フォーリン・アフェアーズ・リポート 2022 No.4

※ニートが興味をもった記事を引用します。

経済制裁と反ドル枢軸の形成
ー反ドル体制と中ロの連帯

監修

ゾンユアン・ゾー・リュー
米外交問題評議会国際政治経済担当フェロー

ミハエラ・パパ
タフツ大学フレッチャースクール
アシスタント・プロフェッサー(非常勤)

 中国とロシアは、アメリカの経済制裁の縛りから逃れようと、国際通貨としての米ドルの地位を脅かす代替的な金融政策や構造の構築を試みています。

ドル迂回戦略

 国際金融システムにおける米ドルの優位は、アメリカの活気ある市場と特出した軍事力に支えられています。ユーロや人民元といった他の通貨は、ドルの支配的地位を脅かす存在には至っていません。

 世界の株式市場、原料市場、開発金融、銀行預金、グローバル企業の貸入はもっぱらドル建てなのです。

 ロシアは「ドルの呪縛から脱すること」を最も主張している国かもしれません。また、中国の外貨準備の多様化、人民元建て取引の推奨、国際通貨基金(IMF)の変革を通じた国際通貨システムの改変と、目的が重なり合う部分が多いのです。

 バイデン政権の制裁がウクライナにおける戦争で、国際金融システムにどのような変化をもたらすかを考慮する必要があります。

ロシアの制裁迂回戦術

 2014年のクリミア編入後、当時のオバマ政権は対ロ政策の範囲を拡大しました。エネルギー企業、防衛企業、プーチン指示の富裕層だけでなく、ロシアにある複数の大手銀行も経済制裁の対象に含めたのです。

 ロシアは、アメリカの制裁を迂回し国際銀行間金融通信協会(SWIFT)から締め出されても、金融の自律性を維持できるようにしてきた。
 VISAやマスターカードなどの決済プラットフォームに変わって、ロシアの決済システム独立させた国家決済システムをつくりました。
 そして、金融メッセージ転送システムと呼ばれる独自の金融通信を確立させて、ロシア版SWIFTを運用しているのです。SPFSと呼ばれています。

 SPFSのユーザー数は2022年3月には399を超えて、ヨーロッパの金融大国ドイツとスイスにあるロシアの大手銀行の子会社もSPFSを利用しています。中国へもSPFSの参入を打診しているようです。限定的でありながらも、世界市場へのアクセスを維持しようとしています。

 2018年以降、ロシア中央銀行は、米国債を売却し、金・ユーロ・人民元を購入することで、国内のドル比率を大きく下げています。2021年にバイデン政権が新たな対ロ政策を課すと、モスクワは1860億ドル規模も政府系ファンド「国家福祉基金」のドル建て資産をすべて他の通貨建てに置き換えると表明しているのです。

 既にロシアのエネルギー企業でのドル代替は始まっており、ロシア中央銀行のデータによると2020年末までにロシアの対中輸出の83%がユーロで決済されているとのことです。
 ロシアの銀行は国際的流動性にアクセスする代替手段を確保し、制裁に対する脆弱性を軽減できるかもしれません。

中ロ連帯

 2019年、中国はロシアとの関係を「新時代に向けた橋梁の包括的な戦略的パートナーシップ」に格上げしました。ロシア中央銀行は440億ドル相当の人民元を購入しています。
ロシアの人民元保有額は世界平均の約10倍で、世界の人民元による外貨準備の4分の1近くを占めているのです。

 2021年、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外装は中国に対し、米ドルや欧米の決済システムの依存を引き下げ、ロシアに協力するように求めました。人民元のインフラを拡大させることで、中国金融の自立性が強化されていくことを期待しています。

 さらに、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどでSPFSの関心をよせて、脱ドル化への更なる支持を集めようとしているようです。BRICSや上海協力機構(SCO)といった機構の枠組みを脱ドル化計画に利用しています。

ドルの覇権を支えるには

 ロシアに圧力をかけてウクライナから撤退させる上で、どのようなやり方が最善なのでしょうか。

 ロシアに対する追加制裁は、短期的にウクライナを助けるかもしれません。ですが、幅広い脱ドル化の動きを刺激して、アメリカのグローバルなリーダーシップを大きく低下させてしまう恐れがあります。

