※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
目次
書籍情報
ルポ 過労シニア
「高齢労働者」はなぜ激増したのか

若月澪子
ジャーナリスト。NHK首都圏放送センターで有期雇用にキャスター、ディレクターを経験。
ウェブライターとして借金苦や就活に関する取材・執筆を行う。生涯非正規労働者と決めていて、ギグワーカーとして様々な仕事を体験している。
朝日新聞社
- はじめに シニア労働の「ブライドと偏見」
- 「終わらない子育て」の深刻度
- 自己表現の場を労働に求める
- 仕事が選べない
- 思惑のミスマッチ
- 本書の「シニア労働者」の定義
- 第1章 終わらない「子育て」
- ゴールが見えない教育ローンの返済
- 時給1500円は高時給なのか
- マニュアルのない職場
- 教育費は課金ゲーム
- 「勝ち組」の呪い
- 不登校とリストカット
- 偽装フリーランス
- 時間の搾取
- セルフネグレクトと浪費
- ブラック企業で壊れた息子のために
- リゾートバイトは破廉恥な仕事
- 政党の資金パーティーの準備
- 暴力のはけ口は母親に
- 生活保護は受けたくない
- 終わらない子育て
- 第2章 「貯蓄ゼロ」の実態
- 「給料は日払い週払いでしかもらったことがない」
- 派遣に行けば女の人と話せる
- フォークリフトの仕事は50歳でクビに
- 「言葉の圏外」という貧困
- 機械化される労働
- 「1番になりたい」
- 難病で無年金
- 「労働の価値」が貶められている
- 「オレの女に話しかけるな
- 汗だくで配送センターの荷物仕分け
- 「まるで老人のタコ部屋」
- 二度目の「中二病」
- 第3章 2000万円では足りない
- 人気職種「マンションの管理人」の実態
- 「想定内」という自己防衛ダウンサイジングは難しい
- マンションも老老介護
- これは「偽装賃上げ」では?
- 居心地の悪い職場を早期退職したら
- プレッシャーからは解放された
- 居場所を失う30代社員
- 「メンタル大丈夫ですか?」
- 「なんか飛んでいった」1000万円
- 人が履いた靴を欲しがる人
- シルバー人材に所属するのは「ゆとりある人」
- シルバー人材センターも人手不足
- column 採用側の本音1 「言語化できない」 シニアの派遣先
- 派遣にシニアが増えている理由
- 採用の決め手は「言語化できない」
- シニアの就活は実力主義
- 第4章 シニア・ケアラー
- 「70代が活躍中」の現場とは
- 50代の左遷先
- 「シニア・ケアラー」 の時代
- 10年目のボーナスの金額
- 現代の姥捨山
- ケア労働のもう一つの現実
- バブルが弾けた男の「麻雀放浪記」
- 女性社会の洗礼
- おばあちゃんと一緒に寝てあげたい
- いつの間にか消えていたギャンブル依存
- 親の介護で全財産を使い果たす
- 介護ストレスでハマった「女遊び」
- 大量のカレーで命をつなぐ
- 社会から解き放たれた「ミッシング・ワーカー」
- 第5章 プライドのゆくえ
- 歯を2本折り、顔を7針も縫うケガ
- 配達中に出会うのは人よりも野生動物
- 地方を襲った大型スーパーの嵐
- 1000万円は3年でなくなった
- 購読者の目当ては「お悔やみ」欄
- シニアライバーと場末のスナック
- カラオケでおもてなし
- 工場と草刈りが本業
- シニアライバーの「めぐる季節」
- 「官製ワーキングプア」その後
- 無限 のループ
- 「やりがい搾取」
- そして自分が見えなくなった
- column 採用側の本音 2 食品工場で求められる人材とは
- 食品工場はシニアの最後の砦か
- 食品工場をすぐに辞める人とは
- こんなシニアはお断り
- 第6章 孤独のトンネルを抜けて
- 老後は「NISA・タイミー・年金」の三本柱?
- 「バッシング」という仕事
- 貯蓄の9割をNISAに突っ込んだ
- シニアの夢物語
- 引き際がわからない
- 引退すると、やることがない
- 私もまだ世の中に必要とされている!
- 年収500万円でも不満
- 「モーレツサラリーマン」という背後霊
- 壊れていくシニア
- ゴミから取り出されるお宝
- 絶望の基板再生工場/会話の迷宮
- 「全裸」のシニア男優
- 努力しているところは見せたくない
- 肉体の衰えには焦らないこと
- 変化を受け入れないと生き残れない
- シニアはこれからが「本番」
- おわりに シニア美談という「話型」
- シニアのリポートは「嘘くさい」
- 「かわいそうな人」というバイアス
- 美談でもなく悲劇でもない
書籍紹介
70歳を過ぎても働き続ける人たちの姿を、著者の若月澪子さんが丁寧に取材してまとめたノンフィクションです。60代、70代になっても、成人した子どもが無職だったり低収入だったりで、生活費を仕送りし続けている親が少なくないのです。ある女性は還暦を過ぎてから清掃の仕事に就き、ひきこもりがちな息子さんの生活を支えています。別の男性は、障がいのある息子さんの将来の生活費を貯めるために、定年後も深夜の警備員を続けています。「自分が死んだらこの子はどうなるのか」という不安が、休むことを許さないのです。
在宅でデータ入力の仕事に就いた62歳の男性は、「在宅勤務OK」という甘い言葉に惹かれて契約したものの、土日も関係なくチャットで業務指示が飛び、月額報酬は2~6万円程度です。このような親の世代のこと、自分の将来のこと、あるいは今一緒に暮らしている家族のこと。誰の身にも起こりうる話を淡々と並べています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
時給1500円は高時給なのか

