FOREIGN AFFAIRS REPORT NO.12 2022

サウジの新しい世界ビジョン

監修

カレン・ヤング
コロンビア大学 グローバル・エネルギーセンター 上級研究員

GLadyによるPixabayからの画像

パートナーシップの終わり

 2022年10月5日、石油出国機構(OPEC)メンバーと、ロシアを含むパートナー10か国で構成されているOPECプラスは、産油量200万バレル削減することに合意しました。

 サウジアラビア主導のOPECプラスが事前に減産計画を明らかにしていたために、合意は予想通りです。しかし、ワシントンは安全保障上の緊密なパートナーであることを引き合いに、増産路線を維持するようにリヤドに求めていたために、期待が膨らんでいました。ホワイトハウスは内諾を取れたと考えていたようで、驚愕した様子です。

 石油需要が変動するなかで、経済を守っていかなければならないサウジは独自の道を作ろうとしています。こうしたアブドラの考えに誰も口出しを出来なくなっているようです。

 ムハンマドは正しいのかもしれません。世界はエネルギー不安を抱えていますが、化石燃料の需要は少なくとも20年は無くならないでしょう。この状況は、サウジのパワーを強化するかもしれないです。

 新興国、特に、サウジアラビアは国際関係で、これまで以上に大きな役割を果たすかもしれません。

新興国に時代

 リヤドは、未来は新興国のものだといいます。

 世界の国内総生産(GDP)の伸びの67%を新興国が担い、世界のGDPの49%を占めているのです。

 今後4年間の新興国の経済成長率は年3.9%と予測され、経済協力開発機構(OEPD)メンバー国の平均を上回り、世界の貿易取引に占める割合も増え定期でしょう。

 サウジは、ロシア産のエネルギー輸入を抑制する欧米の制裁措置を「買い手カルテル」の動きとみています。産地や採掘方法などで原油をランク付けするようになるかもしれないと警戒しているのです。

 ワシントンは、産油量の減産の発表はアメリカの顔に泥を塗り、協力関係を拒絶する行為だとみています。

 ムハンマドが考える地政学では、国益からみてサウジが組みパートナーをいかようにも変化させることができるようです。安全保障の領域ではアメリカに大きく依存し、ビジネス領域では相手がロシアである場合もあるとの考えになります。

兵器調達と資源輸出の間

 ヨーロッパはサウジをはじめとする湾岸諸国政府との間で液化天然ガス、水素などの長期契約やエネルギー協調の合意を結んできました。

 重要なのは、一方でヨーロッパがサウジに兵器を輸出することに合意していることです。2018年にサウジとの武器取引を停止したドイツでさえ、軍需品の売却を容認しています。

 すでにサウジが重要な立ち位置を確保している以上、どちらか1つの陣営を選ぶ必要がなくなったといえるかもしれません。

世界ビジョン

 サウジは、需要の激減や原油供給にインパクトを与える衝撃を警戒しなければなりません。

 ロシアが攻撃のターゲットを民間のインフラやエネルギー施設を含めるようになると、世界のエネルギー安全保障に対する脅威は高まります。これ以上のロシア制裁の強化は、原油の供給を混乱させるでしょう。

 中国はロシア石油の輸入を増やしており、中国への石油輸出量は減少しています。差異氏にとっては懸念材料となっているようです。だからこそ、サウジはロシアと組んでアメリカ最優先策をやめて、自国の石油価格を守ろうとします。

ウクライナは冬を越せるのか

監修

メリンダ・へリング
アトランティック・カウンシル ユーラシアセンター副部長

ジェイコブ・ヘイルブラン
ナショナル・インタレスト誌編集長

Oleg MityukhinによるPixabayからの画像

インフラ攻撃

 2022年10月中旬以降、ロシアウクライナ全土で民間インフラを繰り返し攻撃し、経済を支える根幹部を破壊しています。攻撃を緩めることはなく、すでにウクライナ電力網の40%を攻撃しているのです。

