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目次
書籍情報
「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋
フリーランスが訳し、働き、食うための実務的アイデア
井口耕二
11歳で始めたフィギュアスケートで全日本選手になった。
1998年に、フリーランスの技術・実務翻訳者として独立。産業翻訳から出版翻訳へと仕事の主軸を写し、多くの話題作を手掛ける。
KODANSHA
- 第1章 『スティーブ・ジョブズ』翻訳の舞台裏
- 『スティーブ・ジョブズ』プロジェクト
- 絶対に訳したい「初めての公認伝記」
- 翻訳書出版は巨額オークションから
- 「鹿の角」で熱意をアピール
- 翻訳者候補に名乗りを上げる
- 5月:ミッションは「世界同時発売」
- ありえないスケジュール
- 苦肉の策の分割納品
- 下訳者を使うのは「あり」なのか?
- 共訳で「ジョブズの性格」豹変する?
- 必死でがんばって……なんとかなるのか?
- ほかの仕事はどうするか?
- 育児分担は妻に「要相談」
- 6月:翻訳スタート! 予定は未定にして決定にあらず
- 準備万端なのに原稿が届かない
- 機密書類扱いの「コピーブロック」
- 7月:スティーブ・ジョブズに日本語で語らせる
- 原稿は遅れて分量は増える
- 「全集中」できない理由
- 7月9日:第1章8000ワード終了
- ウォズニアックが「ぼく」、ジョブズが「僕」である理由
- 訳出スピードは「著者との相性」で決まる?
- 翻訳業界に「事件」が勃発
- 「父親業」は休めない!
- 夏の30日は父子で山小屋暮らし
- 8月:猛スピードでクオリティを保つ
- 8月1日:原稿後半の到着
- 表記は「コンピュータ」か「コンピューター」か?
- 山岡洋一さんの急逝
- 一日10.5時間稼働で、上巻終了!
- 9月:スタートダッシュのままラストスパートへ
- 9月7日:「ジョブズのCEO辞任」で原稿差し替え
- たかが、されど、出典情報
- 9月30日:綱渡りのスケジュール調整
- 10月:スティーブ・ジョブズの死
- 10月5日:供養は翻訳すること
- 関係者のコメントを届ける
- 10月5日:刊行の前倒し!
- 10月6日:死ぬ気でやれの鬼スケジュール
- 最後まで「質」をあげていく
- 脳内に碇シンジが現れる?
- 「何も足さない、何も引かない」
- unagi sushi をどう訳す?
- 超スピードで品質は維持できるのか?
- 著者の修正作業も同時進行
- いよいよ世界同時発売!
- 10月13日:最終チェック終了
- 10月6日:刊行前からベストセラ―に
- 刊行後のプロモーション
- 「世界同時発売なんて二度とやらない!」
- 『スティーブ・ジョブズ』プロジェクト
- 第2章 出版翻訳者の勉強部屋
- 英語の学び方、訳し方、工夫の仕方をプロの視点で解説。
- 会社員時代、「エンジニア」として英語を学ぶ
- 産業翻訳と出版翻訳
- スティーブ・ジョブズ関連書籍との出会い
- 出版翻訳の世界に足を踏み入れる
- 調べ物は現場検証?
- 「原文は親切に読む。訳文はいじわるに読む」
- 翻訳者は知りたがり屋
- 『スティーブ・ジョブズ』に対する誤訳の指摘
- 『スター・ウォーズ』をどこまで訳す?
- 「わかりやすさ」だけが正解なのか?
- 誤訳と誤読の壮絶(?)バトル
- 『スティーブ・ジョブズ』に対する誤訳の指摘
- 『スター・ウォーズ』をどこまで訳す?
- 「わかりやすさ」だけが正解なのか?
- 翻訳はどうあるべきか
- 「いい翻訳」ってなんだろう?
- 意訳vs.直訳
- “boiling watter”は何℃なのか?
- 専門用語vs.日常語
- 英語の流れ・日本語の流れ
- 情報は頭にある? 尻尾にある?
- 「ヒトゴト感」がにじんでいないか?
- 原文をそのまま絵にしてみたなら?
- どの”think different”が心に刺さるか?
- 翻訳者に不可欠なのは日本語の勉強
- フィギュアスケートと翻訳
- 薄紙を重ねて塔を作る
- 「の」の6連続ジャンプ
- 「は」と「が」、どちらを選ぶか?
- “all”はなんの「すべて」なのか?
- many peopleは、「たくさんの人」か「人がたくさん」か?
- 「主語を明示する」英語と「人がにじむ」日本語
- ナポレオンはなぜ「赤いサスペンダー」をしているのか?
- 「たち」や「ら」は複数なのか?
- 「それ以上」でも「それ以下」でもない
- なにをもって一日と言うのか?
- 翻訳は趣味も遊びも生きる世界
- フィギュアの祭典をプログラミングする
- エンジニア・ジョブズの実力は?
