ゼロからの『資本論』

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 日本で年収300万円未満の単身者の貯蓄額を見ると、30代の中央値は15万円、40代はなんとわずか2万円です。

 雇用者全体の4割に近い非正規労働者の暮らしは、かなり追い込まれている人もいるでしょう。加えて、気候変動の影響はますます強くなっていきます。

 だからこそ、マルクスだと言われても、疑念があるのはよくわかります。

 ソ連崩壊がマルクス主義の失敗を証明するかのように、世界中で左派は弱体化していきました。

 しかし、資本主義を批判する者がいなくなり、自由主義という名の市場原理主義が世界をせっかんして、格差が急拡大したのみならず、グローバル資本主義はこの惑星の姿をボロボロにしたのです。

 にもかかわらず、資本主義を乗り越えようと主張する人は日本には相変わらず、ほとんどいません。

書籍情報

タイトル

ゼロからの『資本論』

第1刷 2023年1月10日

編者

発行者 土井成紀

発行 NHK出版

ブックデザイン albireo

校閲 高橋由衣

図版作成 小林惑名

イラスト 芦野公平

DTP (株)ノムラ

協力 NHKエデュケーション

印刷 新藤慶昌堂・近代美術

製本 藤田製本

ISBN978-4-14-088690-8 C0210

総ページ数 237p

著者

齋藤幸平

東京大学准教授。

 『人新世の「資本論」』のベストセラーの著者です。

出版

NHK出版新書

目先の金儲け

UnsplashJezael Melgozaが撮影した写真

 マルクスによれば、「商品生産が全面化された社会」あらゆるものが商品化されていく資本主義社会では、物を作る目的、すなわち労働の目的がほかの社会とは大きく異なっています。

 資本主義以前の労働は、基本的に「人間の欲求を満たす」ための労働だったと解釈しているのです。

 大地を耕して穀物や野菜をつくる、風雨や寒さから身を守るために、丈夫で温かい衣服をこしらえてる、衣食住に結び付いた欲求です。この衣食住を満たすために、人間は労働したり、他人を労働させたりしてきました。

 一方、資本主義社会で暮らす私たちはお金が大好きです。貨幣はいつでも好きな時に好きな物に交換できます。貨幣は腐らないし、株に投資したりすればさらに増えていきます。

 貨幣には「何でも買える」という特別な力があるため、お金をたくさん持つ人たちはどんどん有利になっていきます。そうすると、一部の人たちが富を独占するようになり、深刻な格差が生まれるようになっているのです。

誰のためのイノベーション

Image by Michal Jarmoluk from Pixabay

 資本主義のもとで生産力が上がり続けることで、資本家がより多くの「剰余価値」を得る仕組みが生まれます。価格競争と薄利多売が増えてきました。

 イノベーションに資本家が求めたものは、「価値」の増加だけではなく、労働者に対する「支配」の強化も含まれます。マルクスが最も問題視していた点なのです。

 マルクスは、生産力の向上すればするほど、労働者は楽にならず、自律性を失い資本の奴隷になると指摘しています。

 ヨーロッパで結成されていたギルドなどの組合は、弟子の人数、割引きや広告の禁止し、みんなの生活を保障するための秩序を維持していました。現代人から見れば窮屈に映るでしょう。

 ギルドのような規制は、今の資本家にとって不都合です。できるだけ短時間で売れるものをたくさん生産して欲しいと思っています。

 だから資本主義はギルドを解体して、剰余価値生産に最適な生産様式を自らの手で確立していったのです。

学費も医療費も無料のドイツ

Image by Marisa04 from Pixabay

 ドイツでは授業料や医療、介護サービスなどが原則として無料です。失業手当、職業訓練なども充実しています。子育てにお金がかからないように、老後にお金を貯める必要がないようにしています。

 嫌な仕事でも必死に堪えないといけないというプレッシャーは、ドイツでは弱いのです。

 生活に必要な財やサービスが無償でアクセスできるようになればなるほど、脱商品化は進んできます。市場で貨幣を使うことなく、直接に医療や教育といった形で現物給付されるわけです。

