世界インフレの謎

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 世界のインフレは、新型コロナウイルスの出現そのものではなく、その出現に対して人類が社会的・経済的な高度を変化させたことによってもたらされました。

 行動変容は、誰かから強要されたものではありません。、自分はどんな生活をしたいかと問い、その結果としてもたらされたものです。

 行動変容を手掛かりとして、私たちの社会と経済をよりよいものに変えて行く、そうした変革の原動力として活用していきましょう。

書籍情報

タイトル 世界インフレの謎

発行者 鈴木章一

発行 株式会社講談社

ブックデザイン 中島英樹(中島デザイン)

印刷 株式会社KPSプロダクツ

製本 株式会社国宝社

著者

渡辺努

東京大学大学院経済学研究科教授。専攻は、マクロ経済学、国際金融、企業金融。

出版

講談社現代新書

恐怖心の伝播

 当然のことながら、ウイルスの前では国籍は意味をもちません。どの国の人も恐怖心をもち、等しく行動を変容させました。

 健康被害は国によって大きなばらつきがあります。比較すると1万倍くらいです。それに対して経済被害はどの国でもほぼ同じ程度といってよいでしょう。

 今はリアルタイムで情報を発信できる環境があります。パンデミックの情報が発信されると、世界中に恐怖心が伝播しました。技術の進歩が経済被害と複雑につながった結果です。

 そして対面型のサービスの需要が落ち込み、各国でGDPが低下して、予期せぬインフレが起きました。

サービス経済化の反転

 パンデミックが始まった当初、人との接触が不可避なサービス消費から消費者がいっせいに遠ざかりました。レストラン、宿泊施設、商業施設、理髪店、フィットネスクラブから人影が消えたのです。

 消費の対象はサービスから物へと移りました。自炊を行うひとが増え、マーケットの売り上げが上がったのです。

 一時だけの現象と言われ続けていますが、いまだにサービス消費は以前の水準に戻っていません。

もう職場へは戻らない

 行動変容は、労働者の行動も変えました。パンデミックを機に退職を早めるケースや、離職したまま仕事に復帰しないという事例が、米国や英国に多くみられたのです。

 米国の非労働力人口を見てみると、コロナ前の約9500万人から500万人ほど増えて1億人前後になっています。研究者の間では、経済が回復すれば労働市場に戻ってくるとの見解でした。しかし、今も多くの労働者が現場に戻っていません。

 大手ステラ社CEOのイーロン・マスクが、同社の社員に対してオフィスに復帰しなければクビとTwitterにつぶやきました。そのくら労働者の行動変容の根深さは浸透しているようです。

「安いニッポン」で困るか?

 北海道のニセコ地区のホテルやマンションがオーストラリア等の企業や投資家に爆買いされているという話が、困った事例として紹介されていることがあります。

 日本の安い労働力を目当てにした中国企業の日本進出が増えているというのも、困ったこととして報道されるのです。

 実際、ニセコや京都の不動産はすでに高くなっています。しかし、ニセコのホテルの建設現場や完成したホテルで働く人たちの賃金は目に見て上昇しています。

 物価が上がっていくのに対して、賃金が上がらないという意識では、社会の活力が失われてしまいます。脱却の道として、安い日本が買われ、それにより価値と賃金が上がることが見えることは、向上させる一歩だと考えても良いのではないでしょうか。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 蔓延したデフレ脱却の一歩と、切り替えて考えても良いではないか。そんな書籍だったと思います。

 物価があがり、給与も同時に上がっていく仕様なのであれば、貯金がますます不利になるということです。最低限の給与で必要最小限の買い物するという発想があるのもわかります。暮らせるだけの給与で良い人に、従来の働き方に戻れと言われても、それは戻らないです。アメリカのような急なインフレが起きたら、働かなくなる人がでるのも納得できます。

 書籍では色々なデータのグラフを見ながら、インフレについての著者の考察が読めます。『物価とは何か』でヒットさせた人の著書に触れてみてはいかがでしょうか。

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