- 勉強は「必要が生じたとき」にやる
- 技術とビジネスの勉強法
- フリーランスこそ「ビジネスの勉強」が必須
- 英語の学び方、訳し方、工夫の仕方をプロの視点で解説。
- 第3章 出版翻訳者の「塞翁が馬」人生
- 子育てのためにフリーランス翻訳者に
- 東大化学工学科のフィギュアスケート選手
- 「出光にこんな社員がいてもいい」
- 1996年に男性の「育児退職」はありえない?
- 妻のリアクションは「冗談じゃない」
- 「本音の退職理由は⁉」
- 子育て狂騒曲
- フリーランスは「主夫」にあらず
- 働き方も暮らし方も自分で選ぶ
- 八ヶ岳ー東京の二拠点生活
- 子どもには「テストに出ないこと」を教える
- お金になる仕事・お金にならない仕事
- ワークライフバランスは3本柱
- フリーランスという働き方
- 人生最大の資本は健康
- 疲れを防ぐ翻訳者のデスクまわり
- 東大スケート部と国士館相撲部の共通点?
- トレーニングは裏切らない
- 翻訳がきっかけでロードバイクにハマる
- 食事とコーヒーでリズムを作る
- ビールをあきらめない「ゆるいダイエット」
- 「ちょっと自転車で蓼科まで」
- 急速を忘れては意味がない
- 腰痛しらずでぐっすり眠れる体に
- 子育てのためにフリーランス翻訳者に
- エピローグ
- あとがき
書籍紹介
フリーランスの翻訳者がどのようにして生計を立て、業界で成功を収めるかを描いた一冊です。
翻訳の裏側
世界同時発売の大ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』の翻訳にまつわる興味深いエピソードが満載。井口氏がどのようにしてわずか3ヶ月でこの大作を翻訳し、世界同時発売の無理難題に応えたのか、舞台裏が明かされています。
翻訳者の人生観とキャリアパス
井口氏自身の多彩な人生経験が語られます。フィギュアスケートの全日本代表から一流企業の猛烈サラリーマン、そして子育てのためにフリーランス翻訳者へと転身するまでのユニークなキャリアパスは、読者にとって新鮮な驚きとなるでしょう。
実務的アイデア
翻訳業界で成功するための具体的なアイデアが紹介されています。英日翻訳の技法、効率的な勉強方法、フリーランスとしての働き方や生活スタイルの調整方法など、翻訳者が実践的に役立つ情報が詰まっています。
育児とのバランス
男性が育児のためにフリーランスになるという発想転換についても触れられており、現代の働き方への新しい視点を提供します。
仕事と生活のバランスについての参考に
翻訳者志望者や既に翻訳業に携わっている人々にとっては必読の一冊でしょう。また、スティーブ・ジョブズの伝記に興味がある人々や、仕事とプライベートのバランスを模索する全ての人にとっても、視野を広げる良書です。井口耕二氏のユニークな視点と経験から得られる知恵は、多くの人々に新しい働き方や生き方を考えるきっかけを提供するでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
エンジニア・ジョブズの実力は?
それに加えて、実際どうだったのかも無視できません。ジョブズが見た「color coded capacitor」が色分けされたコンデンサなのかどうかを調べまくることになるのです。
私にとってジョブズは、技術力という意味ではとても親近感を覚える存在です。新しいものを一から設計することはできません。製品を作るうえで、勉強しなければならないことが多すぎます。ジョブズの技術力もそのくらいだったと言えるでしょう。「技術に詳しい」けれど、エレクトロニクス系の専門技術者として生きていくことはできないといった具合です。
ジョブズもそこまで専門的にはやらなかったのだと、感慨深いものがありました。
働き方は自分で選ぶ
長男が小学校に上がったあたりから、2拠点の生活を始めました。学校が長期休みになると八ヶ岳の麓にこもります。
山にいる間はなるべく仕事をしないようにしています。自然の中で遊ぶのでケガの危険があり、山荘の周り以外に用事がある場合には車で遠出しなければなりません。断れる限りは断るようにしています。
子どもには巻き割りや火の扱い方などを教えています。夜の闇が怖いことも、川の流れが危険であることも知っています。モノを作る楽しさも経験させています。坂を滑り降りるソリやレーザーポインターの光線銃など、学校では教えてくれないものを学べているでしょう。
腰痛しらずでぐっすり眠れる体に
自転車という運動を始めたおかげで、良いことがいくつか起きました。
- 血圧の心配がなくなり、長時間座っていられるようになりました。体幹がしっかりして姿勢が崩れなくなったのでしょう。
- 睡眠も安定して、浅くて辛いことがなくなり、ぐっすりと眠れるようになりました。
- 服が大体ぶかぶかになり、買い替えが必要になりました。ですが、医療費がかさむよりはるかにコスパが良いでしょう。
「運動は仕事だと思え」とアドバイスしてくれた妻に感謝したいと思います。