仕事と人間 下/著者:ヤン・ルカセン

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書籍情報

タイトル

仕事と人間

70万年のグローバル労働史[下]

発刊 2024年3月25日

ISBN 978-4-14-081960-9

総ページ数 445p

著者

ヤン・ルカセン

労働史を専門とする歴史学者。アムステルダム自由大学名誉教授。
オランダの国際社会史研究所(IISH)の研究部長を長く務めたのち、現職。

出版

NHK出版

もくじ

  • 第5部 労働関係のグローバル化~1500年から1800年まで
    • 第18章 ヨーロッパの影響下で移り変わる世界の労働関係
    • 第19章 東ヨーロッパの労働粗放型発展経路への道
  • 第6部 労働関係の収斂~1800年以降
    • 第20章 産業革命
    • 第21章 非自由労働の衰退
    • 第22章 自衛労働の相対的な減少
    • 第23章 家庭内労働の割合の減少
    • 第24章 自由賃金労働への増加
  • 第7部 変わりゆく仕事の意義~1800年から現代
    • 第25章 仕事と余暇
    • 第26章 利益の拡大 個人戦略と集団戦略
    • 第27章 仕事と国家
  • 終章 今後の展望

紹介文

 産業革命以降の労働形態の進化を詳細に追い、労働者の権利の拡大、労働条件の改善、および経済成長との相互作用について語っています。彼は、技術革新が労働市場にもたらした影響や、グローバル化が労働者に与えた新たなチャンスと課題を分析し、これらがどのように社会構造に影響を与えてきたかを検証します。

 膨大な歴史的事実とデータに基づきながらも、読みやすい文体で書かれており、学術的な深さと一般読者へのアクセシビリティを両立しています。ルカセンのアプローチは、単なる労働史の記述に留まらず、経済、社会、文化が交錯するポイントを解明し、読者に広範な視野を提供しています。

 ロボット化の進展が労働市場に与える可能性のある影響についても論じており、これが現代読者にとって非常に関連性の高い内容であることがわかります。ルカセンは、これらの技術進化が労働者のスキル要件をどのように変化させるかを探り、政策立案者、教育者、労働者自身がどのように対応すべきかについての洞察も提供しています。

 全体として、『仕事と人間 70万年のグローバル労働史[下]』は、労働の過去と未来をつなぐ重要な一書であり、労働に関連する現代の問題を理解するための鍵となる作品です。この本を通じて、読者は労働が人類の文化や社会に与えた影響を深く理解することができ、これからの変化に備えるための洞察を得ることができます。労働史に興味のある人だけでなく、現代の労働問題に取り組むすべての人々にとって、非常に価値のある読み物です。

試し読み

自由賃金労働

 賃金労働者と自営職人の多くは都市に住んでいました。特徴として、都市居住地が大陸全体に非常に不均一に分布しており、自由労働者と非自由労働者の間の競争は激しかったです。

 ブラジルでは農業が未開拓で、先住民の多くは狩猟採集で暮らし、焼き畑式農業を続けていました。そのため、ポルトガル人やオランダ人は、一から社会を築く必要がありました。これが原因で、ポルトガル領アメリカの都市化はスペイン領アメリカに比べて遅れました。

 1690年代にミナス・ジェライスでゴールドラッシュが起こるまで、報酬も技能も低い職人と家事奉公人は、同じような仕事をする奴隷と競争しなければなりませんでした。都市部の数少ない工業施設は主に繊維工場とタバコ工場で、植民地当局によって設立されたのは18世紀末の数十年間です。

 1800年ごろのメキシコシティのタバコ工場では約5000人の労働者が働いていました。慣例的な従業員手当の廃止とノルマの増加に抵抗し、ストライキを起こした女性労働者の行動は有名です。ヨーロッパおよびアジアと同様に、アメリカ大陸の自由賃金労働者は一般に小さい労働単位で働いていました。

