が多く、イグノーベル賞はそんな素晴らしい研究にスポットライトを当てることも目的としています。研究者にとってイグノーベル賞の受賞はチャンスなのです。
この著書では、Part1~5まで章がわかれており、節に各研究について書かれている。
1章ごとに、面白かった研究をかいつまんで以下に紹介していきます。
Part1.イグノーベル賞は、役に立つ?
「誰得w」と言ってしまいたくなる研究が代名詞のイグノーベル賞ですが、なかには本当に誰かが得をするための研究もあります。
この章では、日常生活の中で実際に役立ちそうな研究を中心に紹介しています。
ちょっとだけ自分と立場の違う人の生活について考えるきっかけにもなるでしょう。
試してみたいかどうかは、本を読んでご判断いただきたいと思います。
命を救うブラジャー 2つの胸に、2つの優しさ
2009年のイグノーベル賞授賞式で、ノーベル賞を受賞した格調高き研究者たちが、満面の笑みで蛍光ピングのブラジャーに顔を埋めるという、なんともシュールな光景が見られました。
付けていたブラジャーは、予期せぬガス爆発や諸々の事故が起きた時に、ガスマスクとして使えるブラジャーなんです。この発明に対して、公衆衛生賞が贈られました。
フロントホックとバックホックの両方がついていて、カップを片方ずつに分けることができます。カップの内部には、有害物質を通しにくくするフィルターや、呼吸の際に吐いた息を外に出すための弁もついており、15分以上普通に呼吸することができる。
ガスマスクとして装着するときは、カップを口と鼻に被せた後、側部の布を頭の後ろへ一周させ、フロントホックとバックホックをつなぐ。
2つのカップは、それぞれが1つのガスマスクとして機能するため、自分と他の誰かを救うことに繋がります。
発明したのはシカゴ在住のエレーナ・ボドナー博士。
ウクライナ出身のボドナー博士は、チェルノブイリの原発事故当時、若い医師として最前線で働いており、搬送されてくる被害者の多くが、放出された放射性粒子を吸ってしまったことで被爆しているというものだった。
この経験から誰もが使えるシンプルなガスマスクが、どうしてこの世に存在しないのかと疑問に思っていたといいます。
どんな作りであれば都合の良いマスクになるのか悩み悩んでいた時、まだ幼かった息子が床でブラジャーのカップを顔に当てて遊んでいるのを見た瞬間にひらめいたそうです。
2001年に9・11テロが起きた際に、顔に服を当てながら逃げ回るニューヨーク市民の姿をテレビで見て、商品化を目指すことに決めたといいます。
2007年に特許取得済みのこのブラジャーは「EBbra」という商品名で販売しており、現在手も通販で購入することができます。(約4,000円)
また、手持ちのブラジャーをガスマスク仕様にリメイクするサービスも展開しています。
サイト管理人
エロと笑いは相性がいいね。
そして、なかなか実用的ではないでしょうかw
自分を、まもるために。
大切な人を、まもるために。
自分の暮らす地域を、まもるために。
日本のみんなを、まもるために。
みんなで協力をして、乗り越えよう。
新型ガスマスク兼用ブラジャー「EBbra」
致死性の高いウイルスなどが蔓延したときに備えて、購入してもいいのではないでしょうか?なんてね。
↓購入リンク貼っておきますw
他にもこんな研究が紹介されています。
- ポテチは音がするとより美味しく感じる
- 食べる時の周りの音や容器の色・重さで味が変わるといった研究です
- 話が長い人を黙らせる機械
- 自分の声が遅れて聞こえると、話の続きができなくなるという研究です
- ジェットコースターで尿路結石が通る
- ビックサンダーマウンテンで石の通りやすさを検証したお話です
- 花粉症にはキスが効果的
- どのような状態だとアレルギー反応が落ち着くかといった研究です
- 胎児に音楽を聞かせるなら膣の中から
- 膣の中に入れる胎児用のスピーカーを開発したというお話です
- 胎児にはQUEENの「ボヘミアンラプソディー」を聞かせると反応が良い
- コーヒーをこぼさずに歩くには?
