本屋のない人生なんて/著者:三宅玲子

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書籍情報

タイトル

本屋のない人生なんて

発刊 2024年3月30日

ISBN 978-4-334-10264-7

総ページ数 337p

著者

三宅玲子

ノンフィクションライター。
子ども2人が保育園の頃にフリーのライターになった。

出版

光文社

もくじ

  • 序章 渇望
    • 留萌ブックセンターby三省堂書店(北海道)
  • 一章 日本一
    • 今野書店(東京)
  • 二章 ともに読む
    • 定有堂書店(鳥取)
  • 三章 たらいの水
    • ウィー東城店(広島)
  • 四章 企む
    • ブックスキューブリック(福岡)
  • 五章 本を売ることに賭ける
    • 本屋Title(東京)
  • 六章 本屋を植える
    • 高久書店(静岡)
  • 七章 次の人たち
    • 双子のライオン堂(東京)
    • 汽水空港(鳥取)
    • MINOU BOOKS(福岡)
  • 終章 代わりのきかない場所
    • 橙書店(熊本)
  • それぞれの現在_あとがきにかえて

書籍紹介

 本書は、本との出会いが人生にもたらす価値と変化に焦点を当てています。

 文化の一環としての読書の魅力を深く掘り下げる三宅玲子の『本屋のない人生なんて』は、書店が私たちの日常生活にどれほど根ざしているかを繊細かつ情熱的に語ります。この作品は、ただの趣味を超えた存在としての「読書」と、それを支える「本屋」の社会的及び個人的重要性を浮かび上がらせます。

 三宅の筆致は、その温かみとともに読者を引き込みます。彼女の語り口は、まるで古くからの友人とコーヒーを飲みながら語り合うかのように親密です。各章では、様々な人々が書店とどのように関わってきたかのエピソードが綴られており、それぞれが文学との個別の出会いを通じてどのように成長し、癒され、影響を受けたかが描かれています。

 特に印象的なのは、本屋が人々に安らぎを与える場所であると同時に、新しい思考や未知の世界への窓口となることを力強く主張している点です。三宅は、物理的な書店が持つ「場」の魔法について語り、デジタル化が進む現代でもなぜ本屋が必要なのかを論じます。

 この書籍は、読書愛好家だけでなく、日常の喧騒から逃れ、心を豊かにするための手段として読書を求めるすべての人々に推薦されます。『本屋のない人生なんて』は、本という単なる媒体を超えて、それを取り巻く文化と交流の場としての書店の価値を再認識させてくれる一冊です。

 読後は、最寄りの本屋に足を運びたくなること間違いなしでしょう。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

ともに読む

 奈良は1980年に鳥取市で書店経営を始めました。

 鳥取県は全国47都道府県の中で最も人口が少ない県です。そんな鳥取にある定有堂書店は、全国の書店員から尊敬され、「聖地」と呼ばれることもあります。定有堂が書店員の聖地となるまでには、どのような努力と時間が積み重ねられたのでしょうか。

 鳥取駅のホームからは、デパートや若桜街道が見え、その先には久松山が見えます。手作り万年筆店や因州和紙を扱う文具店、呉服屋が並ぶこの場所で、長年商いが続いています。人通りはまばらで、シャッターを下ろした店舗がありますが、繁華街は静かで、裏通りや公園も清掃が行き届いていました。

 1980年当時、繁華街には書店が24軒もありました。書店業界が衰退して以降、20軒以上の書店が閉店しましたが、それは自然な流れかもしれません。そんな時代の変化を受け止めながら、定有堂は40年以上続いています。

 「本好きが作る書店」と聞いて期待を持って訪れたお客様のアドバイスを受け、人文書の取り扱いを充実させたところ、手応えを感じました。

 心理学を大学の外で教えたいという要望を受けて、「定有堂教室」を設立しました。これがきっかけで、仕事帰りの人々を対象にした教室が人気を集め、次第に本好きたちの自然発生的なサロンが形成されていきました。

 大人たちが自由に楽しむ中、奈良は一階のレジで店番をしています。常連客とともに、「定有堂リーフレット」や「ブックレット定有」を発行し始め、書評誌「定有堂ジャーナル」は10年近く続けられました。近年では、奈良を含む地元および外部の読書愛好者たちによるミニコミ誌「音信不通」が毎月発行されています。

ブックスキューブリック箱崎店

 ブックスキューブリック箱崎店はマンションの一、二階に位置し、一階の書店の床面積は25坪、二階のカフェとギャラリー部分は30坪で、合計55坪です。

 一階の書籍売り場はその全面に広がっており、奥には妻が選んだ雑貨コーナーを設けています。二階ではトーク イベントが頻繁に開催されるギャラリースペースがあり、これはブックスキューブリック箱崎店の看板イベントとなっています。東京を含む全国から多くの人気作家を招待してイベントを実施しています。

 ブックイベントや展覧会を組み合わせることで、ブックスキューブリックは文化の発信基地として育成されています。一方、書店のアイデンティティは地味ながらも重要な選書作業によって支えられています。オーナーの大井は、自ら選書を行うことを重視しつつ、理想的な世界をスタッフと共に築き上げていくことを望んでいます。そのため、選書を希望する意欲的なスタッフが退職することに、大きな悩みを抱えているようです。

 また、大井は本屋を始めたい人々を支援する活動も行っています。彼は「本は人間が書くものですから、人と人とのつながりが生まれるのです。本には人々を結びつける力があり、それが広がることでコミュニティが形成されます。本には予想もしなかったような力があるのです。」と語っています。彼にとって、静かな町で本屋が活気づき、その輪が広がることも重要な役割だと感じています。

Title

 Titleの1日は午後8時に始まり、「毎日のほん」と題した紹介文がウェブサイトで公開されます。事前に準備したテキストを定刻にアップロードするタイマーをセットし、毎朝8時に手動でテキストをコピペしてツイートしています。これを一年間毎朝続けることで、辻山の仕事への献身が表れています。

 具体的には、2週間分の本を前もって選び、テキストを準備し続けています。これを簡単と感じるか、面倒と感じるかの分かれ道です。

 ウェブショップを始めた動機も基本的には同じです。ウェブショップの運用は手間がかかりますが、粗利益は店頭販売と変わりません。割に合うとは言い切れませんが、小規模ながら始めてみました。

 ウェブショップ開店の4年後、コロナ禍が世界を覆い、それがTitleを支えることとなりました。日頃からTitleのツイートをフォローしていた人たちがウェブショップで本を買い始めました。

双子のライオン

 地下鉄赤坂駅から地上に出ると、右手にテレビ局を見ながら六本木方面へと緩い上り坂を歩きます。坂道を途中で脇にそれると、赤坂と六本木のビル群に挟まれた谷間に古い住宅街が広がっています。ヴィンテージマンションの一階、青く分厚い扉が双子のライオン堂の目印です。

 初めて見る奇妙な外見に少し躊躇しながら重たい扉を開くと、店内には本が木箱に積み上げられ、まるでジャングルのように広がっています。店の奥まで進むと、店主のレジがあります。

 店内は13坪のスペースに、文芸、思想、社会学、哲学など約3600冊の本がひしめいています。元ライフネット生命会長の出口治明や芥川賞作家の高山羽根子など、約40人の作家や経営者が選書に協力しています。各選書担当者の名前が記された木札が棚の脇に立てられており、それぞれのセレクションを見ることができます。

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