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目次
書籍情報
熱中症を科学する
スポーツの現場から見た、選手を守る最新の暑熱対策
笠原政志
体育学の学術博士。
科学的な競技力向上、けが防止、コンディショニングにおける情報を発信・選手のサポートを行う。
清水伸子
国際武道大学准教授、一般社団法人千葉県アスレティックトレーナー協議会理事、公益財団法人日本ライフセービング協会スポーツ医科学委員などを勤めている。
スポーツ現場の救急法を指導者やトレーナー」などを対象として普及させている。
竹書房
- はじめに
- 第1章 熱中症を科学する
- 増え続ける国内の熱中症
- なぜ熱中症になるのか?
- 体温はどこまで上がるのか? 熱中症の症状と救急搬送の判断
- 熱中症になりやすい人の特徴
- プールは熱中症危険度が高い
- 熱中症の発生が多い学生スポーツは? 冬のスポーツでも熱中症になる
- 暑熱環境が野球選手の投球や打撃における パフォーマンスに与える影響
- 野球現場における熱中症対策の実例 野球でも熱中症は抑えられる
- 筋けいれんのメカニズムと、足攣りが起きてしまった場合のアプローチ
- 熱中症は予防でゼロにできる唯一の疾患
- 第2章 戦略・戦術的熱中症対策を科学する
- 知っておく必要がある暑さ指数「WBGT」
- 熱中症対策に向けた「戦略」と「戦術」の二刀流
- 熱中症の理解者が増えれば熱中症は減る
- 熱中症の「予防」と「対応」は同じではない
- 基本的な生活習慣 (運動・栄養・休養)
- 【暑いときでも安全なスポーツ活動実施に向けたチェックリスト】
- 第3章 暑熱順化を科学する
- 暑さにも慣れが必要
- 暑い夏に向けた対策は早めに行う
- 暑熱順化の具体的なやり方
- 暑さに弱い人の特徴と熱中症対策
- 第4章 冷却を科学する
- 体温冷却の必要性
- 体温を下げるためにはどこを冷やす?
- 最も冷却効率が高い方法は?
- 衣類で冷やす
- 体の中から冷やす
- 第5章 水分補給とサプリメントを科学する
- 水分補給の基本
- 水分補給のタイミング
- 脱水症状を判断する簡単な方法
- 水分を過剰に摂取すると「水中毒」になる
- 目的に応じたスポーツドリンクと経口補水液の選択
- 賢い水分補給のポイント 水分の冷やしすぎにも要注意
- 塩分タブレットの真実 梅干しは塩分補給になるのか?
- 第6章 食事を科学する
- エネルギー不足も熱中症の原因となる
- 熱中症に効果的な栄養素とは?
- 夏野菜は熱中症対策に最適
- 暑さに負けない免疫力をつける食事
- 夏場のエネルギー補給におすすめの献立
- 熱中症予防にベストな「レモンのはちみつ漬け」
- 第7章 睡眠を科学する
- 睡眠を制するものは熱中症を制す
- 深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)の仕組み
- 睡眠不足がどうパフォーマンスに影響を及ぼすのか?
- 夏の暑い夜に快適な睡眠を取るためには?
- パワーナップ (昼寝)が生み出す好影響
- 就寝前と起床時の水分補給
- 第8章 熱中症の対応を科学する
- 熱中症の分類と対応
- 熱中症の症状を判断する指標「JCS」
- 傷病者の寝かせ方と身体冷却法、その留意点 救急対応に必要な準備とは?
- 第9章 現場の声を科学する
- Q 筋けいれんにマッサージや温めることは有効か?
- Q 暑い時期にスポーツイベントなどを行うときの対策は?
- Q 注意すべき熱中症の初期症状は?
- Q 熱中症が疑われ、反応や呼吸がない場合の対応は?
- Q 救急車を呼ぶべき状態はどのようなときか?
- Q 熱中症の予防や救急対応に必要な準備物品は?
- Q 高校野球では、地方によっては3イニングごとに休憩、あるいは甲子園でもクーリングタイムや暑い時間帯を避けて試合を行うなどの措置が取られている。 こういった措置に加え、専門家から見た適切な予防策、対応策は?
- Q 一度攣った足を早く回復させる方法は?
- Q 体が攣ったときの具体的なストレッチ法は?
- おわりに
書籍紹介
この本は、スポーツに携わる人々や健康に関心のある方にとって、科学的根拠に基づいた実践的な知識を提供してくれる貴重なガイドです。
本書は、熱中症のメカニズムを科学的に掘り下げ、なぜ暑い環境で体が危険な状態に陥るのかを丁寧に説明しています。体温調節の仕組みや、熱中症が引き起こす具体的な症状、そしてそれが選手のパフォーマンスや健康にどう影響するのかを、わかりやすい言葉で解説しています。特に、スポーツの現場でよく見られる状況を例に挙げ、実際のケースと結びつけながら理解を深められる点が魅力です。たとえば、炎天下での長時間の練習や試合で、どのように体が反応し、どんなリスクが潜んでいるのかが具体的に描かれています。
適切な水分補給のタイミングや量、電解質のバランスをどう保つか、さらには冷却方法やウェアの選び方など、細かなアドバイスが満載です。これらは、コーチやトレーナーだけでなく、選手自身や保護者にとってもすぐに役立つ情報です。また、熱中症を予防するための環境整備や、緊急時の対応についても詳しく触れられており、実際の現場でどう対応すべきかの指針が示されています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目的に応じたスポーツドリンクと経口補水液の選択

スポーツドリンク(ハイポトニック飲料:糖分控えめ)
- 浸透圧
- 体液と同じ
- ナトリウム(100ml あたり)
- 40~55mg
- 糖質
- 2~3%
- 水分補給 〇
- エネルギー補給 △
- 熱中症対策 △
スポーツドリンク(アイソトニック飲料:糖分多め)
- 浸透圧
- 体液よりも低い
- ナトリウム(100ml あたり)
- 40~55mg
- 糖質
- 2~3%
- 水分補給 〇
- エネルギー補給 △
- 熱中症対策 △
一般の方々に飲まれているスポーツドリンクは、糖質濃度が高めのアイソトニック飲料です。
軽い運動中の水分補給やエネルギー補給に優れています。とくに運動前、あるいはエネルギー消費が少ない運動時には最適な選択です。
経口補水液
- 浸透圧
- 体液よりも低い
- ナトリウム(100ml あたり)
- 80~115mg
- 糖質
- 2%前後
- 水分補給 〇
- エネルギー補給 △
- 熱中症対策 ◎
経口補水液は、スポーツドリンクとは異なり、脱水症状・熱中症対策に特化した飲料です。
大量の汗をかいて電解質が失われた場合や、熱中症の初期症状が見られる場合に、経口補水液を選択するといいでしょう。
ナトリウム濃度が高すぎるため、日常的な水分補給に適してはいません。また、凍らせてしまうと、ミネラルが失われてしまうため効果が十分に得られないので注意しましょう。