誰も知らない「芦屋」の真実/著者:加藤慶

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書籍情報

タイトル

誰も知らない「芦屋」の真実

最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか

発刊 2025年11月4日

ISBN 978-4-06-541019-6

総ページ数 200p

出版社リンク KODANSHA

著者

加藤慶

フリーライター。カメラマン。
ネット媒体で事件から政治、スポーツまで多種に取材する。

出版

KODANSHA

もくじ

  • はじめに
    • 「文化都市」を自負して
    • 「豪邸条例」で注目されて
    • 絶妙な位置にある
  • 第1章 最高級邸宅街「六麓荘」の内実
    • 1 日本のビバリーヒルズと呼ばれて
      • 電柱、スーパー、ATMはない
      • 六麓荘はどう開発されたか
      • なぜ「豪邸条例」と呼ばれたか
      • 1区画につき400m2以上、2階以下
      • 町を歩くだけで不審者扱い
      • 空き巣被害が起こらない
    • 2 どんな豪邸が建つのか
      • 町内会への入会金は50万円
      • 建設前には家の模型を用意
      • 西宮・苦楽園とは格が違う
      • 温泉付き豪邸の計画があった
      • 法人所有が増加した相続税問題
      • 築3年だろうと解体する
      • 最も高かった物件は20億円超え
      • 秘密裏に売却していく
    • 3 六麓荘のセレブに起きていること リーガロイヤルホテルのシェフを呼ぶ
      • 隣人との付き合いはほとんどない
      • ポストに入るDMが特別
      • バブル期を謳歌した奥様の定番
      • 海外の富裕層も住みたがる
      • 中国人との「ご近所トラブル」
      • 「六麓荘がチャイナタウンになってしまう」
      • 権限が弱まった町内会
    • コラム 日本の高級住宅街~東京編
  • 第2章 どうすれば芦屋に家が建つのか
    • 1 「阪神間モダニズム」とともに
      • アシの生える低湿地に
      • 猿丸家の尽力万
      • 平田町に大豪邸が連なった
      • 劇的な発展を遂げて
      • 高級住宅街とイメージされる理由
      • 街全体の空気を読んで
    • 2 芦屋市内のヒエラルキー
      • 通称「ベンツ通り」
      • 所得の差が最も激しいエリア
      • 田園調布と似ている岩園町
      • 芦屋の物件が少ないのはなぜ?
      • 下町にはお値打ち物件もある
      • 坪100万円は覚悟する
      • 大阪・神戸の一等地のほうが高い
      • 賃貸マンションは大阪・神戸よりも高い
      • 1億3000万円がすぐに売れていく
      • 値引き額は1億円
      • 六麓荘の物件を扱う芦屋不動産
    • 3 芦屋のハワイとはどこか
      • 芦屋マリーナの現在
      • 船の持ち主に芦屋市民は少ない
      • 淡路島までクルージング
      • 新進企業の社長がお通りだ
      • まるで豪華客船ホテル「芦屋ベイコート倶楽部」
      • お隣さんが買うなら私も…..
      • ゲーテッドタウンの宅地が完売
    • コラム 日本の高級住宅街~愛知編
  • 第3章 芦屋市民の生活と意見
    • 1 人々はどんな生活をしているのか
      • 洗練されたおばあさんになりたい
      • お犬さまの専用車
      • 「イエナリエ」が輝いて
      • 糸目をつけずに買う芦屋セレブ
      • テニス人口が多い
    • 2 次世代に何を残すか
      • 婿養子に入る代わりに豪邸をプレゼント
      • お金持ちには嫉妬しない
      • 習い事で遊ぶ暇がない子供
      • 「鶴」と「鹿」の戦い
      • なぜJR芦屋駅に新快速が停まる?
      • 芦屋さくらまつりの賑わい
    • 3 「芦屋セレブ」のホンネ
      • 芦屋マダムは美容整形に熱心
      • 過去を明かさない芦屋セレブの告白
      • セレブグループの妬み
      • 家政婦は見た!
    • コラム 日本の高級住宅街~大阪・京都・兵庫編
  • 第4章 未来の芦屋はどんな姿?
    • 1 芦屋ブランドと新しい住人たち
      • 隣接する町のおかげで
      • 阪急阪神
      • 30年サイクルで売却される
      • 涼風町に中国人が押し寄せる 最終的にはゴーストタウンに
      • イラン人、ドイツ人が集まってきて
    • 2 人口減少の中でどう変わるか
      • 細長くて狭い町だからこそ繁栄
      • 芦屋が老けていく
      • 芦屋の人口は3分の2になるよ
      • 「次世代の100人」 市長の施策
      • 市民憲章と市民意識
      • 芦屋ブランドを守るために
    • おわりに

