セカンド・チャンス/著者:スティーブン・グリーンブラット、アダム・フィリップス

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書籍情報

タイトル

セカンド・チャンス

シェイクスピアとフロイトに学ぶ「やり直しの人生」

発刊 2025年6月20日

ISBN 978-4-00-432068-5

総ページ数 328p

書評サイト 読書メーター

出版社リンク 岩波書店

著者

スティーブン・グリーンブラット

カリフォルニア大学教授を経て、ハーヴァード大学教授。

著者

アダム・フィリップス

精神分析医として小児精神医療に従事。ヨーク大学客員教授。

出版

岩波書店

もくじ

  • 序章
  • 第1章 シェイクスピアのファースト・チャンス
  • 第2章 セカンド・チャンスがない人生
  • 第3章 セカンド・チャンスと非行
  • 第4章 シェイクスピアのセカンド・チャンス
  • 第5章 さあ、もう一度
  • 第6章 フロイトとプルースト
  • 第7章 セカンド・チャンス 是か非か
  • 結部

書籍紹介

 人生のやり直しというテーマを、文学と精神分析の巨匠たちを通じて深く掘り下げた内容が魅力で、読む人を思わず引き込んでしまいます。

 人生をやり直す機会を意味し、危機に直面した人間がどのように再出発するかを探求しています。シェイクスピアの作品では、偶然や運命が絡むドラマチックな転機が描かれ、フロイトの理論では、無意識の働きや意志の力が強調されます。たとえば、ファースト・チャンスを掴むためにはある種の無頓着さが必要ですが、セカンド・チャンスではより深い内省が鍵になる、というような洞察が散りばめられています。全体を通じて、文学的想像力が人間の再生をどう支えるのかを、具体的な例を交えながら論じていて、読後には自分の人生を振り返りたくなるはずです。

 現代社会では、失敗や挫折を経験する人が少なくありませんが、そんなときに「やり直し」の可能性を信じるヒントを与えてくれます。シェイクスピアやフロイトが遠い存在に感じる方でも、読みやすい新書形式なので、気軽に手に取れます。もし人生の岐路に立っている方や、文学と心理学に興味がある方なら、きっと満足できる一冊だと思います。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

シェイクスピアのセカンド・チャンス

 シェイクスピアは21歳になるまでに妻と3人の子どもがいました。その家族を故郷ストラットフォードに置き去りにして、首都ロンドンに拠点を移しています。

 役者になり、作家になり、興行主となっても、ときどき帰省はしていたようです。財産が増えると、故郷へ送金し、家族を故郷の大きな家に住まわせています。

 家族をロンドンに連れてきた役者も多かった時代に、シェイクスピアは家族と生活する選択をしていません。そうした背景があるのに、多作で多忙を極めていた46歳のシェイクスピアが故郷に帰る決意をしています。この頃のシェイクスピアの仲間たち、恋人たち、元恋人はすべてロンドンにいる状況でもありました。

 シェイクスピアの両親は既に死んでいて、1人の息子も死んでいました。2人の娘の子ども時代もシェイクスピアは全く知りません。長女は裕福な医師と結婚し実家に住んでいて、女児を生んでいます。次女も実家に住み妻と一緒に暮らしていました。この後の私生活については帳がぴたりと閉じられています。

 わかっていることは、シェイクスピアが46歳の男がひどく傷つけた妻と娘を取り戻す劇を書いていることです。主人公の妻ハーマイオニが友人との子ども授かったと疑いをむける悲劇を描いています。病的に疑い、妻を冤罪で罰してしまった後に、獄中で生んだ子が秘密裏に育てられ、大人になった血のつながった娘と再会して妻の像の側で抱擁するというストーリーです。新しい妻と再婚するほうが願望成就を達成できたはずですが、そうしていません。

 彼が執筆する喜劇では、ファースト・チャンスを回復させるわけにはいかなかったのでしょう。この『冬物語』を書くころには、帰省を考えていたとも考えられます。この劇の結末をきわめてありえないとしながらも、つらい冬のあとに春が戻ってくることを示しているかのようです。

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