- いかにコーヒーの波を起こさずに運べるかといった研究です
- いびきを改善する楽器
- 無呼吸症候群ボランティア25人にマイナーが楽器を演奏させる研究です
- わさびを使った火災報知器
- ぐっすり寝ている人にワサビを噴射して、火災しらせるといった発明です
- 聴覚障害をもった人のために考えられた発明です
Part2.風変わりな大発見
夏休みの「自由研究」毎回後半になって焦っていた人も多いのでは、ないでしょうか。
研究のプロが自由研究したらどうなるのか、本気の研究成果が出てくるに決まっています。
ネズミはオペラを聞くと寿命が延びる 音楽療法は動物にも効果的
心臓の手術をうけたばかりの鼠にオペラ「椿姫」を聞かせ、寿命を延ばした功績に対して、2013年の医学賞が日本の研究者たちに贈られました。
研究を行ったのは、帝京大学・内山雅照助教、新見正則医院の新見正則院長、そして当時大学院生だった金相元さんをはじめとするチームです。
何も処置をしなければ、拒絶反応が起こり8日前後で移植後の心臓が止まるはずだったが、止まらなかった。何か環境の影響があるのではないか直観したのです。
新見院長が好きな「椿姫」で試したところ、「椿姫」を聞いたネズミは平均26日生き延びました。
研究結果から言えるのは、音楽が脳を介して免疫系に良い影響を与えている、ということです。環境が健康に与える影響は大きいのです。
他にもこんな研究が紹介されています。
- 5歳児は1日に500ミリリットルのヨダレを流す
- 食べ物を口に入れてもらい、飲み込む前にコップに吐き出すという実験のお話です
- 昇進させる従業員はランダムで選ぶと良い
- 優秀な人が管理職につくと力を発揮できない、無能な人が管理職に向いている場合もあるというお話です
- ハンマー投げと円盤投げ、目が回るのはどっち?
- 各種目をスローモーションで分析し、目が回る原因を解明したお話です
- ワインのプロの驚くべき能力
- 極少量の人口のハエフェロモンをワインに混ぜただけで、プロは不快感を感じることができるというお話です
- ヤシの木の下で寝てはいけない
- ココナッツの実で怪我する人が多いことに気が付いたお話です
- 空と満タンのビール瓶、凶器としてより危険なのは?
- ビール瓶自体が凶器として使われれば、殺傷能力が高いというお話です
- テキーラからダイヤモンドが作れる
- 蒸発させることで、工業用につかう薄いダイヤの膜を作成することに成功した研究です
Part3.生き物の不思議な生態
もし生まれ変わるなら…
- 男子を尻に敷きたい性分の女の子なら、ブラジルの洞窟に住む小さい虫が良いでしょう
- 放屁癖があるなら、ニシンがいいでしょう
- ロマンチストな人なら、フンコロガシがいいかもしれません
バッタは「スターウォーズ」を見ると興奮する お気に入りはダースベイダー
2005年の平和賞は、バッタにスターウォーズを鑑賞させて、脳細胞の活動を測った研究に贈られました。
研究を行ったのはクレア・リンド博士です。リンド博士が注目したのは、バッタの目と脳です。物体がある生物に向かって急接近すると、その生物の網膜に急に拡大する刺激が加わります。刺激に反応する脳細胞はいろいろな生物がもち、天敵や障害物を避ける時に役立っています。なかでも詳しく研究されているのがバッタの脳細胞です。
バッタの脳細胞の仕組みを車の衝突回避システムの開発に役立てたり、監視システムに使われる技術に応用ができるといいます。
自動車メーカーの支援を受けて研究を行った内容が、バッタ100匹を観客にリンド博士が好きなスターウォーズをみせるというものでした。鍼(ハリ)のようなセンサーを使いバッタの脳の信号を測り、分析を進めたところ、どうやらダースベーダーが接近してくるシーンで活発になっていました。
コマごとに分析していたので、スターウォーズの映画にはめっきり飽きてしまったと言います。ある日ディズニーランドで乗り物に乗るとバッタたちに見せたシーンがでてきたそうです。その時の気持ちをイギリスの地方メディアにこう語っています。「身構えたり、まばたきしたりすることもできなかったバッタたちが、どんな思いで映画をみていたか、なんとなく分かった気がします。」
「バッタには申し訳ないが、バッタの神経系を模した人口衝突センサーシステムを開発することができました。」と授与式で語っています。
他にもこんな研究が紹介されています。
- ニシンはオナラで会話する
- ニシンを水につけて握ってみると音がしたしたというお話です
- オスとメスの性器が逆転した虫
- ブラジルの洞窟の中に、トゲトゲした陰茎が生えているメスがいるというお話です
- 名前を付けられた牛は牛乳をたくさん出す
- 人間が牛にやさしくすると、その愛情に答えてくれるというもの
- キツツキが頭痛にならない理由
- 一日に1万2千回つつくキツツキは顔の周りが衝撃吸収クッションのようになっているというお話です
- 迷子のフンコロガシは天の川を見る
- フンコロガシは星をコンパス代わりにしてナビしているというお話です
- 哺乳類がおしっこにかける時間はだいたい同じ
- 性別、人種、動物の種類問わず、21秒以内におしっこが済むというお話です
- ニワトリのしっぽに重りをつけると、恐竜みたいに歩く
- ニワトリに本来ないシッポを取り付けることで恐竜の歩き方を再現できるようになったというお話です
Part4.研究者はやってみた
働き方改革。生産性向上。残業時間の上限規制。気持ちだけ一生懸命は、歓迎されない時代です。
それでも、自らハチに刺される、ネズミを丸呑みする、ヤギと一緒に生活するなどのことを研究者たちはやってみた。
セルフで行う大腸内視鏡検査 自分のお尻の穴へ……エイヤッ!
