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目次
書籍情報
ロバのクサツネと歩く日本
高田晃太郎
北海道新聞、十勝毎日新聞の記者を経て、スペイン巡礼で歩く旅の自由さに触れる。
モロッコの遊牧民にロバの扱い方を教わった後、ロバと世界を旅する。
河出書房新社
- 第一部 栃木→山口
- ロバを買う
- まずは100キロ
- 会津人
- 六十里越
- 馬乗り和尚
- 木崎湖の夏
- 「アンデスって感じ」
- 向けられるカメラ
- ふんの処理
- 老婆の焦点
- ポニー牧場
- 村の駐在さん
- 六人の集落
- ロバの効用
- 「ロバは働くもの」
- 第二部 福岡→香川
- 軽トラで九州へ
- 阿蘇への道
- 天草の「塩」
- 本土最南端
- 都井岬の監視員
- 旅人ハンター
- 四万十川の「台北」
- 土佐町の干し芋
- 島の日々
- 姫路のロバ飼い
- 第三部 兵庫→北海道
- しのぶちゃん
- 琵琶湖の水鳥
- ロバのパン屋
- 木曽川の宿
- 小学二年生と
- クサツネの里帰り
- 芭蕉の道
- 馬の里・遠野
- スナックのママ
- 北海道上陸
- 遅すぎた
- 塩の拠点
- 日高を歩く
- 旅の区切り
- おわりに
書籍紹介
著者がロバのクサツネとともに日本各地を旅する中で見つけた風景や人々との出会い、そしてその過程で感じた思いを丁寧に綴った作品です。都会の喧騒を離れ、自然と向き合いながらゆっくりと歩みを進める旅の様子は、読者に日常の慌ただしさを忘れさせるような穏やかな時間を提供します。
物語の中心には、クサツネという名前のロバがいます。クサツネはただの同行者ではなく、著者にとっての大切なパートナーであり、旅を通じて深い絆で結ばれていきます。クサツネのゆったりとした歩みや、時に頑固な性格が旅に独特のリズムを与え、読者をほっこりとした気持ちにさせてくれます。著者はクサツネとともに山道を歩き、村々を訪れ、地元の人々と交流しながら、日本の美しさや人々の温かさを再発見していきます。
クサツネとの旅を通じて、著者は現代社会のスピードや効率とは異なる価値観を見つめ直します。ロバのペースに合わせたゆっくりとした移動は、時間に追われる現代人にとって新鮮な気づきを与えてくれるでしょう。自然の中での静かな時間や、人々との素朴な交流が、どれほど心を豊かにするかを教えてくれます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
ロバを買う

33歳の夏、人生で一番大きな買い物をしました。5歳の雄ロバ、50万円です。
モロッコなら1万円、欧米でも10万円あれば買えることを考えると、日本のロバは世界一高いと言えるかもしれません。
ロバを買った理由は、荷物を背負わせて日本中を徒歩で旅する相棒として必要だからです。2016年からイラン、トルコ、モロッコとロバと旅をしていましたが、ビザの関係から滞在できる日数が決まっていたため、ロバと別れなければなりませんでした。ロバと別れるたびに、胸に穴が空いたような感覚がありました。次はビザがいらない日本でロバと旅をしようと決めたのです。
旅の幸せ
福岡県東岸を歩き、日没直前に海辺の原っぱにテントを張りました。ロバのクサツネは嬉々として草を食べ、気持ちよさそうにウンコし、豪快にオシッコをします。テントを張り終えてから夕食を準備するまでの間、クサツネのそんな姿を眺めているときほど幸せな時間はありません。
月明かりが水平線の向こうに出始め、まぶしくなったときにクサツネは海の光景を眺め、しばらく動かなくなりました。クサツネも景色に心を奪われているのでしょうか。そう思うと、クサツネは視線を下げて、再び草を食べ始めました。