 福祉国家は、もちろん資本主義国家です。しかし、脱商品化によって、物象化の力にブレーキを掛ける働きがあるのがわかるでしょう。

各地で動き始めた「アソシエーション」

Image by Alexa from Pixabay

 世界に目を向けると、「都市と農村の対立」を乗り越える「アソシエーション」をつくろうとする動きが、21世紀に出てきています。その試みはコロナ禍や事項変動を前にして、さらなる広がりを見せているのです。

 オックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワースの「ドーナツ経済」という考えを導入することを発表して、話題になりました。内側の輪郭をインフラや教育といった社会的基盤の必要ラインとし、外側の輪郭は地球の環境的条件を表しているのです。できるだけ多くの人が、この両方の円の間に入る生活をする必要があります。

 無限の経済成長を目指した先進国の生活はドーナツの外側を突破して、グローバル・サウスの人々がドーナツの穴に落っこちているのです。これまでの経済成長偏重を根本的に是正し、脱成長型経済に転換していくことをドーナツ経済は求めています。

 ドイツのベルリン州でも、家賃高騰に反対する住民たちが中心となった住民投票が2021年9月に行われました。3000戸以上のアパートを所有する不動産会社に対して、州がその一部を強制的に買い上げ、公営住宅にするという大胆なものです。

 ベルリン州の住民運動は、法的な拘束力がないにせよ、政府が検討をしなければならなくなりました。このような大胆な提案は、資本主義への脅威となり始めているようです。

あとがき

 日本にだって2010年代の初頭には、福島も原発事故をきっかけに反原発運動がかなり盛り上がりました。デモが起きないと言われていた国で、久しぶりに大きなデモが行われるようになったのです。

 ニューヨーク市のズコッティ講演を占拠した若者たちは「われわれが99%だ」というスローガンを掲げ、上位1%の超富裕層への富の偏在を批判しました。

 チュニジアでは格差に不満をもった若本が焼身自殺をしたのをきっかけとして、中東やアフリカの各国で次々と蜂起が起きました。これにより、エジプトのムンバク政権やリビアのカダフィー政権といった、何十年も続いた独裁政権が倒されたのです。

 抗議活動は欧州でも広がり、アジアでも台湾の「ひまわり運動」などがあります。

 世界のいたるところで、これまでのやり方からの大胆な転換を求める声が高まっているのです。

 この危機の時代に、あなたも『資本論』にチャレンジしてみて下さい。世界の見え方が変わるはずです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 ともあれ、世界では苦しくなるような増税があれば、デモなどの脅威があります。今後、日本の若者がアソシエーション集団をつくることもあるかもしれません。

 謎税などが多いものの、アメリカのような医者の腕もお金の値段で決まるようなことが無かったから、日本では暴動が起きるような不満も無かったように思えます。今後、インフレで生活基盤にかかるお金が高くなれば、政府に警戒するようなアソシエーションも生まれるかもしれません。

 お金の問題はつきないとは思いますが、低所得に悩むなら、まず大きな固定費から見直すなどの節約と、投資など、打つ手を考えた方がよいと思います。

 「よく旦那の給料が少ししか上がらなくて、妻もパートにでています。とにかくお金が増えません」そんな話があったとして、年収やパート代などの内訳をみると、「これでお金ないとは?」と思うことがあります。携帯電話や保険、月額固定がかかる動画サービスなど、見直せる部分は多々あるのです。それだけ贅沢をしていれば、投資や貯蓄に回すお金はないでしょう。

 非正規雇用者の年収が少ないという、うまいこと調整されたデータを問題にして、マルクスの資本論も考えてみましょう。と、ちょっと大袈裟な気もしなくもありません。どう転ぶかは国民がどう思うかなので、国民が左派的になるのは考えにくいと思います。けれども、非暴力的なデモ隊などは全然あり得ることですので、この書籍で言っていること全てを受け流すことも出来ないなと感じました。

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