※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
目次
書籍情報
アメリカはどこに向かうのか

佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授。
専門は国際政治学、特に米中関係、東アジアの国際関係、秩序論。
法学博士。
弦書房
- はじめに
- アジアと国際秩序の現在
- アメリカ政治の現状
- アメリカとは何かを巡る争い
- 国際秩序の現在
- 米中関係を中心に世界を振り返る
- 日米関係における変化
- 台湾情勢について
- ロシアと北朝鮮の接近
- アメリカ大統領選挙後の世界と日本
- アメリカ大統領選挙後の外交
- 今後の世界はどうなるのか
- 日本に求められるもの
- 質疑応答
- あとがき
書籍紹介
本書では、アメリカが長年にわたり主導してきた国際秩序が、近年その影響力の変化によって揺らぎつつある現状を、鋭い視点で分析しています。2024年の大統領選挙を控えた時期に書かれた本書は、トランプ氏の再選後のアメリカの動向を予測し、その影響を多角的に考察しています。
本書の魅力は、複雑な国際情勢をわかりやすく整理しつつ、専門家ならではの深い洞察を提供している点にあります。冒頭では、アメリカが築いてきた国際秩序の歴史的背景を丁寧に振り返り、そのパワーの減退が世界にどのような影響を与えているのかを解説します。米中関係の緊張や日米関係の変化、台湾情勢、ロシアや北朝鮮の動向など、アジア太平洋地域を中心とした具体的な事例を通じて、グローバルな視点でアメリカの現状を浮き彫りにしています。
本書の後半では、2024年の大統領選挙後のアメリカの外交政策の可能性について、4つのシナリオを提示しながら議論を展開します。トランプ政権の再来によって、従来の「覇権国アメリカ」とは異なる新たな姿が浮かび上がるだろうと著者は指摘します。「トランプ2.0」とも呼べるこの新しいアメリカの振る舞いは、国際社会にどのような波紋を広げるのか。著者は、単なる予測にとどまらず、日本を含む他国がどのように対応すべきかについても示唆を与えています。この点は、特に日本の読者にとって、現実的かつ重要な問題として響くでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
今後の世界はどうなるのか

アメリカがどこまで安定して世界に関与するかが世間の関心でしょう。アメリカの世界への関与が不確実だと思われれば思われるほど、他の国はどうやって自分たちの利益を確保するのかという形で動き始めるわけです。
各国の自立を求める動きも、自分自身の存在を求めた戦略的思考もかなり強まって来るでしょう。アメリカ以外の選択をする同盟国も増えるかもしれません。中国やロシアの影響力は、アメリカの影響力が落ちたらそれを補完するように高まります。これもほぼ、間違いないと思うのです。
内戦などで兵器の費用や警備兵の給料、麻薬を横行させるインフラ設備などにお金を流したくないというトランプ政権では、部分的にアメリカ中心の世界を分断していく可能性があります。地域の治安が安定していない方が儲かる人々にとって、武器を流入してくれるような国を頼るでしょう。また、地域の安全保障は自分の国でやるしかなくなります。
紛争の制御、自由貿易の追求、アメリカが戦略的撤退する施策は、日本も巻き込まれるかもしれません。自国の安全を自国で守るということも、強く意識しないといけない時代になっていくのではないかと感じています。