賃金労働者数と勤務時間の増加

 19世紀には、賃金労働者の数が増加しました。特に西ヨーロッパでは、中産階級の購買力が向上したことから、奉公人や雇われ職人の数も増えました。また、船舶の輸送力の増大に伴い、船員だけでなく公務員、軍人、鉄道駅員、郵便局員などの職員も増えたのです。賃金労働が最も増大したのは工業分野です。自営業者から賃金労働者へ、遊牧民から賃金労働者へのシフトも見られました。

 イギリスでは特に法制化されず、年間の労働日数が大幅に増加しました。1830年頃のイギリスでは、生計を立てるためには平均して11時間労働を300日間、すなわち年間3300時間を労働する必要がありました。これは1760年のロンドンでの2300時間から、1800年には3300時間へと増加しています。この半世紀で、労働開始時間は早まり、1日の労働時間は平均して1時間半ほど長くなりました。

 賃金依存の増加は、失業がより顕著になることを意味していました。以前の自由労働者時代には、公式に登録されることなく別の請負仕事を探せばよかったのですが、賃金労働の時代には、雇用主の意向によって収入が途切れがちで、その解決策も社会的に放置されることが多くなりました。

労働時間と労働日数

 労働者が労働時間を労働者が自ら労働時間を決定できる場合、世帯労働と家族の世話、市場向けの自営労働の境界を柔軟に設定できます。そして、全ての農業社会には、公休日が正式に定められていました。1週間のうち決まった曜日、1年のうちの決まった祭日です。祭日と祝日の習慣は、信仰に根ざしたものであって、不変のしきたりというわけではありません。

 ヨーロッパでは、年間労働時間が増加しましたが、組織的な労働運動の圧力により、労働時間は徐々に減少しています。まもなく労働組合は、賃金労働者の年次有給休暇制度を推進しました。欧米では第二次世界大戦後に一般所得が増加したおかげで有給休暇制度が実行可能になり、自営業者や社会全体にとってもそれは魅力的です。のちに、年次休暇は世界各地で手本にされることになります。

 もっとも重要なのは1日の労働時間です。労働時間の短縮は、最初にオーストラリアとニュージーランドのような白人入植地で実施され、のちに北大西洋地域や革命中のロシアなどに広がりました。労働法の重要な第一段階は、8時間労働制の立法化で完結しました。多くの国で8時間労働制が実現したのは、第一次世界大戦末期の激動の時代です。

 1940年にはアメリカが週五日労働制を採用し、合計労働時間を最大40時間に制限しました。2000年にはフランスが最大労働時間を35時間まで縮めました。ドイツでの労働時間を比較してみると、1870年に3000時間を超えていた年間労働時間が2005年には1500時間まで減少しています。

市場は分配問題を解決するか

 新自由主義的な見方では、市場を通じて分配問題を解決することはありません。実際、そうであった例は過去にありません。むしろ歴史を見ると、市場の力を抑制し、一部の国に特別な利益をもたらす例が見られます。

 新自由主義者は市場の恩恵に楽観的で、「自由」市場だけが仕事と報酬を適切に分配できると信じています。しかし、彼らが理想とするような中小企業家が支配的な世界が実現する見込みはほとんどありません。

 労働市場の末端では競争が激化していますが、上層部では競争が減少しています。全世界のヘルスケア産業はユニリーバ、バイエル、P&Gに、電機産業はフィリップス、シーメンス、GEに、航空機産業はボーイングとエアバスに支配されています。これらの大企業では従業員数が大幅に削減されており、会社の状態が悪化したわけではなく、商品の需要が減少したわけでもなく、むしろ下請けの増加が深く関わっています。

 最近、都心部の小売店が急速に減少し、高速道路沿いの巨大な物流センターに取って代わられています。これは果てしない下請け構造の結果であり、人件費構造の変化を示しています。労働者は人材派遣会社に雇われ、給与管理会社を通じて給与が支払われます。最終的には多国籍企業の基準に従うことが義務付けられ、全体のプロセスは中間業者を通じて監督されています。

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