睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム/著者:櫻井武

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書籍情報

タイトル

睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム

快眠のためのヒント20

発刊 2025年3月1日

ISBN 978-4-594-09889-6

総ページ数 239p

書評サイト 読書メーターPRESIDENT Online

出版社リンク 扶桑社

著者

櫻井武

筑波大学医学医療系教授、国際統合睡眠医科学研究機構副機構長。
医学博士。

出版

扶桑社

もくじ

  • はじめに:脳と体のシステムに寄り添い「快眠」を取り戻す
  • 第1章 光環境
    • 快眠のためのヒント
      • Tips 1 朝、起きたら「光」を浴びる
      • Tips 2 夕方以降、部屋の明かりは抑えめに
      • Tips 3 せめて、ベッドにスマホは持ち込まない
      • Tips 4 自分にとっての最適な睡眠時間を知る
      • Tips 5 「いつもより少し早く寝よう」は×
      • Tips 6 週末の「朝寝坊」は平日プラス30分で
      • Tips 7 食事の時間はできるだけ「いつもの時間」に
    • 〈理解編〉「体内時計」が整えば睡眠が整う
      • 「体内時計」とは?
      • 体内時計をリセットするのが「光」
      • 睡眠ホルモン「メラトニン」の誤解
      • いつもより少し早く寝ようとしても寝つけない理由
      • 大切な日、アラームの前に起きられる理由
      • 「朝食は体にいい」とは限らない
      • 睡眠に「ゴールデンタイム」などない
      • 個人差がある「体内時計」
      • 年齢とともに眠りは変わる
      • ベストな睡眠時間は人それぞれ
      • 本物のショートスリーパーは遺伝子で決まる
      • ショートスリーパーは極めて珍しい
      • 明るすぎる日本社会
      • 体内時計と食事と時差ボケ
      • 社会が「時差ボケ」をつくり出している?
      • 睡眠不足に「社会」ができること
    • コラム① レム睡眠とノンレム睡眠の誤解
      • レム睡眠=「浅い眠り」ではない
      • 睡眠サイクルは90分とは限らない
      • 脳の休息・メンテナンスモード「ノンレム睡眠」
      • レム睡眠は体の休息ではない
      • 脳の作動モードは3種類
  • 第2章 環境温度
    • 快眠のためのヒント
      • Tips 8 寝室は暑すぎても寒すぎてもダメ
      • Tips 9 夕方以降は負荷の少ない運動を
      • Tips 10 入浴は寝る1.5時間前くらいまでにすませる
      • Tips 11 寝るとき、靴下は履きっぱなしにしない
    • 〈理解編>体の自然な変化を邪魔しない
      • 体温の下がりはじめが眠りのはじまり
      • 体温の変化と自律神経
      • 体温調節と睡眠を制御する場所は同じ
    • コラム② 眠らない生きものはいない
      • そもそも睡眠ってなんだ?
      • 眠りのスタイルはさまざま
      • マウスもヒトも眠らないと死に至る
      • 断眼チャレンジをした青年の話
      • 脳を維持する「マイクロスリーブ」
  • 第3章 睡眠圧
    • 快眠のためのヒント
      • Tips 12 日中、脳も体もしっかり使うこと
      • Tips 13 30分以内の短い仮眠が「いい昼寝」
      • Tips 14 昼寝をするなら午後2時~3時の間で
      • Tips 15 夕方以降のカフェインはできるだけ控える
    • 〈理解編〉 日中の活動が眠りに誘い、眠りが日中の活動を支える
      • 「睡眠圧」とは?
      • 「睡眠圧」の正体
      • カフェインで眠気が覚める理由
      • 「眠気」のカギをにぎるのは「リン酸」?
      • 増加する「行動誘発性睡眠不足症候群」
    • コラム③ 「睡眠不足」で失われるもの
      • 眠らない人は太りやすい
      • 睡眠不足がもたらす心身の不調
      • 睡眠不足とアルツハイマー病
      • 睡眠不足とパフォーマンス
      • 睡眠不足は人を「感じ悪く」させる
  • 第4章 感情
    • 快眠のためのヒント
      • Tips 16 空腹や満腹でふとんに入らない
      • Tips 17 眠れないときはいったん、寝室から出よう
      • Tips 18 寝室(ベッド)は寝るためだけの空間
      • Tips 19 自分にとって「眠れる」香りを見つける
      • Tips 20 睡眠に対する「こだわり」を捨てる
    • <理解編> 不安や心配が眠りを邪魔する
      • よく寝ているのに不眠に悩む人
      • 不眠につながる「眠れない学習」
      • 睡眠へのこだわりが不眠を生む
      • 視索前野の「睡眠システム」と脳幹の「覚醒システム」
      • モノアミンと覚醒剤
      • 覚醒を安定維持させる「オレキシン」
      • シーソーのような「睡眠」と「覚醒」
      • 「寝ている場合じゃない」ときに眠くならない理由
      • オレキシンの語源は「食欲」
      • 空腹とオレキシンと覚醒
      • 「覚醒」はなんのため?
    • コラム④ 睡眠薬の話
      • 睡眠薬は「眠れた」という成功体験のために
      • 睡眠薬の主流、GABAの働きを強める薬
      • メラトニンを模倣した睡眠薬
      • オレキシンの作用を遮断する睡眠薬
      • 睡眠薬の服用 5つのTips
  • 第5章 睡眠の役割
    • 睡眠、無意識の状態だからこそできること
    • 脳の情報処理と神経伝達物質
    • 脳の連続作動可能時間は1時間
    • 睡眠中に行われる「記憶の固定化」
    • 寝ているだけで技術が向上!
    • 記憶の固定化の仕組み
    • 忘れることも脳の役割
    • 夢は脳がつくりだす「幻覚」
    • 荒唐無稽な夢を見るのはレム睡眠時
    • 本当は恐ろしくない金縛り
    • 行動に”意識”は必要ない?
    • 覚醒が維持できない病「ナルコレプシー」
    • オレキシンの欠乏とナルコレプシー
    • 睡眠とは役割が違う「冬眠」
    • 人間も冬眠できる!
    • 偶然見つけた、冬眠状態にみちびく「Qニューロン」
    • マウスがほぼ冬眠と同じ状態に
    • 「人工冬眠」の応用~救急救命~
    • 「人工冬眠」の応用~宇宙開発~
    • 冬眠とコールドスリープとの違い
    • 人工冬眠できる薬の開発へ
    • コラム⑤ 研究のこと。オレキシンの発見
      • 「誰も知らない物質の発見者になりたい」
      • 研究者としての最初の仕事
      • 新しい生理活性ペプチドを探す研究へ
      • 「分子」をどう見つけるのか
      • オレキシンを同定した日のこと
      • 6500回以上引用されたオレキシンの論文
      • 生理活性物質の脳内作用の調べ方
      • 光を使ってマウスの脳を操作
      • 研究者にとっての「特許」
  • おわりに : 脳と睡眠はとても、おおらかで柔軟