現在Aさんは3つの返済を抱えています。日本政策金融公庫の「国の教育ローン」、地元の信用金庫からの教育ローン、地方銀行のフリーローンです。
Aさんは62歳で会社を退職し、退職金1200万円の一部を借金返済に当てました。けれども、返済は続いています。「教育ローンの返済にここまで長い時間を費やすとは思っていなかった」と語ります。
Aさんが再就職をする時に時給1500円を設定して探していたら、元受け会社から「高すぎる」と言われて驚いたようです。今まで勤めていた会社では、パートの人の時給を1500円にしていたといいます。
Aさんの現在の時給は1200円です。非正社員で1年ごとに契約を更新します。交通費が出て、社保完備です。Aさんの手取りは月17万円ほどで、年金と合わせると月35万円です。その収入の半分が借金の返済に消えるといいます。
汗だくで配送センターの荷物仕分け

「頭が回らないから、力仕事をするしない。この歳でも雇ってもらえてありがたい」
こう話すFさん(75)は、白髪頭の南こうせつさんのような雰囲気のある元公務員の男性です。現在は配送センターで、宛先別に荷物を仕分ける仕事をしています。
重い荷物は10キロを軽く超えるものもあります。そこは社員が気を利かせてメール便のような小型サイズのものを担当しているようです。冷房が利かない倉庫では夏の作業がしんどいと話してくれました。
時給は1200円。交通費は別途支給されているとのことです。1日3時間労働ですが、シニアにはキツイといいます。作業が終わると、全身が疲れ果てているといいます。それでも60歳を過ぎて始めた仕事のうち、一番長く続いている仕事なのだそうです。
1000万円は3年でなくなった

貯えが減るのは早いようです。娘が交通事故などを起こし、車を買ってやったりしたので、3年で1000万円がなくなってしまったと語るNさん。
貯金の半分が消し飛び、精神的に追い詰められたNさんは新聞配達員になりました。新聞配達員は新人が70代ばかりで、当時50代半ばだったNさんが待望の新人だったそうです。
若い店主にミスを指摘され続け、何度も辞めようと思ったといいます。山登りのトレーニングのつもりで新聞配達を続けてきたようです。そんな仕事でも、配達の道のりを照らす星空が綺麗だといいます。こんな風景は夜中に働いていないと見れません。最近は宇宙ステーションが見える時間をチェックして、その点滅するものに出会えるとラッキーだと楽しんでいます。
貯蓄の9割をNISAに突っ込んだ

「投資の経験はなかったが、お守りのつもりでNISAを始め、貯蓄の9割をNISAに突っ込みました」
Rさんの投資は一般的な「余剰資金の2割程度が妥当」などのものとはかけ離れています。損失リスクも当然あるのですが、不安になることはないのでしょうか。
貯金はお金が増えないので最悪という考えで投資しているようです。退職をしてからは「高配当株」の配当金をあてにしているといいます。大きな買い物をしない限りは困ることがなくなったようで、シニアには「高配当株」がオススメだそうです。もっと早く気付いて投資を始めていれば良かったと後悔していました。
このようにNISAを活用する人が増えているようです。厚生年金に入っていなかった人など、低年金の人の生存戦略として「NISA・タイミー・年金」というような収支の3本柱で、人生を逃げ切ろうとする人が増えていくでしょう。