 ワシントンは、ロシア金融パワーの基盤、つまり、石油・天然ガス輸出からの収益基盤を切り崩すべきです。ロシアの原子力輸出市場で優位を保っているために、欧州連合(EU)の依存度を引き下げることができていません。

 ヨーロッパとアジア太平洋地域に代替エネルギーを供給し、ロシアの原子力に対抗していかなければならないのです。原子力市場で活躍する米企業への支援を拡大すべきでしょう。

 また、日本のような同盟国と協力して、国際開発金融におけるドルの役割を強化していく必要があるのです。

 ロシアと中国による脱ドル化に向けた連携を抑え込む方法を見出さなければ、アメリカは世界の指導者として責任を事実上放棄することになるでしょう。

まとめ
国際金融システムにおける米ドルの優位は揺らいでいない。
2014年のクリミア編入以降、厳しい対ロ金融政策が行われている。
VISAやマスターカードに変わる、独自の決済システムをロシア内でもっている。
ロシアの金融通信網(SPFS)の影響力を、徐々に国外に浸透させている。
2018年以降、ロシア中央銀行は、米ドル債券を売却し、人民元を買っている。
ロシアは原子力エネルギー市場で優位に立っていて、EUはそのエネルギーに依存している。
ドルの役割を維持していくためには、同盟国の協力とエネルギー支援が必要になる。

米同盟ネットワークの本質
ー独仏日韓と同盟関係の未来

監修

ロバート・E・ケリー
釜山国立大学教授(政治学)

ポール・ポースト
シカゴ大学准教授(政治学)

 米同盟国には防衛費削減の道を開くだけでなく、貿易利益を拡大することで恩恵をもたらしてきました。外交に空騒ぎがあったとしても、同盟関係は堅牢であり、同盟国を安心させるかについて思い悩む必要はないでしょう。

同盟における上下関係

 NATO、日本や韓国のような二国間同盟、なんであれ驚くほど不平等です。軍事的に弱い同盟国の利益を無視することもあります。無視された同盟国ができることはほとんどないのです。

 それでも同盟に参加するのは、米市場の参入の望めるという利点があります。経済と軍事の両方が強く、安定した輸出先として機能ができるのです。

トランプ流ポピュリズムで同盟は揺るがなかった

 ドイツはヨーロッパにおいてアメリカの重要なパートナーです。メルケルに対しての不平をtwitterで「ドイツはNATOに手数料を払うべき」とつぶやき、メルケルも「もはや同盟国に多様ることはできない」と発言しました。しかし、ドイツが反米に転じることもなければ、ロシアとの提携合意をまとめることもしていません。

 フランスのパリを訪問し、マクロン大統領を抑え込んだときのことです。やはりtwitterで「厄介で失礼な人物」と痛烈に批判するも、トランプをなだめ取り入ることを選択しています。クリミア編入の際もNATOの対抗路線を維持しているのです。

 日本の安倍首相は、トランプの機嫌をとることが多くありました。ゴルフに食事会といったイベントを数多く開催されています。それでも、日本車に対する関税に対して脅すようなつぶやきがありました。しかし、東京の防衛費が拡大されることは無く、TPPもアメリカが優位になる経済貿易システムではありませんでした。

 韓国については、トランプは毛嫌いしていた。日本と和解したこともあり、韓国は米国との歩み寄りを検討していたことも事実です。しかし、反日の強化のかけにでて、アメリカとの小さな危機を起こしています。
 在韓米軍と韓国軍はかなり一体化しており、トランプが大統領を退いてから合同訓練の頻度は増えているのです。実際に同盟から離脱することはありまんでした。

まとめ
米同盟国には貿易利益を拡大することで恩恵がある。
NATO、日本や韓国のような二国間同盟、なんであれ不平等。
軍事的に弱い同盟国の利益を無視することもある。
トランプが侮辱しても、各国が同盟を離脱することはなかった。

兵器としての移民
ーその長い歴史と憂慮すべき未来

監修

ケリー・M・グリーンヒル
タフツ大学准教授(政治学)