書籍紹介

 この本は、専門的な知識をわかりやすく解説し、睡眠の重要性や脳の働きに興味がある方にとって魅力的な内容となっています。睡眠と覚醒がどのように脳内で制御されているのか、最新の研究成果をもとに丁寧に説明されています。

 櫻井さんは、睡眠が単なる休息ではなく、記憶の整理や感情の調整、さらには学習能力の向上に欠かせないプロセスであることを強調します。特に、脳の神経回路やホルモンの働きが、どのようにして私たちの眠りと目覚めを司っているのか、その複雑な仕組みを身近な例や比喩を用いて紐解いてくれます。例えば、睡眠不足が脳に与える影響を、まるで「脳のメンテナンス不足」に例えて解説するなど、科学的な話が初心者にも親しみやすく伝わります。

 また、本書は睡眠の質を高めるための実践的なヒントも提供しています。生活習慣や環境が睡眠にどう影響するのか、具体的なアドバイスが盛り込まれており、忙しい現代人にとってすぐに役立つ内容です。たとえば、スマートフォンのブルーライトが睡眠リズムを乱す仕組みや、就寝前のリラックス方法など、日常で取り入れやすい提案がちりばめられています。

 櫻井さんの文章は、専門家としての深い知識と、一般の読者への配慮がバランスよく融合しており、読み進めるうちに脳科学の奥深さに引き込まれます。睡眠障害や不眠に悩む方だけでなく、脳の働きや健康に関心がある方にもおすすめの一冊です。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

週末の「朝寝坊」は平日プラス90分で

 週末、たくさん寝ることを一般的に「寝だめ」と言うけれど、睡眠は預貯金のようにためておくことはできません。単にウィークデーの睡眠不足を補っているにすぎず、「キャッチアップスリープ」という言い方が正しいです。

 キャッチアップスリープは睡眠不足の解消方法として、推奨できるものではありません。しかし、慢性的な睡眠不足を放置するよりはマシです。週末の朝寝坊は自分に許してあげてもいいでしょう。ただし、平日の起床時間からプラス90分以内には起床します。この程度であれば、体内時計への影響を大きくなりません。

脳の連続作動可能時間は16時間

 1個1個のニューロンが処理できる能力には限りがあります。人は日々、何かを学ぶ存在です。

 なんの知識も得ていないと感じていても、脳には覚醒中、常に情報が入り続けています。ボーっとしているときでも「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる神経回路が盛んに活動しているのです。

 脳の中でさまざまなシナプスが情報を受け取ることで神経回路が強くなり続けていて、処理できる上限はあっという間に訪れてしまいます。16時間ほど起きているだけで、脳の情報処理のキャパは限界に達してしまうようです。

 処理能力が限界を突破したままの脳では、次の覚醒に影響を与えてしまうため、睡眠というメンテナンスを得て余白をつくる時間が必要になっています。

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