スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法/監修:向井千秋

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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法

発刊 2021年6月1日

ISBN 978-4-06-523566-9

総ページ数 256p

監修

向井千秋

JAXA特別参与。東京理科大学副学長。
1985年、宇宙飛行士に選定される。スペースシャトル「コロンビア号」にアジア人初の女性宇宙飛行士として搭乗し、ライフサイエンスや宇宙医学などに関する実験を実施。

JAXA Humans in Spaceより

著者

向井千秋

東京理科大学スペース・コロニー研究センター

出版

講談社 BLUE BACKS

もくじ

  • まえがき
  • 第1章 人が宇宙で暮らす時代が始まっている!
    • 宇宙に飛び出した人類
    • ヒトが宇宙に行ってわかったこと
    • これから始まる、新たな宇宙への挑戦
    • スペース・コロニーを造るには
    • 宇宙開発時代が始まった! 近未来の宇宙探査計画
  • 第2章 長期宇宙滞在で遭遇する困難な課題
    • 重力場に関する課題
    • 無重力化で血液はどう巡るのか
    • 宇宙での生活の質は ―孤立と幽閉、不適合と閉鎖環境
    • 宇宙放射線
    • 地球からの距離
  • 第3章 宇宙で暮らすためには
    • 居住環境をどう造るのか
    • 宇宙で働くロボット
    • ウェアラブル・デバイス
    • バイオ燃料電池の仕組み
    • 有人宇宙飛行中のトレーニング向け・自己駆動型ウェアラブル・デバイス
  • 第4章 宇宙農業への挑戦 ―スペースアグリ技術
    • 宇宙で食料を得るには
    • 宇宙農場を目指した各国の開発動向
      • ロシア
      • 米国
      • 欧州
      • 中国
      • 日本
    • 宇宙レタスが食べられる日
    • 「水中プラズマ」技術で防藻・防カビへ
    • 月面農場はこうなる⁉
  • 第5章 スペース・コロニーの電力源 ―創・蓄エネルギー技術
    • 宇宙用太陽電池
    • 安い、強い、曲がる、高効率
    • IoTデバイス向け透明太陽電池の開発
    • 熱電変換素子による発電
    • フライホイールによる蓄電
  • 第6章 水・空気再生技術
    • 環境制御・生命維持システム(ECLSS)
    • ISSの空気系サブシステム
    • 宇宙のECLSS
    • 光触媒
  • おわりに ―人類の未来に向けて
  • 執筆者一覧
  • 参考文献

はじめに

 多くの宇宙飛行士たちが地球を目の当たりにして語る、「宇宙から見たら国境はない」という言葉に象徴されるように、我々の生息する地球環境は「one earth」としてとらえざるを得ないほどグローバル化が進んできています。

 限りある資源を共有し、繁栄を持続可能にするためには、生命圏の拡大と人類の融和が必要です。究極の閉鎖空間である宇宙都市をモデルとして、より良い未来都市や社会構造を構築することは、地球上で尊厳ある持続可能な社会を構築していくうえでも意義のあることと思います。

 人類がどのようにして宇宙に進出できるようになったのか、宇宙飛行を通して見つかった課題とは何か、宇宙技術を社会生活に生かしていくにはどうすればよいか、できるだけわかりやすい記述による説明をこころみています。

スペース・コロニーを造るには

 物理・科学・工学分野から、環境浄化のために使われる技術である「光触媒」、さらに限られた資源を有効に利用するための「創・蓄・省エネルギー」、その他にも「IoT」といった要素技術を集積・高度化し、宇宙というフロンティアを拡大する際に不可欠な、閉鎖環境で長期間滞在できる技術の高度化を目指しています。

 これらの技術は、災害によって食料やエネルギーといったライフラインが断たれた被災地などにおいてもりようできるものです。民間企業と連携することにより、研究の成果がすぐに民間に移転すること可能としています。

