国際紛争を読み解く五つの視座/著者:篠田英朗

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書籍情報

タイトル

国際紛争を読み解く五つの視座 現代世界の「戦争の構造」

発刊 2015年12月11日

ISBN 978-4-06-258617-7

総ページ数 304p

著者

篠田英朗

ロンドン大学でPh.D.取得。東京外国語大学国語大学総合国際学研究院教授。専攻は、国際関係論、平和構築。

出版

KODANSHA

シリーズ 講談社選書メチエ

もくじ

  • はじめに 紛争分析は問題解決の第一歩
  • 第一章 現代の国際秩序 主権国家と自由主義
    • われわれは、いま、どんな時代にいるのか
    • 不安定でも維持されるべき秩序
    • 自由主義の覇権をめぐって
  • 第二章 勢力均衡 東アジアの紛争と中国
    • もっとも広く知られた理論
    • 超大国としての中国
    • 二十一世紀の日本の位置
  • 第三章 地政学 ヨーロッパの紛争とグレート・ゲームのゆくえ
    • マッキンダーの洞察
    • 東欧を支配する者は……
    • NATOの東方拡大
  • 第四章 文明の衝突 中東の紛争と対テロ戦争の帰趨
    • ハンチントンの警告
    • 西欧対イスラム
    • 文明の衝突と文明の代表をめぐる争い
  • 第五章 世界システム アフリカの紛争と格差社会としての現代世界
    • 武力紛争の大陸
    • ウォーラーステインの指摘
    • 国際秩序の陥穽
  • 第六章 成長の限界 アメリカの「明白な運命」と進歩主義の未来
    • 「自由の帝国」は限界をもつか
    • アメリカの「明白な運命」
    • 「成長の限界」の衝撃
  • むすびに 現代世界の紛争と日本

はじめに

 私はNGOの「難民を助ける会」で国内の難民支援ボランティアをしながら、海外業務にも携わらせてもらいました。イランでのクルド難民支援、ジブチでのソマリア難民支援、カンボジアでの帰還難民支援の現場にいたのです。

 私は時代の動向を大きく見据えようとするいくつかの理論的視座に強い関心を抱きました。大きな視野で世界の動きをとらえていくための議論は、私にとっては国際関係の分野で研究者となっていくために必要な座標軸のようなものに思えました。

中国の経済規模

 中国は目覚ましい経済発展によって、2009年に日本を抜き、世界第二の経済大国としての地位に躍り出ました。

 IMFによる統計で、2014年の中国のGDP推計は、十兆3800億ドルです。日本のGDPの2.25倍の大きさとなってまんにんいます。

 中国は13億6000万人という世界最大の人口をもつ大国です。世界人口の19%近くが中国人によって占められています。日本の人口は、中国の10分の1にも満たしていません。

 長い間中国は人口を抱えながら、貧しい国であるとみなされてきました。しかし、いまや中国の1人あたりのGDPは6958ドルで、世界83位の水準にあり、少なくとも中堅層に入っています。

 13億の人口を擁しながら、この順位を保っているのは、驚異的ですらあるのです。

ロシアにとっての生命線

 21世紀に入り、プーチンが大統領に再任して、ロシアは自国の影響力の維持を目的にした対外的行動を積極的にとっています。

 冷戦期に、ワルシャワ条約に対抗する軍事同盟でしかなかったNATOが、拡大に次ぐ拡大を遂げ、いまや旧ソ連構成諸国を除くすべての旧ワルシャワ条約機構構成諸国を加盟国として呑みこんでしまいました。

 21世紀のNATOは、ヨーロッパに拡がる普遍性を高めた地域機構であり、人類が歴史上経験したことのない巨大な軍事同盟ネットワークです。

 ロシアは、NATOの拡大に一貫して反対を唱えてきました、NATOの東方拡大を手をこまねいて見守るしかありませんでした。

 だからこそ、ウクライナやジョージアといった旧ソ連構成共和国軍にたいしては、NATO加盟に踏み込まないように強い期待と圧力をかけるのです。「半円弧」地帯は同盟関係を拡張し続けて、クリミア併合というロシアの判定攻勢を招き出しました。

無限の進歩は可能か

 経済活動の進歩は明快です。GDPの指標によって示される経済成長によって、経済活動の進歩は測定できるとみなすのが支配的でしょう。

 その経済的進歩を意識して、地位を獲得したのはアメリカです。新興独立国として、移民の国として、特別な使命をもった覇権国として、アメリカはつねに進歩を求めてきました。

 超大国アメリカは、成長し、歴史を切り拓く「超人」のように行動し続けていけるでしょうか。世界史的な視点から現代の国際秩序の持続可能性を考えるということと直結しています。

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