社会を変えるには

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 日本でおきていることがどういことなのでしょうか。社会を変えるというのは何でしょうか。歴史的、社会構造的、あるいは思想的に考えてみようというのが、本書の全体の趣旨になります。

書籍情報

タイトル

社会を変えるには

著者

小熊英二

慶應義塾大学総合政策学部教授。

出版

講談社現代新書

機能不全な日本型工業化社会

機能不全になっていった
●海外に生産場所を移す企業が増えた。
●正規雇用が減り、非正規雇用が増えた。
●商店街が寂れた。
●小売業の数が減った。
●地方の衰退が進んだ。
●企業が生涯雇用を担保できなくなった。
●企業に所属する意志のない人が増えた。

 1970年代~1980年代の日本は、今日の中国や東南アジアがそうであるように、先進国で衰退した製造業を肩代わりする新興国でした。当時の日本製品の強さの象徴は、いまでは他のアジア諸国が生産の中心となっている半導体です。

 アメリカ向けの部分輸出による経済を可能にしていたのは、冷戦という国際環境にあります。中国は東側陣営で、世界市場に参入していませんでした。韓国や東南アジアの西側諸国は、政情も不安定で教育程度もまだ低く、工場の移転先に適していなかったのです。また、「新冷戦」でドル高円安が続いたため日本企業は国内生産で十分に対応できました。

 1980年代以降は、円高や冷戦終結などによって、大手製造業が中国やアジア諸国に生産拠点を移すようになります。やがてバブルは崩壊し、製造業の就業者数は減少傾向になり、非正規雇用が増えていったのです。

 日米構造協議をきっかけに、多くの規制と緩和が行われました。1973年に制定された大店法では、地元の商工会の合意がないと、大型店舗を出店できないことになっていたのです。それが1991年に改正され、郊外大型店が急増し、商店街が寂れていきました。小売店の数は2009年までに3分の2に減っています。

 経済の低迷に対して公共事業を増やすことで対応しました。大型道路をつくれば作るほど、幹線沿いに大型郊外店が経ち、都市へ人は流れていったのです。結果として、地方の衰退が進みました。

 2008年にはリーマンショックがあり、「年越し派遣村」が開設されています。大企業の正社員の雇用が安定していたのと、公共事業や規制や助成金などで下支えをしていたものが削減されて、崩れて問題が露呈しました。

 公共事業や助成金を削らざるをえなくなると、システム全体にガタがきて、そこから漏れて「自由」になる人が大量に出ています。どこかに所属しても一生の雇用を補償出来ないとなれば、所属する意志がない人が増えたのです。

高度成長へのとまどい

 洗濯機があんまり便利なので、「ばちが当たる気がする」と述べる人がいました。うれしいけれど、うしろめたい、そんな時代です。

 高度成長といっても、貧富の差はありました。自分より優秀な人が、家の家業を継がなければならないという理由で進学できないこともあったようです。ビル校舎でものを消費し暮らしていると、うしろめたく思う生徒もいました。

 そんな中、こんな世の中はおかしい、豊かさに酔っていていいのか、誰かが犠牲になっている、という感覚が広がってしまいます。

昭和の日本

 昭和は、社会運動が停滞した時期です。経済はそこそこうまくいっていて、あまり自由度がなく不満も小さいものでした。

 進学率が低かった時代の使命感がなくなり、学生が社会運動をしなくなったのです。

 高度成長で弱った農村や商店街には、補助金や公共事業や無利子融資がやってきて、競争規制や保護がかけられていく、お金の力でつなぎとめるシステムが構築されていました。

 企業が学校が社会の仕組みとなり、会社で働くお父さんに、専業主婦のお母さん、学校に通う子どもが2人という、工業化社会型の近代家族、核家族が一般の家庭となったのです。

現代の「社会を変える」

 現代では「われわれ」が乱立しているので、これをしたから良いというものを見つけることが困難です。

 王が社会を代表しているときは、王を変えるか倒すかすれば「社会を変える」ことになりました。現代には、それにあたるものがありません。

 しかし、現代の誰しもが共有している問題意識があります。「自分はないがしろにされている」という感覚は誰であろうと共有されているはずです。そこを変えれば、「社会を変える」ことになるのではないでしょうか。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 原発再始動に対しての個人的な言及を除けば、戦時前~高度成長、高度成長~現代、の少しネガティブよりな振り返りができる本になっています。

 日本は謎税などが多いけれど救済制度が多いので、極端にインフレがおきて時給2500円くらいでも人員が集まらないといった極端な事態になっていません。日本の制度や社会の良し悪しは、新書などで煽られるほど単純に図れないことは、頭の片隅に入れておいたほうが良いです。

 あまりブログ記事にはしませんでしたが、原発や格差意識といった不安材料がありますよと警告して、社会に対しての可能性を広く表現している書籍です。民主主義の項目は、各自で読んで確認してもらえればと思います。

 思えば、誰もが納得できる社会をつくることなど不可能だと思います。けれど、全員が耳を傾けることはできるのではないでしょうか。数々の知識人が推薦図書にすすめる書籍を読んでみてはどうでしょう。

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