  2021年秋、ヨーロッパの指導者たちは「兵器化された移民という安全保障上の新しい脅威に直面している」と表明しました。

古くて新しい戦術

 ベラルーシの権威主義的指導者、アレクサンドル・ルカシェンコは、わずか数カ月で移民や庇護申請希望者を「EUに入国できる」と約束して集めてみせました。集まったほとんどが、イラクやシリアのクルド人、アフガニスタンからやってき人々だったのです。長い間、広大な野営地に放置されました。

 ラトビア、リトアニア、ポーランドの国境警備隊は、催涙ガス、放水銃、ゴム弾などを使って、国境を越えて入国を試みる人々をベラルーシ川に押し戻します。この映像は世界的にテレビで放映されました。

 ルカシェンコはEUの玄関口で人道危機を演出し、ヨーロッパ政府を悩ませました。狙いは、EUを困惑させて、分断させることにあったようです。

 政治学者たちは、戦争のコストが大きくなりすぎると移民や庇護希望者を「弾丸」に変えようと試みるかもしれません。特にターゲットにされるのは、EUです。

経済制裁よりも効果的

 「兵器としての移民」はさまざまな目的に利用できます。地政学その他の外交目標の実現に向けて用いられることが多いのです。

 1951年の難民条約が成立して以降、この戦術を行使した回数は少なくとも81回あります。このやり方をするのは独裁政権であるケースが多く、ターゲットは先進国です。

 大規模な移民流入を防ぐ見返りに食料支援や経済援助を引き出す手段として使われることが多くあります。しかし、核兵器開発の反対を辞めさせる軍事的活用であったり、ムハンマドを大統領職へ回帰させる政治的目的に用いられることもあります。

 この強制外交の成功率は40%ほどあり、有利な結果を引き出せる見込みがある場合は、かなり魅力的なものになるでしょう。

 移民の流れが効果的になるかどうかは、ターゲットとなる国の態度や政治によってきまります。

いかに対応するか

 移民を流入させようとする国の要求に、譲歩する欠点はいくつも存在します。国の評判の悪化、政治的コスト、要求してきた国が何度も同じことを繰り返す、といったことです。

 最近では、EUがリビアやトルコに譲歩したため、より大掛かりな移民の流動をとるようになりました。ヨーロッパが多くの避難民を滞在させることを求めて、長期的に出費し続けている事実です。

 対応策の1つは、人道的な約束を放棄し、国境を閉鎖することです。自国以外の外国にアウトソースする形になります。
 問題なのは、アウトソースを受け入れた倉庫のような国が、多額の資金供与を求めることにあるのです。アウトソースした場合にも、道徳的コストを支払うことになる恐れがあります。

 もう1つの作は、軍事介入することです。戦争にコストがかかり、その結果が不確実という問題があります。過去30年間に、完全に計画どうりに進んだことはありません。

 2011年のNATO主導のリビア介入は、より広い地域を不安定化させ、ヨーロッパ周辺部にさらに多くの何実が殺到しました。こうして、「兵器化された移民」に対するEUの脆弱性はさらに大きくなったのです。

 大規模な脅威として描かれたベラルーシの移民問題も、せいぜい数千人規模なのです。EUの庇護申請者総数からみれば、かすり傷にしかなりません。
 移民の受け入れを成功させるには政治的マネジメントが必要で、否定的な認識を変える努力が必要になります。

 今のところ、ターゲットにされている国が大胆に方針を転換する見込みはありません。保護する法的責任をさらに制限するような政策がとられています。

まとめ
移民や庇護希望者を「弾丸」に変えて、相手国に要求を飲ませる戦略がある。
「兵器としての移民」戦略は、政治、軍事、経済、兵糧と、さまざまなもに使われる。
「兵器としての移民」戦略は、成功率40%と魅力的である。
戦略のターゲットは、先進国である。
人道的な約束を放棄しても、軍事介入してもお金がかかり、計画通りになったことがない。
動かせる移民の数は、せいぜい数千人規模である。
移民の受け入れ政策には、政治的なマネジメントが必要である。
今のところ、保護する法的責任をさらに制限するような政策がとられている。

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