「まちライブラリー」の研究/著者:礒井純充

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書籍情報

タイトル

「まちライブラリー」の研究

「個」が主役になれる社会的資本づくり

発刊 2024年2月1日

ISBN 978-4-622-09648-1

総ページ数 236p

著者

礒井純充

一般社団法人まちライブラリー代表理事
文化・教育事業児従事してきた経験を持つ

出版

みみず書房

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 まちライブラリーが生まれた背景と基本概念
    • 無力感が生まれてくる背景
    • 私がみたグローバル化
    • グローバル化がもたらした息苦しさ
    • 森ビル時代の社会人教育活動
    • 六本木アカデミーヒルズの夢やぶれ、模索の時代
    • 若者から得た「まち塾@まちライブラリー」の理念
    • まちライブラリーの仕組みと基本概念および活動原理
    • 自生的に派生する活動と「社会的連坦」
  • 第2章 まちライブラリーの実践活動から得た知見
    • まちライブラリーの沿革と節目になった活動
    • 本を介した自己紹介の効用、ISまちライブラリー
    • 蔵書ゼロ冊から育てる図書館、大阪府立大学のまちライブラリー
    • 本の力を証明した商業施設のまちライブラリー
  • 第3章 まちライブラリーの広がりと多様性
    • 広がりの状況
    • まちライブラリーが点在する意味
    • まちライブラリーの分類と事例
    • 私的な場に設置された事例
    • 公共的な場に設置された事例
  • 第4章 まちライブラリー運営者と利用者の実態
    • まちライブラリーを始めるきっかけ
    • 運営を始める動機と活動の自己評価
    • 行き詰まりを感じる人
    • うまくいっていると感じる人
    • ソーシャル・キャピタルを得やすいまちライブラリー
    • 利用者の実態把握
    • 利用者の自己実現の場
    • 主観的な価値観が壁を突破する鍵
  • 第5章 地域と人とまちライブラリー
    • 地域におけるまちライブラリーの存在感を検証する
    • 大阪市中央区のまちライブラリー概況
    • ISまちライブラリーの立ち上げを支援した人たち
    • 大阪市中央区全体への広がりと運営者の顔
    • 岩手県雫石町の個人力
    • 自然体での広がり――埼玉県鶴ヶ島市
    • 北海道千歳市の市民力、挫折と再生から見えてくるもの
    • 長野県茅野市における地域への浸透
    • 地域と人とまちライブラリーから学ぶこと
  • 第6章 まちライブラリーを活用した場づくりとは
    • まちライブラリーはコミュニティの場なのか?
    • 「場づくり」という多様な概念
    • 居場所という場
    • 魔法の言葉「サードプレイス」
    • まちライブラリーが生み出している場
    • 本の磁力と人の顔がある場
    • 本がつくり出す日常的な場
    • 運営者の自己充足が無意識のうちに場づくりになる
    • まちライブラリーが生み出す「場の四象限」
  • 第7章 計画性や制度から自由で、自生的に生まれるまちライブラリー――知の哲人からの気づき
    • 計画性と制度の罠
    • 近代都市計画に内包する課題
    • ジェイコブズの都市計画批判と生態学的な都市観察
    • 宇沢弘文の「社会的共通資本」という問題提起
    • 公共図書館の新しい役割
    • 「知の広場」としての公共図書館
    • アンニョリが推奨する公共図書館
    • 変革を遂げつつある公共図書館像
    • 場としての図書館
    • 私立図書館等の先導
    • 計画性や制度の外にあるまちライブラリー
    • 小さなつながりから派生する大きなネットワーク
    • アダム・スミスの原点にある「個」の力
  • 第8章 「個」が主役になるまちライブラリー
    • 解を求めるまえに
    • 組織への依存を極力さけるコツ
    • 組織への依存より、心の自由
    • 組織の視点から「個」の活動をみる
    • 汎用性より個別性の大事さ
    • 計画性より融通性がことをうまく進める
    • 非日常より日常を大事にする
    • 日々の積み重ねを大切にする人への敬意
    • 本の触媒性が示唆する人のつながり
    • 人と人との集合知は双方向性から生まれる
    • 個人の知を開放する勇気
    • 社会の寛容性と個人の意識改革
  • おわりに

本の力を証明した

 東急不動産が開発し、運営している商業施設「もりのみやキューズモールBASE」には、日常的に利用できるまちライブラリーがあります。カフェやFM局のブースなどがあり、気軽に訪れやすい場所です。

 今では、かなり多くの人が訪れるまちライブラリーになりました。年間利用者が約10万人以上いて、公共図書館と比べても少なくない人が利用しています。

 イベントは年間300回以上行われ、利用者の内約はカフェ23%、残りの75%は本の閲覧や貸出にきた人です。イベントが終われば来ない人が多いだろうと思いがちですが、実際の利用者を積算してみると間違っていたことに気づきます。

 時間帯によって、ベビーカーのお母さん、近所で勤務している人、小学生、勤め帰りの人など、色々な人が訪れます。本がある空間が持つ有用性とは、日常性だったのです。

利用者の実態把握

 まちライブラリーの多くは、名前を書いただけで利用できたりすることが多く、利用者を特定するこをは本来できません。そこで、私が代表する一般社団法人まちライブラリーが運営している場所を対象に、アンケート調査を行いました。

 利用者の全体の34.9%が男性、65.1%が女性です。男女比は各地によって大きなばらつきがあり、地域の特性が出ています。

 年齢層も場所によってかなりの開きがあり、9歳以下から80代までいます。全体的には30代から60代くらいの利用が多いです。

 利用目的は以下の通りとなっています。

利用目的
●本の閲覧 42.7%
●カフェの利用 35.4%
●勉強・仕事の場 28.2%
●本の借出 25.4%

 利用して良かったことは、「居心地」と答える人が一番多く、「意外な本に出合えた」「イベントで知識が増えた」などの声もあります。

計画性や制度の外にある

 個人の立場で始めたまちライブラリーは、制度にも計画にも縁遠い活動でした。それゆえにh8円減自在に形や様態を変えて、10年以上にわたってそれぞれのまちや人に沿った活動を行ってきたのです。

 10年経ってみて、ようやくある程度の成果が積み重なり、まちライブラリーは特殊な状況下だけで成立するのではなく、人それぞれ、場所それぞれの活動として個性的な活動がなされていることが確認できました。

 社会的な計画でないからこそ、若い世代が近づきやすい清潔でオシャレな空間を演出できました。当初の思惑との違いを新たな可能性と見て取り、前提にこだわらず運営していくことが何よりも大事です。

 社会は自ずと計画通りに事が進むと考える方が無理があります。随時変化する環境を捉えてことを進めることが大事だと、まちライブラリーを振り返って改めて感じるのです。

組織への依存を極力さけるコツ

 組織に依存する大きな理由の1つが、資金です。何かを成し遂げようとするとどうしてもお金が必要だと思うでしょう。行政や企業が資金を出してくれれば、という発想です。

 けれど、資金を必要としない範囲の活動にすれば、組織的な対応や応援に頼らずに進めることができます。趣味でやるゴルフ、ハイキング、温泉巡り、嗜好品収集、映画鑑賞は自らの意思で実行しているのです。これらは行政や企業に支援してもらっているわけではありません。

 まちライブラリーを立ち上げた当初は、楽しめる範囲でスタートしました。模索していた段階では、まちライブラリー興味を持ってくれたカフェやお寺を借りて、オーナーのお話を聞く会などのイベントを開いていたのです。会費制で懇親会を催したりもしました。

 お金や組織への依存を避けられれば、自らの発想を素直に表出できます。

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