服部雪斎/著者:児島薫

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

書籍情報

タイトル

幕末から明治を生きた、精美なる花鳥図の絵師

服部雪斎

発刊 2025年6月14日

ISBN 978-4-86624-118-0

総ページ数 242p

出版社リンク 教育評論社note

著者

児島薫

実践女子大学文学部美学美術史学科教授。専門は日本近代美術史。

出版

教育評論社

もくじ

    • 一、服部雪斎
    • 二、博物図譜
    • 三、湯島の展覧会
  • 第1章 遠坂文雍一門が描いた祐天寺天井画
    • 一、祐天寺天英院御霊屋
    • 二、天井画
    • 三、天英院
    • 四、近衛家、島津家と博物学
  • 第2章 博物図譜の画家・雪斎
    • 一、二つの「目八譜』
    • 二、武蔵石寿と赭鞭会
    • 三、『目八譜』の意義
    • 四、「目八譜』の表現
    • 五、久志本常珍
  • 第3章 森立之と雪斎
    • 一、森立之(枳園)
    • 二、「半魚譜』
    • 三、『華鳥譜』
    • 四、制作のプロセス
    • 五、漢方医たちとの関わり
  • 第4章 外交儀礼のなかの雪斎
    • 一、オーストリアに贈られた画帖
    • 二、幕末の外交儀礼における贈答絵画
    • 三、パリ万国博覧会の画帖
    • 四、イギリスへ贈られた画帖
    • 五、幕末明治の外交官
  • 第5章 明治政府のもとでの雪斎
    • 一、博覧会における雪斎
    • 二、 博覧会記念写真の人物
    • 三、文部省および内務省職員時代
    • 四、文部省退職後
    • 五、画家としての雪斎
  • おわりに
    • 一、「写真」と西洋画
    • 二、技術としての「写真」
    • 三、雪斎の「写真」
  • 図版一覧
  • 服部雪斎略年譜
  • あとがき

書籍紹介

 この本は、知られざる絵師の軌跡を丁寧に追いながら、彼の作品に宿る繊細な美意識と時代精神を浮かび上がらせる魅力的な評伝です。

 彼の描く花鳥図は、動植物の生命感を捉えた筆致と、色彩の調和が見事で、江戸末期から明治初期の美術史において独自の光を放っています。著者の児島薫さんは、雪斎の作品を詳細に分析しつつ、彼がどのようにして時代を生き抜き、芸術を追求したのかを生き生きと描き出します。雪斎が生きた時代は、幕藩体制の崩壊と西洋文化の流入が交錯する混沌とした時期でした。そんな中、彼は伝統的な日本画の技法を守りながらも、新しい表現を模索し続けたのです。

 本書の一番の魅力は、雪斎の人間像に迫る温かみのある語り口です。単なる絵師の伝記に留まらず、彼の葛藤や喜び、創作にかけた情熱が、史料や作品の考察を通じて丁寧に描かれています。雪斎が花鳥図に込めた自然への敬意や、時代の変化に対する静かな抵抗は、読者に深い余韻を与えます。また、巻末には雪斎の代表作の図版が掲載されており、彼の精緻な筆使いを視覚的にも楽しむことができます。これにより、文字だけでなくビジュアルからも彼の芸術世界に浸れるのが嬉しいポイントです。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

博物図譜

※イメージ

 日本がバブル経済の時に、江戸時代が日本独特の発展を築いたとして誇らしげに語られた時代がありました。江戸時代後期には大名や旗本らが園芸や飼鳥に凝り、珍しい植物や鳥を集めたり育てたりしていました。それと同時に、色彩溢れた美麗な図譜が様々に制作されています。

 博物学や江戸文化の関心が高まるなかで、国会図書館では2005年に『特別展示 描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌』が行われるなど、さまざまな芸術展が開催されました。そうしたなかで、特に武蔵石寿『目八譜』を描いた人物として服部雪斎の名前が語られるようになります。

 外交儀礼として英国王子やオーストラリア肯定に画帖に参加している日本画家です。後に雪斎が描く植物や動物の図譜は「写真画」と呼ばれています。

 雪斎が描く水牛の子は、密生する毛が細かな筆で丁寧に描かれています。ところどころでつむじを巻くように異なる映え方をしている様子まで丹念に描写しています。雪斎が明治政府のもとで植物園や動物園の図譜を作画していたときの作品で、こうした作品は上野動物園につながる歴史として意味があると評価する者のいます。

購入リンク

amazon

(Visited 1 times, 1 visits today)
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です