映画を早送りで観る人たち

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 Netflixに1.5倍速の再生機能が、いつまにか出ていました。セリフは早口になるけれど、ちゃんと聞き取れるし、字幕も出ます。

 しかし、初見の映画を倍速視聴するとは、いったいどういうことなのでしょうか。

書籍情報

タイトル

映画を早送りで観る人たち

ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形

著者

稲田豊史

ライター、コラムニスト。

 映画配給会社のギャガに入社、キネマ旬報社でDVD業界紙の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立しました。

出版

光文社新書

「観たい」のではなく「知りたい」

 ニュースや情報番組の録画を倍速視聴することには抵抗がない、という人は少なくありません。

 ある種の映画やドラマも情報収集の対象だという認識ならば、効率的な接種のために早送りする行動に疑問はないでしょう。

 2020年10月に公開されて興行収入403億円を記録した『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は大きな話題になりました。トレンドウォッチャーの中高年が、原作もアニメも観ないまま「なぜ流行っているのか」を知るために、映画館まで足を運んだのです。

 知っているだけでいいのであれば、作品を隅々まで味わい尽くすような鑑賞は必要ありません。

 「観たほうがいいよ」「観てないの?」といったプレッシャーやマウントを受けて、義務感が増大し視聴する必要性にかられた人もいるのではないでしょうか。

Z世代のネタバレ消費

 友達に渡す誕生日プレゼントなど、事前に「ネタバレ」することが、Z世代でトレンドになっているようです。

 理由は「失敗したくないから」。

 暴力的なシーンがある映画なら、事前に内容を知っておくことで、流血を観なくて済みます。感動ものであるならば、最後に泣く心構えで観に行きたいのです。

 音楽ライブでは、事前にセットリストを知っておけば「この曲なんだろう」ということが無くなります。

 ミレニアル世代が「未体験」に価値を求めるとすると、「追体験」に価値を求めるのがZ世代なのです。

 Z世代は、想定外の出来事で気持ちが左右させることを、ストレスと捉える傾向があります。

評論に販促効果は必要か

 まとまった長さの文章で良い点も悪い点も指摘する評論に比べて、短尺で推しをひたすら推すTilTok紹介動画のほうが、快楽主義者にとっては口当たりが良く、多数決においても優勢です。

 TilTok紹介動画が売上に貢献し、出版社側にとっても良いことになります。評論に悪い事を書かれると、批判するようなコメントが散らばることがあるのです。出版社は評論家を支える事はしません。多かれ少なかれコスパ主義に陥っているのです。評論にはそもそも販促効果は必要がなく、評論の存在意義について目配りしても良かったのではないでしょうか。

 短い動画での小説紹介活動では、「楽しくなくなった」などのコメントを残し、すぐに活動を辞めてしまうことが多々あります。不快な展開を徹底的に避けて、快楽主義的に一時的な人気集めをした結果なのかもしれません。

倍速視聴に目くじらを立てる人

 作品は作者が発表した通りの形「オリジナルの状態」で鑑賞すべきであると、そういう人もまだまだいるでしょう。

 しかし、そもそも我々は多くの場合において、作品を厳密な意味での「オリジナルの状態」では鑑賞していません。

 映画をTVモニタで視聴できるようになったときには、「小さな画面では映画を味わったとはいえない」という映画好きは相当数いたはずです。

 このような「オリジナルからの改変行為」は、むしろ作品の供給側が率先して行ってきたことになります。ビジネスチャンスが広がり、経済的メリットを享受できるからです。ビデオグラム化したり配信権などを販売したほうが、より大きく儲けられます。

 倍速視聴や10秒飛ばし機能を自社の配信サービス上に実装しているのもまた、相応の数の顧客がそれを求めているからです。その求めに応じた方が、ビジネスチャンスが広がります。

 今、我々は「レコードなんて本物の音楽を聴いたうちに入らないと目くじらを立てる人がいたんだって」と笑います。しかし、そう遠くない未来、我々は笑われる側に回るかもしれません。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 まあ、シーズンいくつまであるんだよ。と感じる作品を、会話を弾ませるために観なくてはならないのならば、倍速機能はとてもありがたいのではないでしょうか。

 観なければいいのでは…とも思うのですが、まあ、会社の先輩からの圧があった場合に、「疲れてるけれど明日休みだから観てみるか」と洗脳されかけているかもしれません。

 そんな場合にもちゃんと対応する、ネトフリやプライムビデオは、これからの短縮ニーズにも応えていくはずです。映画の見どころだけを集めた切り抜き動画なども、これから販売されるかもしれません。

 切り抜き映画は、凄く助かる人がいるんじゃないかなと思います。インフルエンサーの時間が無い人なんかは、重宝するのではないでしょうか。

 一方で、好きな人からすれば、味気ないなというのもわかります。緩急なく見どころだけパパっと観るのですから、感動的ではないかもしれません。純粋に映画を楽しみたいのであれば、普通に視聴すれば良いのではないでしょうか。

 観たいように、鑑賞してください。

購入リンク

電子

(Visited 5 times, 1 visits today)
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です