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目次
書籍情報
「叱れば人は育つ」は幻想
発刊 2024年7月26日
ISBN 978-4-569-885382-6
総ページ数 221p
中村直人
臨床心理士・公認心理師。
一般社団法人子ども・青少年育成支援協会代表理事。
Neurodiversity at Work 株式会社代表取締役。
子どもたちが学び方を学ぶための学習支援事業を立ち上げ運営している。障害を抱える子どもの親を支援し、働き方、学び方の多様性の社会を目指す。
PHP研究所
- 第1章 「叱る」ことへの幻想
- 叱らずにはいられない大人と叱られつづける子ども
- ニューロダイバーシティとの出会い
- 依存(アディクション)についての学び
- そして、すべてがつながった
- 「叱る」ことの効果
- 自分のなかの「あるべき姿」と向き合う
- 第2章 教育現場に潜む「叱る」への過信 工藤勇×村中直人
- 子どもの主体的、自律的なやる気を引き出す教育
- 「最上位目的」は何か
- 何のために「叱る」のか?
- 「叱る優先順位」の共有
- 「毅然と叱るべし」の呪縛
- 工藤流「叱る」を手放す技術
- チームで対応するメリット
- 事前の工夫で「叱る」は減らせる
- 学校でお教えるべきは「対立しない」ではなく「対立をどうやって解決するか」
- 「共通する着地点」を見出す
- 対話こそが未来を拓く力になる
- 対談を終えて
- 第3章 「叱る」と「フィードバック」の違いとは? 中原淳×村中直人
- 「叱る」ことの快感、中毒性
- 誰でも「叱る」ループにハマる可能性はある
- 「叱る」の周辺に渦巻くイリュージョン
- ハラスメントに抑止力が働きやすい会社、働きにくい会社
- パラハラは会社の未来を潰す
- 「言いたい」けれど「言えない」、マネジャーのジレンマ
- 「フィードバック」の技術を標準装備せよ!
- 「現状通知」と「立て直しの支援」という二本柱
- フィードバックが恐怖や不安につながることはないのか
- 中原流「叱る」を手放すヒント
- 独断型リーダーはいらない、みんなで「納得解」を探そう
- 対談を終えて
- 第4章 「理不尽な𠮟責に耐える指導」に潜む罠 大山加奈×村中直人
- スポーツに必要な「厳しさ」とは何なのか
- 怒る指導の弊害
- 怒らない指導者が教えてくれたこと
- トップアスリート時代の苦悩
- スポーツが「人生を豊かにするもの」であってほしい
- スポーツが「人生を豊かにするもの」であってほしい
- スポーツとの向き合い方
- 上達の原動力になるのは「もっとやりたい」気持ち
- 勝ちにこだわる大人たちの意識を変えなくては
- 指導者支配型のスポーツ環境を変えていくには?
- ネットバッシング、見知らぬ誰かから「叩かれる」こと
- <セルフ叱る依存>という落とし穴
- 対談を終えて
- 第5章 僕が「『叱る』をやめる」と決めた理由 佐渡島庸平×村中直人
- 「『叱る』をやめる」と決めた理由
- 「成長につながる我慢」と「ストレスになるだけの我慢」
- 自分では気づきにくい「叱ることの快感」
- 学校に行かない息子にかけた言葉
- 相手をコントロールしない話し方
- 「家族会議」の勧め
- 「前さばき」ができると「叱る」を自然に手放せる
- カギとなるのは「予測力」
- 「前さばき」のうまい人、「後さばき」のうまい人
- 文脈次第で能力の出方は変わる
- 安心かつ自由でワクワクできる「居場所」
- 環境への動きかけができるかどうか
- 幸せをつかむための人間関係づくり
- 対談を終えて
- おわりに
書籍紹介
叱責の効果に科学的根拠はあるのか?
村中氏は、長年の教育現場やビジネスシーンでの経験を基に、「叱責」が本当に人を育てるのかを冷静に問い直しています。彼の主張は明快です。叱責が一時的に行動を矯正することはあっても、長期的な成長やモチベーションの向上には結びつかないことが多いという点を、豊富な事例と科学的なデータを交えて解説しています。
例えば、叱られることで一時的に行動を改めることがあっても、その根底にある問題が解決されていなければ、同じ過ちを繰り返してしまうケースが多いことが指摘されています。さらには、叱責による心理的なダメージが人間関係に深刻な影響を与え、結果として組織やチーム全体のパフォーマンスが低下するリスクもあるとされています。
では、どうすればよいのか?
村中氏は、叱責に代わる育成方法として、ポジティブフィードバックや建設的な対話の重要性を強調しています。特に、相手の内面的な動機を引き出すアプローチや、共感をベースにしたコミュニケーションが有効であるとし、具体的な方法論も提示しています。このアプローチは、単に表面的な行動を変えるのではなく、持続可能な成長と自己改善を促進することを目指しています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
「叱る」この効果
「叱る」という行為は、学びや成長に結びつかないなど、ネガティブな側面ばかりが強調されがちです。しかし、別の視点から見ると、叱ることにも一定の「効果」や「役割」があることがわかります。
それは、危機的な状況における介入効果です。目の前で起きている絶対にやめてほしいことや変えてほしいことに対して、叱ること以上に効果的な手段はありません。
ただし、叱ることの効果は、現在進行中の行動に対する限定的なものであり、その役割を終えたら、速やかにやめる必要があります。
叱ることの効果は「目の前の行動を変えること」に限定されます。介入効果はあるものの、学習効果は極めて低いといえます。
事前の工夫で叱るを減らす
トラブルが発生してからでは、焦ったりパニックになったりして、つい叱ってしまうことが多いですが、事前に予測できていれば気持ちに余裕が持てます。
問題への対処で成功体験を積み重ねることで、次に活かせるようになるでしょう。
つい叱ってしまう状況も、「学習がまだ十分でないからできないのではないか?」と考え、サポートすることが大切です。試行錯誤を通じて問題解決の力を身につけさせる必要があります。
怒らない指導者
あるバレーボールのコーチは、「こうしろ」と命令するのではなく、「どうしたらいいか」と問いかけることで、選手たちに自ら考えさせる指導を行っています。
周囲からは、週に練習の休みが多く、練習時間も長くないチームが勝てるわけがないと思われていました。しかし、自由な時間がある分、「どうすれば勝てるか」を自分たちで考え、高みを目指す思考を促すことは、高校生にとって非常に大変なことです。
そのコーチは2023年に監督を退任しましたが、それまでに全国制覇を12回達成し、Vリーグに30人以上の選手を送り出しました。