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目次
書籍情報
サイコパスから見た世界
「共感能力が欠落した人」がこうして職場を地獄にする
デイヴィッド・ギレスピー
企業の顧問弁護士の経験があり、ソフトウェア会社の共同創業者として成功を収め、投資家や作家としても知られる。
東洋経済新報社
- はじめに
- 第1章 私たちのなかに紛れ込んでいるカメレオン 歴史上のサイコパスたち
- もみ消された真珠湾攻撃の情報
- 仮面がはがれ落ちたスター選手
- サイコパスに欠けているもの
- サイコパスの頭のなか
- 第2章 共感力の進化 協力、信頼、「コモンズの悲劇」
- 無名の選手から成る最強のチーム
- スター選手がひしめく最低のチーム
- チームの成功を阻む「コモンズの悲劇」
- お互いへの信頼がないチームは機能しない
- 「囚人のジレンマ」と信頼
- 「繰り返し囚人のジレンマ」における「しっぺ返し戦略」
- 人間らしさの中心にある「ミラーリング」
- ミラーニューロンの発見とその驚くべき力
- 「フォン・エコノモ・ニューロン」と共感力
- 第3章 サイコパシー 共感力が欠如しているとなにが起きるのか
- 認知症により身勝手になってしまった男
- 「サイコパス」の定義の変遷
- サイコパスかどうかを見きわめるためのチェックリスト
- fMRIがあきらかにしたサイコパスの脳
- サイコパスにとっての報酬と罰
- サイコパシーを抑制する試み
- 情動的共感が欠落したドナルド・トランプ
- 共感力を高めるホルモン
- アセトアミノフェンが共感力を低下させる?
- サイコパスにとってこの世界は「食うか食われるか」
- 第4章 サイコパシーのおもな特徴 同じヒトという種のなかに潜んでいる捕食者
- 誰もが真実しか言わない世界
- サイコパスは(表面的には)とても魅力的になれる
- サイコパスの経営者が招いた「生き地獄」
- サイコパスはマイクロマネジメントを好む
- ドナルド・トランプの利己的で危険な思考決定
- サイコパスは「自分に利害があるかどうか」だけで意思決定する
- サイコパスが社会のルールを守ろうとしない理由
- スティーブ・ジョブズの攻撃性
- 第5章 ケーススタディ1 ステファニー
- 一致団結して働く最強のチーム
- 面接で飛びぬけて好印象だった新人
- チームに生じた異変
- 衝撃的な事件
- 第6章 ケーススタディ2 アリス
- 新卒の後輩に対して覚えた違和感
- 彼女はどこかおかしい…
- エスカレートする攻撃
- でっちあげられた背任行為の証拠
- 第7章 ケーススタディ3 スコット
- サイコパスから被害を受けた経験をもつ父親
- 父親からの助言
- 引き裂かれたチーム内の信頼関係
- 記録に残すという防衛策
- ペットのように服従し、けっして批判してはならない
- 第8章 ケーススタディ4 ジャスミン
- 自分にはなにかが欠けている
- 友だちが亡くなっても悲しくない
- 息をするようにウソをつける
- 他人は利用するだけの存在
- 同僚と上司を蹴落とすための策略
- 第9章 サイコパスへの対処法
- 本書が伝える4つの教訓
- サイコパスと関わる場合の5つのルール
- サイコパスをどう見分けるか、なぜ見定めるのが重要なのか
- サイコパスを寄せつけないのは、誠実で透明性を重視する経営者
- 性格に4つの強みをもつ経営者は企業の業績を向上させる
- サイコパスへの対処法のカギは「つねに誠実に行動せよ」
- おわりに
書籍紹介
サイコパスがどのようにして職場を「生き地獄」に変えるかです。ギレスピーは、人口の約20人に1人がサイコパス的傾向を持つと指摘し、彼らが持つ共感の欠如や表面的な魅力が、周囲にどれほどの混乱と破壊をもたらすかを具体的に解説します。
彼らは一見魅力的で人当たりの良い態度で信頼を勝ち取りながら、裏ではマイクロマネジメントや成果の横取り、秘密主義といった行為で組織をむしばむとされます。これらの行動は、職場にストレスや不信感を生み出し、時には深刻な人間関係の破綻を招くこともあると警告しています。
サイコパスという存在を遠い世界の話ではなく、身近な現実として捉え直すことで、自分を守る術を学べる一冊です。人間関係や職場のダイナミクスに悩む方、または単純に人間の心理に興味がある方にとって、強くおすすめしたい本です。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
サイコパスは(表面的に)魅力的になれる

ドナルド・トランプの姪のメアリーは臨床心理士で、2020年に出版された『世界で最も危険な男「トランプ家の暗部」を姪が告発』の著者です。そのなかで、サイコパスの特徴を物語っているエピソードを紹介しています。
2017年、メアリーはホワイトハウスで開催された親戚の集まりに招待されました。そこでトランプは「君にはぜひ来てもらうようにと、特別に言っておいたんだ」と言い、両腕を広げメアリーをハグしたようです。これは彼がよくやる人心掌握の手であり、その場その場に合わせて本気らしく言うコツを心得ています。
SNSではコロナ対策をしていた製薬会社を非難し、医薬品株が暴落するなど損失をこうむっていました。そこで製薬会社の役員や株主たちがホワイトハウスに出向くと、トランプが愛想よくホスト役を務め、彼らに耳を傾けて、新薬承認の手続きを簡素化したいがための方便だと語ったのです。製薬会社のトップたちは、大統領がわかってくれたという印象をもって、ホワイトハウスを後にしました。
珍しい話ではなく、好印象を残して有利な状況をつくるためには、誕生日を祝いことも、レディーに椅子を引くことも、トランプは忘れなかったようです。SNSでは横暴な書き込みをするにも関わらず、実際に会ってみると違う人物がいました。
サイコパスにとって、世界は信用できない人間であふれています。被害妄想が極端に強いので、他人が自分を信用しているとは思えず、少しでも隙を見せれば裏切られると思っています。
サイコパスに騙された人は、初めて会ったときから魅了されたとよく語ります。サイコパスがあなたを褒めるのは、あなたに信用されたいからです。サイコパスは聞き上手であり、あなたに信用されるような行動をとります。信用できない相手をコントロールしようと考えるのです。彼らは、あなたにアメとムチを使いわけて忠誠を強要しようとします。