科学がつきとめた疑似科学/著者:山本輝太郎、石川幹人

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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

科学がつきとめた疑似科学

発刊 2024年2月2日

ISBN 978-4-7678-3245-6

総ページ数 187p

著者

山本輝太郎

金沢星稜大学総合センター 講師
明治大学科学リテラシー研究所 客員研究員
専門は科学リテラシーで、メタ分析やクラウドソーシングなどの実証研究に強みをもつ。

著者

石川幹人

明治大学情報コミュニケーション学部 教授
人工知能技術を遺伝子情報処理に応用する研究で博士(工学)を取得
専門は認知科学で、生物学と脳科学と心理学の学際領域研究を長年手がけている。

出版

エクスナレッジ

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 科学とは何か?
    • 科学=理系ではない ―仮説と検証のサイクルとは?―
    • 意外と身近な科学的思考スキル ―農業は統計学で考える―
    • 科学と疑似科学は分けられない? ―髪の毛は何本からハゲなのか?―
    • 言い切れないほうが科学的 ―科学はボトムアップで進歩した―
    • 正しさ「らしさ」を考えよう ―「事実」にもいろいろある―
  • 第2章 疑似科学の「理論」の見抜き方
    • 矛盾だらけの幽霊「理論」 ―壁を通り抜けるのに壁を叩ける―
    • ホメオパシーは効くの? ―有効成分は「1那由多分の1」!!―
    • 放射線で健康? ラジウム温泉の謎 ―温泉はさまざまな効果あり―
    • デトックス排出!って何を? ―どこから、どうやって出すのか曖昧―
    • ブルーライトの説を徹底検証! ―意味のないブルーライトカット―
  • 第3章 疑似科学の「データ」の見抜き方
    • 図書館をつくると犯罪が増える? ―疑似相関に注意しよう―
    • 専門家の意見が一番信用できない! ―データの信用度ピラミッド―
    • あなたも騙される「確証バイアス」 ―「誰が言ったか」で信頼度が変わる―
    • 事例が報告されるのは珍しいから ―事例データの「一般化」には要注意!―
    • サンプル数は多いだけでは意味がない ―過去を振り返る「症例対照研究」―
    • ランダム化比較試験がなぜ重要か ―事前-事後の比較では不十分―
    • 「古今東西の分析」を分析する ―「メタ分析」でデータを正確に!―
    • 携帯電話の電磁波でがんになる? ―電磁波有害説の主張―
    • 「牛乳有害説」の問題点 ―エビデンスは「有無」よりも「強弱」だ!―
  • 第4章 「理論とデータの関係性」と疑似科学
    • 犬が鳴いたから地震が起きた? ―後付け説明なら何とでも言える―
    • 「波動測定器」は何を測っている? ―科学には「立証責任」がともなう―
    • 霊感商法や性格診断が当たるわけ ―信じてしまう仕組みがある―
    • 肩こりは磁石にお任せ? ―巷にあふれる磁気治療器の真実―
    • 「水素水」の是非やいかに ―一大ブームを巻き起こした「水」の真相―
    • EPAで血液サラサラってほんと? ―観察からわかった科学進歩の好例―
    • 「O-リングテスト」を検証する ―指の力によって善悪までも判定する?―
  • 第5章 現代「社会」と疑似科学
    • 実は歴史が深い血液クレンジング ―科学と社会の複雑な関係―
    • 「学会」はサークルだ! ―過度な権威付けには要注意―
    • 論文は誰でも出せる? ―査読制度と「良い論文」「悪い論文」の見極め方―
    • 「これまでの常識を覆す!」は疑え ―科学は議論の歴史が尊重される―
    • 漢方が科学になるまで ―技術は科学の萌芽?―
    • 教育現場に潜む疑似科学 ―PISA型リテラシーを推進せよ―
    • マイナスイオンの真実 ―自然でリラックスできる原因なの?―
    • イチョウ葉エキスのあいまいな効果 ―「記憶力が良くなる」とは何か―
    • GABAと機能性表示食品 ―巷にあふれるGABAの効果とは―
  • 第6章 疑似科学を見極める人間の視点
    • 広告表示のトリックに騙されるな —それって「個人の感想」ですよね―
    • 風評被害にあった「味の素」の悲劇 ―自然志向の功罪―
    • 「遺伝子組換え」などの先入観に注意! ―「たとえ」のイメージに引っ張られるな!―
    • 科学コミュニケーションの難しさ ―文字ベースではちょっと限界?―
    • 疑似科学にハマらないためには? ―よりよい思考の方法を知る―
  • おわりに

はじめに

 「理系がニガテ」という方にこそオススメできる本を目指しました。

 科学リテラシーの入門書という感じで気軽に読んでもらえば幸いです。

いい切れない方が科学的

 有名なのは「反証可能性」と呼ばれる概念です。「仮説に対して証拠による反証ができる構図にあるか」というものになっています。神という存在に対して反証できるデータが存在しません。よって、データのない神の解釈を批判するという、哲学者の提唱が知られています。

 科学者集団が共有する枠組みが別の枠組みに転換することを「パラダイム転換」と呼び、天動説から地動説への転換などがその例です。

 現在”正しい”とされるりろんもデータによって覆る可能性があり、そのほうがむしろ科学的であるとさえいえます。それが宗教的な教義との相違点です。

ランダム化比較試験

 研究対象の効果を検証する際に、薬を飲ませる「実験群」と、薬を飲ませないもしくは偽薬を飲ませる「対象群」に、被験者をランダムに割り当てて実験する手法があります。

 ランダム化比較試験の考え方は、多くの分野で重要視されています。一定の被験者数が揃ったうえで、厳密に因果関係を推定できるため、新しい薬やワクチンの効果などが制度上承認できるのです。

 この手法によるデータ収集が必須であり、盲検法によって「プラセボ効果」が排除されていることが同時に求められるため、厳密な過程を経たデータは尊重できるものになります。

「これまでの常識を覆す」は疑え

 メディアにおいては「新発見」や「これまでにない」などの新規性を重視するニュースがほとんどです。しかし、科学の世界は新しいものはひとまず疑っておきます。

 科学のコミュニティではこれまでの知見に基づいて議論が展開され、批判にさらされながら議論を経て科学的知見を発展させていく特徴があります。これまで蓄積されてきたっデータを覆すのは容易ではありません。

 科学的なデータとして「誰がやっても同じ結果が得られる」という再現性が大切です。また追試は論文になりにくく、あまり評価されません。誤った研究報告が学会で受け入れられると、その誤りが改められにくくなります。

 また、ネット上で公開される内容は、匿名性が高く、文字を介した議論では人格攻撃などの誤った論法に陥りやすく、極端な結論が出やすいです。

先入観に注意

 「遺伝子組み換え」「ゲノム編集」といった技術で野菜が作られることがありますが、その野菜の危険性はかなり小さいものです。従来作物との危険を比較しても生態系や人体への悪影響を及ぼす、有力な科学的根拠は今までのところありません。

 しかし、過剰なリスク認知を引き起こすバイアスを誘発する特徴が多く、それが高い不安や強い反対の態度につながっていることがうかがえます。

 事前に抱いているネガティブイメージを解消する方策が重要です。事前のイメージによって、新規の科学・技術が受け入れやすくする、別の視点からの説明が必要かもしれません。

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