 日本の宇宙産業の世界シェアは約1%(3000億円程度)といわれていますが、この産業の活性化にも貢献していくべく計画が進められています。

 宇宙空間でもっとも重要な基盤技術は、メンテナンスフリーで長期間使用できる電力供給システムをつくることです。太陽電池や熱発電システムなどを開発しています。

 人間が生きるために欠かせないのは、水と空気です。閉鎖環境内で使用される水や空気の浄化、循環完結を目指して、人体や機械装置が排出する廃棄物を、光触媒などの機能性材料を用いて再生するシステムも開発中です。

住居環境をどう造るか

 月面で活動するためには、限られた人的資源で、自律的か遠隔操作によって建築物を造る技術が必要です。

 また、地球とは全く異なる天体の表面では、その天体固有の環境が存在します。その環境に合わせた建築物を建てなければなりません。

 月面はレゴリスと呼ばれる非常に微細なパウダー状の砂に覆われています。そのため、工作機械の摺動部への影響や作業員の健康への影響なども含め、さまざな対策をします。そのため、レゴリスを模した「レゴリスシミュラント(月面模擬土)」で効果的なシミュレーションができるようになっています。

 月面は、磁気圏と大気が違うので、放射線の影響をもろに受けます。また、大気の緩和がされないので、月面には隕石が落ちます。

 注目されているのが、次に存在する「溶岩チューブ」と呼ばれる大きな地下空洞です。これは日本の研究グループによって世界に先駆けて発見されました。放射線や隕石を回避できることから人類の月面開発の拠点として有望視されています。

 軽量構造物を、簡易な方法で膨張させることで居住環境を構築することができれば、利用できる可能性が広がります。また、このようなテントも災害時に役立つ技術であり、新型コロナウイルスの検査施設にも使われました。

閉鎖生態系システム

 2014年に発表されたVeggieは、これまでのような植物栽培実験というよりも、食料生産のために開発された装置です。赤、青、緑のLEDライトが設置され、送風部と養液供給システムが取り付けられた培地部から構成されています。植物の成長に合わせて高さを調節できるように工夫されており、栽培面積は0.17㎡という大きさで、食料の供給設備として小規模な実験施設です。そこで栽培された植物は、食品に対して定められた安全基準を満たしており、2015年8月、NASAの宇宙飛行士は宇宙で栽培された野菜を口にした初の人類となる歴史的快挙を成し遂げています。

 他には、ドイツのブレーメンで宇宙利用を視野に入れた、極地での生鮮野菜の供給を目的として、南極で運用している栽培実験などがあります。 

環境制御・生命維持システム(ECLESS)

 ECLESSとは、要約すると「ヒトが宇宙で生きていくために必要な環境を提供するシステム」です。地上の生活環境を、そのまま宇宙で実現することが要求されます。

  • 空気環境の維持
  • 水の供給
  • 食料の供給
  • 廃棄物の除去

 酸素を抽出する方法としては、サバチエ反応を利用する方法があります。二酸化炭素と水の電気分解で生成する水素を反応させて水を作り出し、その水を再び電気分解して酸素を製造するシステムです。

 サバチエ反応で生成するメタンを廃棄すると水素が不足してしまうため、将来的にはメタンを分解することによって水素を系内に残す方法が検討されています。

おわりに

 地球から月までの距離は約38万キロメートルです。人類が初めて月に降り立ったアポロ計画では、宇宙船はkの距離を3日かからずに移動しています。げんざいでも、例えば日本から地球の反対側のブラジルに行くためには1日近くかかることを考えると、時間的にいえば月は意外に近い場所であると感じられるでしょう。

 人類が宇宙に進出するためには、まだまだ、さまざまな課題を克服する必要があります。しかしながら、我々の知恵と創造力を駆使すれば、いずれの課題も解決は困難なことではありません。むしろ、月や火星に到達したあとに、何をするのかということが問題です。

 本書で紹介したように、宇宙の居住環境の構築や交通手段の整備は整えていくことが可能なものとなっています。若い世代が、自分の足元の生活を充実を図っていくことは大事ですが、地球という縛りを超えて自分の可能性を伸ばしていける豊かな未来が描けるとすればさらに幸せなことではないでしょうか。

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