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目次
書籍情報
ゲームフリーク
遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団

とみさわ昭仁
ゲームフリークに入社し、出版部主任を詰めるかたわらゲームデザインを学ぶ。その後独立し、フリーライター。
太田出版
- 第1部 ポケットモンスター
- 第1章 誕生前夜
- 第2章 ポケモン製作への助走
- 第3章 インターミッション
- 第4章 ポケモンの完成に向けて
- 第2部 ゲームフリーク
- 第1章 少年さとし
- 第2章 ゲームライター時代
- 第3章 クインティ制作秘話
- 第4章 プロとして模索の時代
- エピローグ
- あとがき
- 復刊にあたって
書籍紹介
元ゲームフリーク社員のとみさわ昭仁さん。ポケットモンスターという世界的な現象を生み出したゲームフリークの歴史と創造の裏側を、臨場感たっぷりに描いた名著です。
約25年ぶりに復刊されたことで大きな話題を呼びました。もともと2000年に刊行されたものの、当時はあまり注目されずひっそりと姿を消してしまった幻の一冊です。しかし、ポケモンのグローバルな成功とともにその価値が見直され、2025年5月1日から全国の書店で販売が始まりました。復刊の背景には、書泉の企画「書泉と、10冊」があり、熱心なファンの声が後押ししたことも見逃せません。発売直後から反響が大きく、すでに3刷が決定するほどの人気ぶりです。
ゲームフリークの草創期からポケモン誕生に至るまで、開発者としての経験を基に、田尻智さんをはじめとするクリエイターたちの情熱と苦労を丁寧に綴っています。たとえば、ポケモンのマップデザインが従来のRPGとどう異なるのか、その設計思想にまで踏み込んだ考察は、ゲームを深く愛する読者にとってたまらない内容です。クインティというデビュー作からポケモンの成功まで、ゲームフリークがどのように遊びの常識を塗り替えてきたのか、その軌跡が生き生きと描かれています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
ケーブルからのひらめき

ゲームボーイとゲームボーイをつなぐ通信ケーブルをみて田尻は新しいゲームのアイデアを発想しました。
とはいえ、捕獲したモンスターを交換するというアイデアの核が見つかったからといって、すぐにゲームが作れるわけではありません。交換という要素をもっとも効果的に活かすための、ゲームシステムを考案しなければなりません。
本来1人でも十分におもしろく遊べるべきものです。他のゲーム機を接続しなければおもしろくならないのでは、本当におもしろいゲームとはいえません。そこで、田尻は自分の少年時代の記憶をよみがえらせました。
広いフィールド、未知の生物、生物の研究、生物の修正、生物の捕獲法、生物の飼育法、生物のコレクション、持っていないものは、クラスの友達と交換で手に入る。
そんな昆虫採集の記憶は、野原を駆け回るような遊びをしらない今の子どもでも、きっと受け入れられると確信したのです。
『ポケモン』が変えたものと変わらないもの
最初の『ポケモン』を作るまでは、アマチュアリズムというか、ゲームが好きな人間の省堂だけでゲームを作っていました。そして『ポケモン』が世界中の人の受け入れられたことで、アマチュアのままではいられなくなりました。
ユーザーが世界中に広がり、仕事で取引する相手も多くなりました。そうなるとまなぶべきことは格段に増えていきます。そういう面で大人にならないと、これだけ爆発的に売れたあとの責任がとれません。自分が発信したことのすべてにきちんと向き合うのがプロフェッショナルだと思っています。
最初の『ポケモン』が世に出てから、すでに29年が経ちました。最初に楽しんでくれた子どもたちもすでに大人になり、いまは自分の子どもと一緒に『ポケモン』を楽しんでくれています。『ポケモン』を愛し続けてくれている人たちの期待を裏切らないよう、これからもゲームフリークは「楽しくておもしろいゲーム」を作り続けていきたいと思っています。