※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
目次
書籍情報
嘘発見器の発明者たち
真実に憑りつかれた人々の物語
アミット・カトワラ
WIRED シニア・エディター。ロンドンを拠点に活動。
青土社
- 著者による註記
- パート1
- サンセット地区
- 血塗られた人生
- 口論とアリバイ
- パート2
- 町の保安官
- 学生警官
- 新米警官
- ”あの装置”
- 胸の奥の秘密
- マジシャン
- パン職人と司祭
- 悪魔の装置
- パート3
- パシフィック・ハイツ
- 樹液とおがくず
- 小鬼と悪魔
- 第三度
- 荒れた土地
- 虐殺事件
- チキン・ディナー
- コウノトリの助っ人
- 満ち潮
- トワイライト・ゾーン
- 弁護側の主張
- 真の船乗り
- ため息の橋
- 自白剤
- 火事と毒
- パート4
- おとりバト
- 囚人32147番
- ダイヤモンドの原石
- ペンキを塗ったスズメ
- 新聞記者
- 悪意
- フランケンシュタインの怪物
- E・ノーマス・ウェルス
- 早すぎる終焉
- ラストマイル
- 救いの手
- 裁判官と陪審員
- エピローグ
- 結び
書籍紹介
この本は、嘘発見器の誕生とその波乱に満ちた歴史を、鮮やかな筆致で描き出した一冊です。
物語の舞台は1920年代のアメリカです。この時代、人々は血圧や呼吸の変化を計測することで嘘を見破る装置の開発に熱狂していました。犯罪者の自白を引き出し、冤罪を防ぐ夢の道具として、嘘発見器は科学の希望の象徴でした。しかし、この装置がもたらしたのは、期待とは裏腹の複雑な現実です。嘘発見器は、時に新たな「凶器」となり、人の運命を翻弄しました。カトワラさんは、嘘発見器の開発に携わった三人の人物と、黎明期にこの機械が関わった二つの殺人事件を中心に、歴史の光と影を浮かび上がらせます。特に、ポリグラフの発明者レナード・キーラーの功績と、彼が設立した無実を証明する組織の活動は、物語に深い人間味を添えています。
哲学や歴史に興味がある方はもちろん、科学と人間ドラマが交錯する物語を求める方にもおすすめです。嘘発見器の歴史を通じて、真実とは何か、信頼とは何かを読者に考えさせる本書は、心に残る一冊となるでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
自白剤

1922年から23年にかけて、ジョン・ラーソンは何百とポリグラフ検査を行ってスキルを磨いてきました。しかし、ウィルケンズ事件のことがどうしても頭を離れなかったのです。ウィルケンズ事件は嘘発見器が公の場で大失敗したケースと考えていたのです。密かにヘンリー・ウィルケンズと交流し、もう一度検査を受けるように説得するのに成功しました。
この数年前、ロバート・ハウスが、スコポラミンという薬を「自白剤」として使いはじめました。意識的な部分を麻痺させることで顕在意識を明確にできるという主張です。「どんな質問にも正直に答えるようになる」とハウスは自信を持って説明しています。
その結果、ヘンリーは、ポリフラフ、自白剤、陪審員などによって身の潔白が証明されました。その後の生活は修理工としてキャリアをスタートさせ、バンクーバーとシアトルで事業を立ち上げて成功し、新しい妻と暮らしていたようです。
ヘンリーが心臓発作によりスタンフォード大学で死去するまで、自白することはなく、虚偽検査機の失敗というパターンを確立しました。その後、新たな形の方法が発明されるたびに繰り返されていくこととなります。