書籍紹介

 芦屋という街がどのようにしてそのブランドを守り続けているのか、そしてこれからどんな変化を迎えるのかを、著者の長年にわたる取材を通じて明らかにしています。この本では、十数年にわたって芦屋市やその象徴的なエリアである六麓荘町を訪れ、住民の声や街の仕組みを丹念に集めています。

 芦屋は面積が小さく、人口も約9万2000人程度のコンパクトな街ですが、「文化都市」を自負する市民の結束が強く、それが街の高級感を支えている点が興味深いです。

 六麓荘町は、「日本のビバリーヒルズ」と呼ばれるほどで、電柱やスーパー、ATMすら存在しない別世界のような空間です。町内会への入会金が50万円かかることや、建設前に家の模型を提出するルール、さらには法人所有の増加や相続税の問題まで、富裕層が直面する現実が赤裸々に明かされます。また、芦屋市内のヒエラルキーや物件取得の難しさ、賃貸マンションの高さなども触れられていて、街全体の仕組みがよくわかります。

 住民の生活ぶりとして、リーガロイヤルホテルのシェフを自宅に呼ぶような贅沢な日常や、美容整形への熱心さ、子供たちの習い事の多さなどが紹介され、芦屋セレブのホンネが垣間見えます。一方で、中国人富裕層の増加や少子高齢化による未来の課題、たとえば「六麓荘がチャイナタウンになる?」という懸念も取り上げられ、街の変容を予感させる部分が印象的です。

 この本の魅力は、単にゴシップ的な富裕層の話に留まらず、芦屋がどのようにして日本一の高級住宅街として維持されてきたのかを、社会的な視点から分析している点にあります。富裕層の生活に好奇心をお持ちなら、この本を読んでみてはいかがでしょうか。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

日本のビバリーヒルズ

 JR蘆屋駅から車を走らせること約10分、急坂を登る途中にある六麓荘町交差点を境に、風景が一変します。

 大使館のような巨大な洋館や、古城のような邸宅、近代美術館のような美しい白亜の建築物が軒を連ねているのです。

 何台も停められる駐車場をもつ大豪邸の周りには、信号機や電柱、郵便局やコンビニ、スーパーやATMは1つもありません。夜景が眺められる山麓に、芦屋市内でも別格の存在感を保って六麓荘町があります。関西の富裕層にとって憧れの地です。この町に訪れると、言葉を失う人がほとんどでしょう。

海外の富裕層も住みたがる

 生活レベルも最高級な六麓荘ですが、ここ数年で海外の富裕層も増えてきたようです。独自のルールでも、別荘や投資目的での購入を禁止していません。今のところは大きな問題にはなっていないようです。

 中国で土地やマンションを購入しても所有権がありません。中国人が日本の不動産を爆買いするのも不思議ではないのです。中国人富裕層が購入する目的は、投資目的ではなく、来日した際の別荘として使うとしています。

 問題は、流入してくる中国人が日本語を話せない人たちが多いこと、セカンドハウスとして購入して友人や親せきも民泊のように自由に出入りすること、中国人の間で土地の売買が行われることです。一度、中国人が購入すると日本人に渡ることがありません。いずれは日本人も中国人もいないゴーストハウスになってしまうのではと心配されています。

芦屋マダム

 ここ数年、芦屋マダムに人気なのが美容整形です。

 芦屋は平日の昼間に男性を見かけることが少なくなります。忙しく稼ぐ男性が多いようです。そして、奥様はヨガにランチ、生け花、ジム、美容と、大変忙しくしています。そんなわけで、芦屋に美容医院を開くと成功しやすいようです。 しかも、芦屋マダムのお嬢さんまで、美容整形にお世話になるので、長く経営をしていけます。

 外見が派手な芦屋マダムの中には、家政婦しか知らない本当の顔があるようです。若くて綺麗だが、後片付けができないため、全てを床に放りっぱなしする人もいたと聞きます。生理用品がついたままのパンツさえ、床に転がっていて、どんな神経をしているのかと疑われるほどです。休暇後に、家政婦に戻ると、部屋はゴミ屋敷になるといいます。外見が派手なマダムほど、だらしないタイプが多いと家政婦は語ります。

芦屋ブランドを守る

 全国の自治体の所得ランキングは、1位東京都港区1780万円、2位千代田区1175万円、3位渋谷区1165万円、4位芦屋市887万円です。人口から考えて、芦屋市には大金持ちが多く住むことがわかるでしょう。

 芦屋市には国際文化住宅都市という文化があります。観光客を呼び込むことや、企業を誘致することは、この文化に反します。芦屋ブランドがすり減っていくことでしょう。

 芦屋市の価値は、静観で安心できる邸宅街を作ってきた文化にあると思います。「看板条例」も「豪邸条例」も、住民の賛同を得て実現しました。だからこそ、いつかは住みたいと思わせる町となったのです。この憧れがなくなったら、芦屋ではないでしょう。

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