 100万を超えるウクライナ人が電気のない生活を余儀なくされ、首都キーウでは8割の世帯で水道が不通になっています。

 クリスマスまでにウクライナの10人中9人が貧困に陥る危険があるようです。

大がかりな支援を

 85億ドルのアメリカの援助がなければ、ウクライナ財政は一夜にして破綻していたでしょう。なんとか銀行、鉄道、病院は侵攻開始から8か月間、機能し続けています。

 EUは2022年5月に90億ドルの追加融資を約束しているが、最後の送金分30億ドルが送れています。

 資金の提供を控えたり、遅らせたりすれば、ウクライナはハイパーインフレに陥る恐れがあるのです。9月にはインフレ率が25%近くに上昇しています。ハイパーインフレになれば、戦争の継続どころか国の存続ができなくなるでしょう。

 中間選挙後は支援を続けるのが難しくなると予想しています。アメリカにおけるウクライナ支援の支持は下降線をたどっているからです。

 米国防総省の巨額予算(7280億ドル)からみれば、ウクライナ支援は控えめであるし、ロシアの侵攻以降の米議会がウクライナに約束した安全保障援助は約180億ドルにすぎません。その180億ドルの支援だけで、ロシアは大きく弱体化しています。

電力なしで冬を越えられるか

 ウクライナ全土で停電が起きています。政府は市民に節電を求めるとともに、計画停電を実施して発電所の負荷を減らしつつ、復旧工事を進めています。市民も冷静に協力しているようです。

 モスクワは空爆によって、ポーランド周辺国にウクライナ難民を流失させ、政治的混乱を起こしています。ドイツの都市部は、100万を超えるウクライナ難民を受け入れ、すでに不安定化しているようです。ヨーロッパは実際、戦後最大の難民危機をむかえています。

 北部の都市チェルニヒフでは、停電のためにモーターが動かなくなり、住民の半分が水道を利用できなくなっています。

 中部クリヴィーリフではダム攻撃により、洪水の危機が生じています。

 南東部のザポリージャでは、半分が暖房が使えません。24時間滞在できるシェルターの設置に投資してほしいと訴えるほどです。

 チェルニヒフでは2022年3月に住民300人が凍死しています。

 ロシアのミサイルが直撃すれば、凍死の危険にさらされるのです。

 最も需要が高いのは、高価な防空システムになります。しかし、ウクライナ兵士、市民には銃と同じくらいバターも必要としているのです。

 ワシントンと同盟国がウクライナ支援に失敗すれば、今度はヨーロッパの別の戦場でプーチンと対峙することになるのではないでしょうか。プーチンの野望を速やかに抑え込むには支援が必要です。

ドル高の悪夢から逃れるには

監修

バリー・アイケングリーン
カリフォルニア大学バークレー校 特別教授(経済学・政治学)

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

ドルとポンド

 ドルは上昇し、ポンドは下落しています。いまのところ通貨を変動から防衛する通貨ペッグ制はとっていません。変動相場制にしたがって、通貨価値は変動します。

 イギリス政府は自国通貨で借り入れ、総務の4分の3近くは国内にあるようです。

 ポンド安は、イギリスにとって通貨安がすすみ、借り入れコストが上昇することになるかもしれません。しかし、アメリカや他の国々にとってはその限りではないのです。

ドル高の悪夢

 ドル高がすすむと、多くの中低所得国が抱える債務の持続可能性が脅かされます。

 途上国企業が外国の投資家に負っている債務の多くはドル建てだからです。ドル高になると、債務返済が重くなります。

 ドル建てで世界の原材料が取引されていることも影響します。通貨安になると、その国にとって輸入コストが上昇するのです。望んでいないインフレを引き起こすことになるでしょう。

 一方、アメリカと主要国がドルを売り、ドル安に向かわせたプラザ合意(1985年)のような協調介入も実施できません。プラザ合意を実現するために協力しなければならない国が多過ぎます。

 FRBと米財務省がインフレ抑制を重視していることを考えると、利下げを受け入れることが考えにくく、プラザ合意は実現しにくいでしょう。

 国債通貨基金(IMF)も対処できないようです。IMFには返済の見込みがある場合にのみ融資を提供するルールがあります。融資した資金が湯だな為替介入に使われれば、返済される可能性は低くなるのです。

 長期的には、各国の中央銀行が外貨準備を多様化し、ドルからユーロや中国あるいは小規模な国の通貨へと取引を多様化することが解決策となります。1国の中央銀行の決定に左右されにくいでしょう。

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