日本は先進国の割に、大腸がんが原因で亡くなる人やけに多いです。大腸がんは、早期発見されれば治りやすいと言われています。
検査には内視鏡を使いながら大腸内で悪性ポリープを探し、取り除くというもの。ポリープを切ってしまえば9割がたは発症を抑えられるのだが、日本では大腸がんで亡くなる人が増加傾向にある。
食事の欧米化、運動量の少なさ、内視鏡検査での消極性も死亡率を上げる要因になっています。
そんな状況を改善しようと考えたのが、長野県の病院に勤務する堀内朗医師です。内視鏡検査の痛みや苦しさを和らげる方法を模索していた。そして思いついて方法が、座ったままセルフで行う方法です。この経験を報告書にまとめ、2018年の医学教育賞を受賞しました。
そしてイグノーベル賞受賞後、堀内医師の病院で内視鏡検査を受けたいという問い合わせが増えた。今では、予約なしでも日帰りで内視鏡検査を受けられる方法を確立し、麻酔から醒めるまで1時間で回復できるという。ポリープの手術も進化しており、出血が少なくリスクがすくない方法を取り入れているとこのこと。
広まってはきていますが、まだ日本では堀内先生のやり方を取り入れているところは少ないようです。
サイト管理人
下手な健康書籍より、重要なことが書かれてる!!!
40歳過ぎたら、内視鏡検査をすることをお勧めします。
他にもこんな研究が紹介されています。
- 研究のためならハチにも刺される
- あらゆる虫刺されによる、刺された箇所ごとの痛み度合いを指標化したお話です
- カエルの匂い、131種分をひたすら嗅ぎ分けた
- カエルは強いストレスを感じると自己防衛のために匂いをだすというお話です
- 死んだトガリネズミを丸呑みしてみた
- トガリネズミを剥いでゆがいて丸吞みし、3日にわたってうんこを観察したお話です
- ヤギになりたかったデザイナー
- 人間の生活に疲れはてて、ヤギと暮らそうとした物語です
- マグネットでカエルを浮かばせてみた
- 磁力に反発する反磁性を活かして、ほぼ水でできているカエルを浮かべてみた実験です
- クジラの鼻水を採取する方法
- クジラの健康状態を探るため、ラジコンを使って粘液を採取したというお話です
- 34年間欠かさずに食事の写真を撮り続けた
- 写真を撮り続けた結果、和食が注目されることになったというお話です
Part5.極めてピュアな好奇心
純粋な子どもに聞かれたら答えに困ってしまいそうなことを、真面目に調べた研究集です。
なぜバナナの皮を踏むと滑るのか?
マリオカートぐらいでしかバナナの皮で滑ったことは無いのではありませんか?
誰もが疑う事のないバナナの威力。この摩擦係数を算出した北里大学の馬渕清資名誉教授らに、2014年の物理学賞が贈られました。
靴と床の摩擦係数が0.42だったのに対し、バナナの皮を踏んだときは0.066と5~6倍滑りやすくなりました。バナナが滑りやすくなるのは踏んづけた時だけです。斜面の地面にバナナを置いても滑っていきません。
顕微鏡で確認したところ、バナナの皮の内側には粘液が詰まった粒粒が見つかりました。この粒粒が踏まれることで弾けて、中から粘液が飛び出しヌルヌルすることで滑りやすくなるということを突き止めました。
他にもこんな研究が紹介されています。
- ネコは液体か
- 物理学的観点からみてネコは個体であるし、液体とも言い切れる
- タマネギを切ると目に沁みる理由が意外と複雑だった
- 1つの酵素がタマネギの防衛機能により一瞬だけプロペニルスルフェン酸に変化し、酵素がプロペニルスルフェン酸を催涙成分へと変化させることが分かった
- 妊婦さんはどうして前に倒れないのか
- 妊娠時にきつく湾曲する脊椎おかげで、バランスがとれる
- 股のぞきの効果を実証
- 京都の天橋立で有名な股のぞきの効果を証明する実験です
- ゆで卵をちょっとだけ生に戻す方法とは?
- 尿素で溶かし、高速回転させることで卵白の状態に戻すことができる実験です(食べられない)
- 細胞の研究に応用が期待されている
- 黒板を引っ掻く音がイヤな理由
- 引っ搔く音を高周波・中周波・低周波の音をそれぞれ取り除いたバージョンをボランティアに聞かせた話です
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