森に暮らし、鳥になった人。

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 父の85年の生涯は好きなことをした人生だったと思います。

 ジェームス・ディーンの「エデンの東」に憧れて、俳優座養成所に、売れない状況を経験して朝野連続テレビドラマ小説「いちばん星」の野口雨情役で大ヒットしました。その後、数々の番組で司会をして人気を得ています。

 父の破天荒は、1988年に八ヶ岳俱楽部というお店を創ったこと、家族を巻き込んだこと、「日本野鳥の会」会長などお金にならない趣味に奉仕し、バラエティー番組に積極的に参加したこと、好きなことを全うしたことだと思います。

 柳生博という破天荒な人物が作り上げたお店と森は、個を超えて時代を超えて、続いていく、これからの倶楽部もきっと楽しいものになるとワクワクしています。

書籍情報

タイトル

森に暮らし、鳥になった人。

第1刷 2022年7月29日

発行者 菊地克英

発行 (株)東京ニュース通信社

発売 (株)講談社

印刷・製本 (株)シナノ

イラスト MAKOpen&paper・柊ゆたか・すぎやまえみこ・

撮影 柏本勝成・相沢裕明・尾崎篤志

デザイン 長谷部貴志(長谷部デザイン室)

企画・編集 五藤正樹(株式会社ネオパブリシティ)

協力 八ヶ岳俱楽部・財団法人 日本野鳥の会

ISBN 978-4-06-529244-0

総ページ数 495p

著者

柳生博

日本野鳥の会会長。八ヶ岳でギャラリー&レストランの経営。俳優であり、司会者も担当していました。2022年月16日に逝去。享年85。

出版

東京ニュース通信社

八ヶ岳での暮らし

UnsplashObed Hernándezが撮影した写真

 八ヶ岳の生活で欠かせないのは暖房器具です。7月~10月の間以外、10か月ほどは暖房がいります。

 薪ストーブを使っていますが、買うと結構お金がかかります。木を切って、薪割をするのです。気を切ることに悪いイメージを持つ人もいるでしょうが、木は切るものなのです。

 木を切ることは木を育てるための手入れにもなります。薪にしたり炭にしたりするのは、自然との共存の第一歩になるのです。

 林の持ち主と仲良くなり、雑木を移植したり、間伐したりして手入れしてあげると、持ち主は喜んでくれます。そういうわけで、薪に不自由したことは1度もありません。

エコブームに思うこと

UnsplashJoshua J. Cottenが撮影した写真

 八ヶ岳の死にかけた森を必死に再生させてきましたが、環境のためというより自分や家族のためです。単純に、樹々やそこにすむ生き物たちが好きだったからやってきました。

 環境問題の解決が求められている中、やってきたことが役立つのであれば、それは伝えていきたいと考えています。一方、報道では「危機に瀕している地球」というような内容が放送され、煽動しているような気がするのです。

 エコビジネスを行う企業は、喧伝する絶対的正義はどれだけ儲かるかです。悪いことではありませんが、エコロジーを企業の利益追求の道具としてとらえること自体、時代遅れないでしょうか。もはや、環境を考えて企業活動するのは当たり前になってほしいと思うのです。

 本当に環境の大切さを伝えていくなら、子どもに鳥、樹々、花、動物、美しい地球を舞台にひとつひとつ丁寧に教えることだと思います。「きれい」「かわいい」と興味をもった子供たりは、それらを好きになって環境を大切にするはずです。

スタッフの将来

Image by kazuo from Pixabay

 八ヶ岳倶楽部を知った若者が、野良仕事の手伝いにどんどんきてくれるようになりました。樹を植える風景がとても楽しそうにみえているのでしょう。

 終身雇用が美徳とされている世の中で、八ヶ岳倶楽部の場合、人はどんどん入れ替わっていきます。「もうそろそろ出て行って、自分で何かをやれ」というのが、スタッフに対する姿勢なのです。

 こんな山の中で働こうと思うこと自体が、そもそも大変な覚悟です。仕事も生活も、全部ここです。人生を変えるようなつもりで来る人もいます。

 でも、八ヶ岳倶楽部という場所は、別に人間を高める教育の場ではありませんし、僕は人生訓をたれるつもりもないのです。

美鳥たち

作者: ぷんたん

 八ヶ岳の南麓、標高1300メートルの我が家で見る鳥たちの中で、色が一番美しいのは何といってもオオルリのオスでしょう。喉が黒くて胸が白いので、下から見ると単なるモノトーンの鳥なのですが、頭から背面の瑠璃色の光沢があってキレイです。

 オオルリとキビタキは日本がにもよく描かれる鳥ですが、その配所にはドキッとするものがあります。

 声の美しさはカッコウ、ホトトギス、ウグイスが一番です。ウグイスが八ヶ岳に来るのは5月から6月でうから、平地よりかなり遅い時期です。梅も桜も終わり、ツツジの季節になってからやってきます。夏まで鳴いているので、かなり長く楽しませてもらえます。

 たくさんの知識を持っているのはいいことですが、いっぺんに詰め込むように教えるのではなく、鳴き声そのものを楽しみながら覚えていけばいいと思います。子どもたちが鳥たちの鳴き声を聞いて楽しいと思えればそれで十分なのです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 本当に自然と向き合っている人の本です。

 稼ぎすぎて税金対策の意味合いも八ヶ岳レストランにはあったと思いますが、趣味ということもあって環境整備が本気です。環境問題に取り組む姿勢を広告するよりも、よっぽど活動をしていると思います。

 趣味の延長であるからこそ、メディアが煽る環境問題を疑問視しているし、ハト、インコ、カラスの公害問題についても深く首を突っ込まない姿勢をとっていたのだと思うのです。

 夏に八ヶ岳はキャンプ地となって盛況していることでしょう。都内から行けなくないところに自然を満喫できるところがあります。しっかりと小さい子どもから一瞬でも目を離さないということを徹底していただいて、家族で出かけるというプランも良いかもしれません。

 昆虫食といえどイナゴの佃煮さえ食べられない、部屋に入ってきた虫を追い出せない、益虫ゲジゲジを殺してしまう。あまりにも、忌避が過剰すぎる場面を良く見かけます。コオロギパンは許せないという正義を振りかざしたツイートも過去に散布されました。こういったことも、自然に興味を持ってもらえれば少しでも改善できるのではないかと思うのです。

 私も、大人になってから無理になった昆虫もいます。それでも、普段仕事をしている現場から物理的に離れて森に入り、嫌だと思っていた生き物や自然の地層といったものに触れると、いつもを忘れてリフレッシュしているのです。

 八ヶ岳の自然の魅力について語られている本です。魅力を知ってからアウトドアに出かけるのも、良いのではないでしょうか。

 下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。

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