お金の叡智

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 お金は2種類の物語で主役を演じます。財政手段から見放された人々を押しつぶす迫害者の物語と、金銭的独立のおかげで自ら自由になる抑圧された人々の物語です。

 お金が断罪されると、我々はそれを守ろうとし、守られていればそれを攻撃しようとします。

 お金は色んな意味を含んでおり、ズク、手持ち、先立つもの、懐、天下の回りもの、といった言葉すべてに当てはまるのです。

 お金は常に我々に自分の欲望、財産、負債と折り合いをつけることを強いります。誰であろうとすべての人を哲学者にしてしまうのです。

 愚劣の極みと万人が認識している存在を叡智が攻撃できないなら、哲学などいったい何に役立つというのでしょうか。

書籍情報

タイトル

お金の叡智

第1刷 2018年4月16日

訳者 山形浩生、森本正史

発行者 齋藤龍男

発行 (株)かんき出版

DTP 松好那名

印刷 大日本印刷(株)

本文デザイン 松好那名

ISBN 978-4-7612-7335-4

総ページ数 347p

著者

パスカル・ブリュックネール

 哲学と文学を修めています。パリ政治学院で教鞭をとるかたわら、作家として活動し、小説や哲学的エッセイまで幅広く手掛けています。

出版

かんき出版

お金はいつも二の次

UnsplashGeorg Arthur Pfluegerが撮影した写真

 お金にできることは多いけれど、なんでもできるわけではありません。常に人々の気まぐれに左右されます。

 宗教的、政治的、階級間の不平等、自己本位な動機を生みだすのは、お金ではありません。

 市場は生活に共犯者として入ってきましたが、人々の魂を征服したわけでなないのです。市場は、まずは世界を人々の希望通りにします。利便性と即時性の生活様式を与えてくれました。巨大な組織が私の最も些細な欲望に服従し、それを予測さえするのです。お金の喜びは2重になり、時間をもたらし、多くの退屈な仕事を免除してくれます。

 お金は使用人が主人に提供していた利益を与えてくれます。ただし、それは強制ではないので、道徳的、感情的恩義を伴わないのです。

 民主的時代において、サービスは専門家に下請けさせられることを言います。管理、家事、子守り、介護などです。サービスは契約であって所有権ではありません。かつては階級的関係下にあったものを支払いに応じて適えてくれます。

お金は逆境の衝撃を和らげる

Image by Victoria_Regen from Pixabay

 幸せでないことを不満に思うのは、現代特有の愚かしさです。それ故に、商売優先の理論を非難するのは間違いです。

 責務としての幸福、人々を苦しい失望と愚かな希望の間でおろおろさせる常軌を逸した探求から、自由にならなければなりません。ギリシャ神話がこれを気づかせてくれるでしょう。

 ミダスはフリギア王国の王です。彼の配下の太った飲んだくれの老人シレノスは、王に一番の望みをかなえてやると提案します。ミダスは、自分が触ったものすべてが金に代るよう求めました。飲もうとした飲み物、食べようとした食べ物すべてが金塊に代ります。とりまく世界が金と化したミダスは、呪いを解くために、パクトロス川の水で清めなければならなくなったのです。

 厳密には、お金は人々を「幸福にする」のではなく、不幸の毒を弱め、不幸を遠ざけるのを可能にすることです。お金は教育することや、家に住むことを可能にします。起こりえる困難を防いでくれる手段となるものです。

富は多元的

Image by Pexels from Pixabay

 あらゆるものを楽しめてほとんど所有しなくても幸せな放浪の王になることも、重要なものを全て欠いている裸の億万長者になったりするのは可能です。

 富は、絶えずお互いに対立し続ける精神的、物質的、財務的、美的、自然的なものを含め、その可能な意味すべてに対する勝利なのです。

 現実には、我々は無駄なもののためにしか生きていません。自分たちのニーズの単純な充足、生活費をまかなって、衣食住を確保するというのは呪いです。自分の欲望のためには平気で支出するのに、義務のための支払いには抵抗します。

 大恐慌の間、アメリカの歴史家によれば、一部の最も慎ましい家計は不可欠な食料よりもチーズやたばこを買いたがりました。ニューヨークのある女性は生活保護の小切手を使って美容院に行くため、ほとんど餓死しそうになったというのです。

 人間というものは常に単なる生存にとどまらない過剰に暮らします。

献金と施し

Image by Dean Moriarty from Pixabay

 カトリック教会や英国国教会では、ミサの間の集金は奇妙な瞬間です。自分の義務を果たそうとしてポケットに手を突っ込み、それをやらなければケチぶりを認めることになる認識をしています。

 この儀式では、ごく少額しか求められません。結婚式などの華やかな式典のときには、参加者の気前の良さを見せるために、集金箱は透明でアピールできるようになっています。

 街角や建物の下に立ち、地下鉄車両の中を移動するホームレスは、しばしば自分の苦境を訴えます。立て続けに無数の人が貧困さをアピールして、うまく演じなくてはなりません。

 臭いボロを着た人物やケンカ腰の人を無視できたりする。こんな貧窮者を救うには1ユーロではすまないでしょう。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 お金の考え方を多角的に見ているような、宗教の概念のような叡智でした。

 分裂した思考がお金の考え方としてあることを容認しましょうと、結論を述べています。

 いろいろな人がお金に対して思っていることがあるでしょう。お金自体は平等、生活水準を上げるもの、欲望に出費するもの、人のために使うもの、お金+「何か」の議論を歴史や宗教を例に繰り広げられていました。

 モノやサービス、権利(税金)を年貢とかの代わりにお金で出来ますという話から、人情やら歴史やら宗教といったものと組み合わせて、なんだか哲学味のあるお話でした。

 お金について新しく思考を広げたい人が、読むための本となっています。

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