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目次
書籍情報
ラーメンの神さまが泣き虫だった僕に教えてくれたなによりも大切なこと

北尾トロ
ノンフィクション作家。
失われつつある街の中華屋について考え、町中華探索隊を結成する。全国の中華屋を巡る活動で「町中華」というジャンルを発掘した。裁判傍聴や猟師活動などのテーマでも執筆活動をしている。
文藝春秋
- まえがき
- 第一章 ラーメンの神様”ってどんな人
- “ラーメンの神様〟を再評価したい
- 小学生でつけ麺の虜になった「お茶の水、大勝軒」の店主は謎だらけ
- 「自分らしさなんていらない」
- 〈神田カレーグランプリ〉にラーメン屋があえて挑む
- 昔のメニューの復刻は与えられた使命
- 味の決め手は大量のタマネギと魔法のスープ
- よこすかカレーフェスティバル
- 会心のスープはめったに作れない
- 人間力のカタマリバイブルは師匠の著書
- ラーメンの神様の来歴
- つけ麺はこうして誕生した
- 悪条件こそが腕試しの場
- 第二章 バナナボートの明るい浜辺と何も起きない暗い部屋
- 建築家を目指したはずが······
- 勝浦のビーチは天国だった
- 滝野川でのアルバイト体験お金がなければ、稼げる仕事を作ればいい
- 「僕はこの人と結婚する!」
- ビーチで一日に二十万円稼ぐ方法
- 地元の親分への仁義
- 毎日がお祭り騒ぎ
- 気がつけば大学八年生
- 人生で最初の挫折
- 「僕はラーメン屋になる」
- 第三章「真介、おまえだけは味を変えるなよ」
- 江戸川橋で修業をスタート
- 最強の弟子になるための心得
- 自主トレと根性で釜場を死守
- 研修生のタイムテーブル
- 初任給は三万円
- 製麺室の片隅に落ちていた“お宝”
- 最高 の特別講義を独り占め
- マスターの逆鱗にふれた苦い思い出
- 身体に染み込んだマスターの味
- 最後の日に初めて目にした特別な小部屋
- 第四章 偉大なマスター亡きあと、心に誓ったこと (3)
- 拠り所はスターバックス
- みや子の乱〟勃発/いざオープン、お客さんの反応は?
- のれんの威力を実感
- 調子が良すぎて怖い
- 売り上げ目標は月商三百万円
- 攻めの経営に転じて渋谷店をオープン
- 勝浦に出店した理由
- 「日曜も店を開けなきゃだめだ」
- 食べたことのない味を復刻するケロリン桶でかん水を投入
- 「邪念を持ってスープを作っちゃいけないよ」
- 「真介、あとは頼むぞ」
- 「相談力」こそが成功の秘訣「味」と「心」を守り抜く
- 第五章 神様の故郷で逆境をチャンスに変えるに
- すべては町役場から始まった
- マスターに導かれて山ノ内町
- スキー場に出店するデメリット
- フランチャイズ方式での大失敗
- 「このままでは終われない!」
- つけ麺の聖地、山ノ内町歩くことで脳内をリセット
- 伝説の製麺機がやってきた「かつ丼」復刻に成功
- 第六章 ラーメン屋にゴールなんていらない
- 正解がないことを追求する楽しみ
- 裁判沙汰で得たもの娘とのふたり暮らしで考えたことあえて巻き込まれてみる
- 「1955モデル」でルーツに迫る
- つけ麺の考案者は誰だったのかキーマンは山ノ内町にいた
- 本店を再開するにあたっての悩み
- 最高の物件との奇跡的な出会い
- 教わること、教えること
- 「変えない」ことほど勇気のいる決断はない信じるものがある人は強い
- エピローグ
- あとがき
書籍紹介
ラーメンを通して人生の大切な教訓を描いた作品として、多くの読者に愛されています。北尾トロさんといえば、ユーモアと優しさが織り交ざった独特の文体で知られていますが、この本でもその魅力が存分に発揮されています。
物語は、作者が子どもの頃に体験した泣き虫だった自分と、ラーメン屋のおじさんとの出会いから始まります。いわゆる「ラーメンの神さま」と呼ばれるそのおじさんは、ただ美味しいラーメンを作るだけでなく、少年だった北尾さんに生きる上で大切なことを教えてくれる存在です。ラーメン一杯に込められた思いやりや、失敗しても立ち直る強さ、そして人との繋がりの尊さが、シンプルながらも深い言葉で綴られています。
ラーメンという身近な食べ物を通して、誰もが共感できる感情や記憶を引き出してくれる点です。読んでいると、どこか懐かしい気持ちになり、自分の人生の中で出会った「神さま」のような人を思い出すかもしれません。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
ビーチで1日20万稼ぐ

ラーメン職人になりたいとは、弟子入りするまで思いもしなかったといいます。それまでは、水上オートバイのマリンジェットにハマり、燃料代だけで1日1万円飛んでしまうような遊びをしていました。
そのマリンジェットの燃料代を稼ぐために、マリンジェットの後ろにお客さんを乗せてビーチを回遊する商売を始めました。ひとりにつき2千円をもらいます。最初は集客できず、1日に10人ほどしか乗ってくれません。そこで、大金をはたいてバナナボートの購入を決意しました。
それが大当たりして、大ブレイクすることになったのです。小さなバナナボートでも5人乗りが可能です。それでもマリンジェットの5倍の収入になります。10分で2千円なので、5人乗せれば1万円です。それを20回繰り返せば20万円になりました。この遊び方が一目を引き、順番待ちまでできたほどです。
のれんの威力

「大勝軒」の看板の大きさもあって、開店から大繁盛しました。製麺やスープの仕込みが追い付かず、睡眠時間は3~4時間しかありませんでした。無休でやっていたものの、身体がもたないと感じ日曜日を定休にしました。スタッフの補充が追い付いて、再編成し、一息つけたのは開店から2か月ほど過ぎてからです。
月の売上が300万円あれば損益分岐点を超えて安全圏だと算段していたものが、蓋を開けてみると月商1千万近くまで到達していました。予想以上に利益が出たわけですが、借金の返済に充てることにしたのです。29歳の若造にとって2千万円の借金はプレッシャー以外の何物でもなかったので、1年かからずに借金が返せたときはスッキリしました。