民主主義とは何か

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 民主主義という言葉は古代ギリシャ以来、2500年の歴史があります。歴史を貫くような民主主義の1つの理解があるのかどうかが本書の最大の問いとなります。

 変化し、相互に矛盾する多様な民主主義の意味を、少しずつ丁寧に解きほぐし、分析していくことが大切です。

 政治権力の責任を厳しく問い直すことを、民主主義にとって不可欠な要素と考えます。

 今日、民主主義への信頼が大きく揺らぎつつあるようです。それだけに、「民主主義とは何か」を考え直すことが大事なのではないでしょうか。

書籍情報

タイトル

民主主義とは何か

著者

宇野重規

東京大学社会科研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。

出版

講談社現代新書

民主主義への道のり

 アテナイではクレイステネスの改革に先立ち、「政治」の営みが開始されました。ここでの「政治」とは、市民の公的な議論によって意思決定を行うことです。ただし、初期において、民会や裁判において主導的な立場を占めたのは貴族でした。

 自営的なリーダーである貴族たちが集住したのがポリスの始まりです。そのポリスではしだいに平民の台頭がみられるようになります。力をwもった平民と貴族との間に緊張感が生まれ、不満と不安が平民の間に鬱積していきました。古代ギリシャ版の「格差問題」です。

 ソロンが行った革命は、債務の取り消しと、債務奴隷からの解放になります。債務奴隷が現れないように身体を抵当した借財を禁止しました。政治参加の権利を、家柄ではなくポリスへの軍事的な貢献にもとめることで、平民にも国政に参加する道が開かれることになったのです。

 政治に参加する人数が増えるほど、意見の対立が大きくなり、党派争いが起きました。しかし、その対立が民主主義にとって不可欠でもあったのです。貴族と平民の抗争が政治に対波ズムを与え、民主化へと進む推進力となりました。

財産所有の民主主義

 1971年、アメリカの政治哲学者ジョン・ロールズは『正義論』を発表します。政治哲学の復権をもたらし、正義をめぐる検討を再び現代社会における重要な主題にしたのです。

 ロールズの『正義論』の第二原理に、恵まれない人の強群を最大限に改善する限りで格差は認められるという格差原理があります。

 不遇な人の尊厳が否定され、絶望するような財の配分パターンがあるならば、それを認めるわけにはいかないとしたものになるのです。

 高度な技術を持つ人が所得などの面で優遇されるのは正当とする上で、優遇される地位が社会全体にもたらすものと比べて不当に高いものであれば、批判されるべきという原理になります。

 ロールズが重要視していたのは不平等がどこまでみとめられるべきかということです。

 それでいて、市民の自尊心や、自分を価値ある存在として捉える感情を毀損するような政治的・経済的不平等は認めていません。

 ロールズは特に、教育を通じての人的資本の所有の確保を強調してしています。

 福祉国家のリベラリズムを擁護しているようにみられるロールズですが、福祉国家の現状を批判し「財産所有の民主主義」を主張しているのです。富と資本の所有の集中をいかに防止するかという課題を考える上で非常に示唆な内容になります。

戦後民主主義とは何か

 戦争に敗れた日本の国土は荒廃し、人々の生活は困窮を極めました。しかし、戦前から戦時中にかけて、人々に重くのしかかった国家の存在が取り除かれた結果、人々は貧困と欠乏にもかかわらず、ある種の自由や開放感を感じたのです。

 また敗戦によって世代交代が進みました。戦前では、学歴に基づいて、正社員と雇員の区別がありましたが、戦後には一括してサラリーマンと呼ばれるようになります。支配的な位置にあった人々が退き、結果として職場の平等化が促進されたのです。

 政界にも縁がなかったような人物が選挙の洗礼を受け、改革志向と批判精神、世代交代の促進と平等化が、戦後民主主義の大きな実実となりました。

何を信じるべきか

3つの信じること
第一に、「公開による透明性」
第二に、「参加を通じての当事者意識」
第三に、「判断に伴う責任」

 古代ギリシャで成立した「政治」とは、公共の議論を通じて意思決定を行うことへの信念でした。自由な人間にとって何より大切である理念です。情報の後悔やオープンデータはもちろん、政策決定過程をより透明度の高いものにしていく必要があります。

 私たちは、自分と関わりのないことには、いくら強制されても力を出せません。私たちは身の回りのことから、環境問題などの人類全体の問題にまで、生き生きとした当事者意識を持ちたいと願っています。民主主義とはそのためのものです。

 場合によっては多くの人々の暮らしや製紙にかかわるだけに、政治的決定には責任が伴います。リーダーだけではなく、自らの可能な範囲で公共の任務に携わり、責任を分かちもつことが、民主主義には大切です。

 個人は相互に自由かつ平等であり、それを可能にする政治・経済・社会の秩序を模索し続けるのが人間の存在理由になります。民主主義をどこまで信じることができるのか、それがいま、問われているのです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 民主主義の反論として、マルクス主義だったりを繰り広げる新書が出るなか、民主主義の解説を論じている書籍は珍しいのではないでしょうか。

 2021年1月の本なので、新刊というわけではありませんが、現在の感覚で読んでいただけると思います。

 選挙に行かない。どこの政党も支持しない。そんなことが、報道されることがありますが、考えてみれば無責任なことだと思うのです。

 私は考えることを放棄する!。それも、選択肢の1つですが、大衆がそうなってしまうのは問題になります。

 身の回りの問題に参加していく上でも、民主主義について読んでみてはいかがでしょうか。

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